2020年9月21日、ベルリンでのTikTokの広告(Sean Gallup/Getty Images)

デジタル庁、中国TikTokとマイナンバー制度の普及啓発 元閣僚も疑問呈す

短編動画投稿サービス「TikTok(ティックトック)」は8日、デジタル庁と連携してマイナンバー(個人識別番号)制度の普及啓発を目的とした広告動画を公開すると発表した。北京拠点のIT大手バイトダンス(北京字節跳動科技)が運営するTikTokをめぐっては米英豪議員や政府機関が情報安全保障上のリスクを指摘しており、日本の議員らもこの連携に疑問を呈している。

リリースによれば、デジタル庁はインフルエンサー3人を通じて若年層含む幅広い世代ならびに在日外国人向けにマイナンバー制度の啓発動画広告を配信する。配信期間は9月30まで。河野太郎デジタル担当大臣はこの連携についてコメントしていない。また、同庁の公式サイトも発表していない。

前経済安全保障担当大臣の小林鷹之衆議院議員はこのTikTokのリリースを受けて「政府内で十分に検討した結果の取り組みなのか」とツイート。これに対して、同庁副大臣を務める大串正樹衆議院議員は「動画の作成から配信までTikTok側で完結している」と返答し、若者世代への広報戦略の一環であると説明した。小林氏は「国として国民に対して、特定のアプリを事実上オーソライズ(認証)するには十分な検討が必要ではないか」と書き込み、検証の必要性を強調した。

TikTokには中国共産党の対外プロパガンダ発信や個人情報収集に協力している「スパイアプリ」との報道が相次ぐ。8月、元グーグルのエンジニアはTikTokはユーザーのあらゆる入力情報を追跡していると報告した。米フォーブス誌によると、バイトダンスに勤務する300人以上の従業員は新華社やCGTNなど中国国営メディアに勤務経験があったり現在も勤務したりしているという。これらのメディアは、米政府が外国代理人法に基づき中国政府系機関として登録している。

こうした情報から、米英豪ではTikTokを排除すべきとの主張が高まっている。英国のトラス新首相は7月末のBBC選挙討論で、データセキュリティの観点から「TikTokのような中国拠点のIT大手を取り締まる」と言明した。

TikTokを運営するバイトダンスを含め、中国拠点の企業は中国国内法に則ってデータ管理を行い、要請に応じて当局にデータを提供することが義務付けられている。米連邦通信委員会のブレンダン・カー委員は、バイトダンスは中国政府の管理下にあると指摘し、アップルやグーグルに対してアプリストアからTikTokを取り下げるよう書簡を送付した。トランプ政権時代からTikTokは政府や軍関係者の使用は禁じられている。

国際的な潮流を受けて、日本でも総務省がアプリの不正機能検証の実施のために、令和5年度予算概算要求を10億円計上した。TikTokなど中国企業が運営するアプリを念頭に置いるものとみられる。翻って、マイナンバーという機微情報に関するデジタル庁の取り組みは、危機管理意識の欠如が浮き彫りとなった。

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