新研究:「老化はなぜ急速に進むのか?」

それまで特に大きな病気もなく元気で過ごしてきた人が、80歳を超えたある時点で、急に体が弱くなることがあります。

ケンブリッジ大学の研究によると、多くの人が80歳を超えたある時点で、体内の血液細胞の構成が一気に変化することが分かりました。

このような血液の変化によって、急に体が弱くなる、血液がん貧血のリスクが高まる、感染症に対する血液の抵抗力が低下するなどの症状が現れます。研究者は、「この時の皮膚から脳まで、体内の全ての器官で同様の変化が起きている」と考えています。

加齢とがんの関係を研究するチームを率いるピーター・キャンベル氏は、「この研究結果が興味深いのは、人間の老化の背後にある総合的なメカニズムに迫った点にある」と述べました。

老化は複雑な過程であり、科学者は絶えず新しい発見を重ねています。
以前には、「細胞内の各種の変異が次第に累積され、ある程度になると、体の正常な機能に影響することが加齢のメカニズムである」と言われていました。

しかし、この度の新しい研究は、従来の認識に対して「少なくとも、完全にそうではないようだ」と疑問を投げかける結果となったのです。

今回の研究で、研究者は新生児から80歳の高齢者までの血液細胞を分析しました。
彼らは、65歳未満の成人の血液中の白血球と赤血球について、骨髄内の2万~20万種類もの幹細胞から作られていることを発見しました。

ところが65歳以上の被験者の体内の血液細胞のうち約半数は、10~20種類の幹細胞からしか作られていないのです。そのため、体内の血液細胞の多様性が大幅に減少し、健康維持に大きな影響を与えていると考えられます。

科学誌『Nature』に6月1日付で発表された研究によると、「老化に伴い、血液細胞内に蓄積される変異が増えているが、その多くは無害である。しかし、まれにではあるが、幹細胞の増殖を加速させる変異もある。この変異は、幹細胞から血液細胞を急速に生成させるとともに、生成される血液細胞の質を大幅に低下させている」と言います。

これは、人が40歳の時は、このような幹細胞への影響はほとんどないのですが、80歳になると、血液中で急速に成長する細胞が優勢を占めるようになることであり、老化が目に見えて加速することを意味します。

キャンベル氏によると、これらの急速に成長する血液細胞は、血液がんや貧血にも関連するとともに、人体が医学的治療(例えば、腫瘍への化学的治療)に耐える能力を弱めることにもなると言います。

(翻訳編集・鳥飼聡)

李少維