道徳を破った愛情の怖さ
3年後、アーンショウの娘キャサリンとエドガーが結婚し、それから間もなくして、上品な服を身にまとった養子のヒースクリフが再び姿を現し、高額で嵐が丘の屋敷を借りました。この時のヒースクリフはすでに大金持ちになっていたのです。
当時、嵐が丘の地主アーンショウと夫人が亡くなっており、跡を継いだ長男のヒンドリーは新婚の妻を連れて戻ってきていましたが、妻は子を出産すると亡くなってしまいました。彼は悲しみに耐えきれず、酒びたりになり、賭博にもはまり、お金を工面するため嵐が丘の屋敷を賃貸に出していたのです。そうしてヒースクリフは嵐が丘の屋敷を借りたのです。
すでに結婚していたにもかかわらず、キャサリンとヒースクリフは何度も密会していました。紳士的な男性だったエドガーは、2人の関係を知った後、合理的で、度を保った状況で、友人としてなら会っても構わないと言いました。しかし、キャサリンとヒースクリフの感情にはブレーキが効かなくなっていました。
このような関係は、当時のヴィクトリア朝時代の社会の道徳観に反していました。それはこの本が出版された時、社会に大きな衝撃を与えた主な原因でもあります。そして、このエドガーの譲歩は、かえってキャサリンとヒースクリフの恋を深めることになりました。
燃え盛る憎しみの炎
物語は進み、ヒースクリフとキャサリンは雨の中、再び密会します。しかし、その後、キャサリンは不幸にも肺炎にかかってしまいました。エドガーはそんな妻の看病をしましたが、医者にキャサリンはもう助からないが、身ごもったエドガーとの子は何とか助かるかもしれないと知らされました。
キャサリンは最後の力で女の子、キャシー・リントンを産みました。すると状況を知ったヒースクリフが慌てて館へやってきて、エドガーや医者たちの目の前でキャサリンにキスをしながら、最後を見送りました。キャサリンが亡くなった時の年齢は詳しく記されていませんが、シナリオから推測して、わずか19歳だったと思われます。
キャサリンが病死した後、絶望したヒースクリフは苦痛に耐えきれず、毎日キャサリンの墓で泣き叫び、復讐を誓いました。
キャサリンが重病にかかる前、エドガーの妹のイザベルはヒースクリフに恋をしていました。ヒースクリフはエドガーに復讐するため、何の愛情も抱いていないのに、イザベルとの関係を深めていました。
イザベルがヒースクリフと付き合うことをエドガーは反対しましたが、兄の反対を押し切って、彼女はロンドンへ駆け落ちしました。それからヒースクリフは身体的に、精神的にイザベルをいじめました。
しばらくしてイザベルはヒースクリフの子を身ごもり、体の弱い男の子――リントン・ヒースクリフを産んだ後、亡くなりました。
ヒースクリフの復讐は自分を下僕の境遇に落としたヒンドリーにも向けられました。ヒースクリフは賭博と酒を通じて、ヒンドリーの財産をすべて失わせ、また、自分とイザベルの子ども――リントンに、キャサリンとエドガーの娘――キャシーを誘惑させ、彼女の同情を引いて、結婚させました。
こうしてヒースクリフは全ての復讐を果たしました。しかし彼自身もキャサリンの死と共に生きる力を失い、キャサリンの墓を掘り開け、彼女の遺骨と一緒に横たわることさえしました。そんなキャサリンへの極度の思いと憂鬱により、ついに、ヒースクリフは死にました。
(つづく)
(翻訳編集・天野秀)
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