『モンテ・クリスト伯』はアレクサンドル・デュマ・ペール(大デュマ)の傑作として評価されました。大デュマはかつて大金を費やして、パリ郊外のル・ポール=マルリーに住居用としてモンテ・クリスト城を建てました。その後、また別の森で同名のお城様式の別荘を建てたとも言われています。大デュマ自身も、モンテ・クリスト伯爵という人物を相当気に入っているようです。
『モンテ・クリスト伯』は若い船乗りの青年が親友に裏切られて冤罪をかけられ、14年にもおよぶ獄中生活を送った後、脱獄に成功し、その後、巨万の富を手に入れ、かつて自分を陥れた者たちに次々と復讐していくという物語です。
船乗りになったばかりのエドモン・ダンテスは恋人メルセデスとの結婚を控え、幸せの絶頂にありました。しかし、彼を快く思わない者たちの策謀により、終身刑を言い渡され、無実の罪でシャトー・ディフの土牢(つちろう)に収監されます。
その後の14年間の牢獄生活の中で、ダンテスは「助けてくれたら莫大な財宝をやる」と世迷い事を言うファリア神父に出会います。しかし実際にはファリア神父は賢者であり、神父に出会ったことでダンテスは自分が監禁された真相を理解できるようになり、復讐を決意します。その後、神父の知識を受け継ぎ、さらには莫大な財宝の在り処ーーモンテクリスト島のことも教わりました。
間もなくして、神父が亡くなり、ダンテスは遺体袋の中に潜り込んで、見事脱獄に成功しました。
莫大な財産を手に入れたダンテスは、投獄された自分を助けようと奔走し、そして、年寄りで貧しい父親の面倒をも見てくれたかつての雇い主のピエール・モレルが、窮地に陥っていることを知り、救いの手を差し伸べ、彼の借金もすべて返済してあげます。その後、かつて自分の遊び相手だったモレルの息子が、復讐相手の娘と恋に落ちたことを知ったダンテスは、相手の娘をその残忍な継母から救い出し、2人の恋を成就させました。
ダンテスを陥れた3人は悪行の限りを尽くし、その後も悪行を続けています。この3人に復讐するため、ダンテスは時間をかけて準備しました。そして、9年後の1838年初頭、ダンテスはイタリアの貴族モンテ・クリスト伯爵を名乗って、再び姿を現したのです。
かつてダンテスに有罪判決を言い渡した裁判官のジェラールは自分が犯してきた罪をすべて暴かれ、妻子が心中し、地位も名誉も失い、発狂しました。
恋敵のダンテスを妬み、陥れた後、かつてダンテスの婚約者であったメルセデスと結婚したフェルナンは、祖国や恩人を次々と裏切って勝者の側に立ち続け、陸軍中将にまで出世し、さらに貴族院議員の地位を手に入れましたが、ギリシャ独立戦争時に行った悪逆非道をモンテ・クリスト伯爵の画策によって暴かれ、失脚します。その後、事の真相を知ったメルセデスに見捨てられて、ついには自殺しました。
そして、虚偽の密告状を作ってダンテスを陥れたダングラールは、戦争を機に大金を儲けましたが、モンテ・クリスト伯爵の画策により破産し、その後、海賊一味に拉致され、餓死寸前まで追いやられてしまいます。やがて、モンテ・クリスト伯爵の正体を知り、ショックで放心状態になるも、その後、解放されます。
かつて自分を陥れた人たちすべてに復讐し、そして、自分に良くしてくれた人たちに恩返しをする。このスカッとするような、心がすっきりするような『モンテ・クリスト伯』は実は、1807年から1824年にかけて起こった実在の事件をもとに描かれたものです。
モンテ・クリスト伯爵は愛憎がはっきりしており、敵討ちをしますが、同時に寛大な心を持っています。ジェラールの妻がその息子エドゥワールとともに毒を飲んだ時、モンテ・クリスト伯爵は極力エドゥワールを助けようとしました。そして、エドゥワールの死に自責を感じ、このような復讐はすでに限度を超えていると認識したからなのか、その後、ダングラールを解放しました。小説の最後に、ダングラールに向かってモンテ・クリスト伯爵はこのように言いました。
「私はかつてお前に罪に陥れられ、裏切られ、そして、中傷された。お前のせいで、私の婚約者は屈辱的な生活を送っていた。私はお前の出世のための踏み台となり、無様に踏みにじられた。父もお前のせいで餓死した。本当はお前を餓死させたかったが、しかし、お前を許すことにする。私も誰かの許しが必要だからだーー私がエドモン・ダンテスだ。」
(翻訳編集:華山律)
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