11月、東京に開いた小売大手SHEIN店舗で撮影(Photo by Richard A. Brooks / AFP) (Photo by RICHARD A. BROOKS/AFP via Getty Images)

中国激安アパレルSHEIN、新疆綿使用… 工場労働者は「犬のように扱われている」

超安価なアパレル製品を量産する中国大手SHEIN(シーイン)が米国で急成長を遂げている。推定時価総額は1000億米ドルとされ、TikTok運営のバイトダンス、衛星通信のスペースXに次いで非上場ベンチャーの世界第3位に位置する。しかし、搾取的な労働条件や大量生産による環境問題、そしてデザイン盗用など問題点の指摘は多い。

2015年にブランド化したSHEINは10代、20代のZ世代から人気を得ている。世界中から収集したトレンド情報からAI分析を行い最新アイテムを製造する。毎日6000点あまりの新製品を更新し、カバンは3桁、アクセサリーは2桁の価格で買えるといった廉価に、口コミサイトでは「何か裏があるんじゃないの」と訝しがる声も少なくない。

SHEINは他の中国オンライン通販大手アリババや淘宝(タオバオ)と異なり、中国国内では販売せず、米国と欧州を中心に展開している。日本でも13日、東京・原宿にショールームがオープンした。SHEINの世界売上は昨年160億ドルを超え、今年は240億ドルになる見込み。ブルームバークは関係者の話として、売上の3分の1は米国市場だと推定した。

新疆綿を使用

広州のSHEIN製品製造工場で働く女性労働者  (Photo by JADE GAO/AFP via Getty Images)

ブルームバーグ21日付によれば、SHEINが米国に輸出した衣類は、新疆ウイグル自治区の綿で作られていたことが専門機関の試験結果で判明したという。米国は新疆製品に対して輸出入規制を行なっているが、安価な小売は報告義務の対象外となり、専門家はSHEINが法の抜け穴をかいくぐっていると指摘する。

SHEINはこの試験結果に直接回答していない。同社は以前、公式ウェブサイトで「現地の法律や規制を確実に遵守」しており、強制労働や環境問題に対して厳粛な政策を確保し、定期監査を行なっていると主張している。

米国は昨年12月にウイグル強制労働防止法を成立させ、綿花や太陽光パネル原料を含む新疆からのすべての製品を禁輸にすることを定めた。欧州連合(EU)も9月、中国の新疆を念頭に、強制労働による製品を禁止する法案を発表した。米国やEUの法律は国連や人権団体による人権侵害の報告に基づいている。

中国国家統計局によると、昨年の中国の綿花生産の87%は新疆ウイグル自治区から来ている。中国外務省の汪文斌報道官は、強制労働について「反中勢力が国を中傷するために作った巨大な嘘」であるとして指摘を否定した。

安価なオンライン販売を進めるSHEINは米国法で定める個人輸入800ドル未満の非課税対象であることから、関税当局に対する報告義務を負っていない。「製品は監視されることなく米国のクローゼットに届いている」と米国繊維団体協議会は規制強化を求めた。

語られない真実

広州にあるSHEINの工場で出荷準備されたアパレル製品 (Photo by JADE GAO/AFP via Getty Images)

10月中旬に発表された英国のチャンネル4とアイニュースによる調査報道「SHEINマシーンの裏:語られない事実」によれば、TikTokやInstagramなどのSNSと連携して中毒性のある広告宣伝を発信していたことが明らかになった。カウントダウンタイマーなど巧妙な操作で衝動買いを誘うほか、著名人のライブイベントや無償の若者インフルエンサーを広告塔にして販促を拡大した。

調査報道を担当したジャーナリストのイマン・アムラニ氏は、ファストファッションは必需要に対する販売ではなく、若者がInstagramのようなSNSで最新のルックスを披露するという欲求を過剰に刺激していると指摘した。

このほか、広東省広州市にある縫製工場に潜入した記者が隠しカメラで撮影した映像によれば、労働者は失敗で賃金不払いのペナルティを課されていたり、作業が終わるまでミシンのそばから離れられないといった強制性を伴う労働に従事していた。

「ここに日曜日はない」とある労働者は訴え、一日あたりの労働時間は18時間、休みは月1度だけだという。複数ある工場のひとつでは、労働者に基本給はなく、洋服一枚あたり3円程度の賃金を稼いでいたという。

調査報道を担当した記者は、中国で15年から16年にわたり取材記事を書き上げてきたが、「労働環境は数年前よりさらに悪くなった。労働者は犬のように扱われている」と語っている。

このほかデザイン無断使用や品質問題も取り沙汰されている。過去3年間、SHEINは米国で少なくとも50件の商標や著作権侵害の告発に関する連邦訴訟の被告となった。原告はウォール・ストリートジャーナルによれば、自主制作のデザイナーからラルフ·ローレンのような大手まで幅広い。

カナダ保健省は昨年、CBCマーケットプレイスの調査結果を受け、SHEINの子供用コートの回収を呼びかけた。ファストファッションを対象に有毒化学物質を調査した結果、SHEINの子供用コートから基準値の20倍近くの鉛が含まれていたことが判明した。鉛は神経や肝臓、腎臓に問題を引き起こす恐れがある。

ファッション界で労働問題に取り組む「ラベルの裏の労働者(Labour Behind the Label)」の政策リーダー、ドミニク・ミューラー氏は同紙に対して「安い服は安い労働力と虐待でしか作れない」と指摘。中国では集会や権利団体の結社もできず、労働問題を指摘した活動家は嫌がらせや投獄に遭っていると語った。

世界銀行の2019年の報告によると、ファストファッションは過剰生産を引き起こし、環境にダメージを与えている。2000年には500億枚だった衣類の生産量は現在、2倍以上に膨れ上がった。

英紙テレグラフは、低価格衣服を「使い捨て」と考えている若者世代の過剰消費につながり、品質の悪さから再販もないと指摘。「毎秒トラック1台分の衣服が英国内の埋立地に捨てられている」と報じた。

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