武俠(ぶきょう)小説の中で、龍女は仙女のように美しく、武術に長けた達人という設定です。中国の民間神話の中で、龍女は観音菩薩の侍者とされています。その他の神話や伝説の中では、龍女は天子を守護する役目を背負っています。また、困難に遭っている龍族を助けたら、感謝の報いを受けたなどという伝説もあります。
龍女が天子を護衛する
ある日、唐の第9代皇帝・玄宗(唐玄宗)は、洛陽の宮殿で昼寝をしている時、仙女のように非常に美しい女性を夢で見ました。その女性は自分が昼寝をしているベッドの前に跪いていました。唐玄宗は宮中でこの女性を見たことがなかったので、驚いて「何者だ?」と聞きました。
すると、女性は「わたくしは凌波池の中の龍女。普段は王宮を守り、天子を護衛します。龍族の名を上げたく、楽曲に詳しい陛下から1曲賜れれば幸いでございます」と頭を下げました。
夢の中で、唐玄宗は龍女のために「凌波曲」を演奏し、曲が終わると、龍女は慎み深くお辞儀をした後、姿を消しました。
夢から目覚めた唐玄宗は依然として夢の中の曲を覚えていたので、すぐさま琵琶を手に取り、思い出しながら演奏していき、そして、何度も修正して、ようやく夢の中で演奏したものと全く同じ曲を完成させました。間もなくして、唐玄宗は凌波宮で宴を設けて文武百官を招き、敷地内の凌波池の近くで「凌波曲」を演奏し始めます。
すると、曲に合わせて凌波池の水面が時に激しく、時に穏やかに揺れ始め、そして、1人の美しい女性が池の中心に現れました。それは、まさに唐玄宗が夢で見た龍女なのです!龍女は静かに演奏を聴き、曲が終わると、そのままゆっくりと姿を消しました。龍女の護衛に感謝するため、唐玄宗は凌波池の中心に廟を設けさせ、毎年、龍女を祭っています。
(つづく)
参考資料:『太平広記』「卷第四百二十、龍三」
(翻訳編集:華山律)
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