中国メディアの報道によると、東部の浙江省で34歳のフードデリバリー配達員が急病で倒れ、医師から脳死と診断された後、家族が7つの臓器と両眼の角膜を提供した。しかし、死亡に至る経緯や移植の適合(マッチング)過程について報道では具体的に触れておらず、ネット上では疑問の声が広がっている。
共産党の機関紙『杭州日報』が掲載した1月21日付の記事によれば、1991年生まれで浙江省義烏市の配達員だった欧超超さんは、1月15日未明に心拍と呼吸が突然停止し、緊急搬送された。丸一日にわたる救命措置の末、病院は脳死と診断した。1月16日、湖南省の実家に住む両親が夜通しで病院に駆けつけ、1月20日、関係者の説得を受けて欧さんの7つの臓器および2つの角膜の提供に同意したという。
浙江省紅十字会は、病院側が心臓1個、肝臓1個、腎臓2個、肺1個、小腸の一部など計7つの臓器と両眼の角膜を摘出し、1月21日までにすべての移植手術が順調に完了したと確認した。
父親は、生前の息子について「以前からよく献血をしていた」と語った。一方、ネットユーザーからは「記事には理解しがたい点が多い」と疑義を呈する見方が出ている。
第一に、1月15日に心拍が突然停止した際、誰が発見し、どのようにして病院まで搬送されたのか。また、極めて短時間のうちに9人との適合がどのように成立したのかについて、報道ではほとんど触れられておらず、不透明だと指摘する。
第二に、心拍停止後、丸一日の救命措置が無効だったという点について、一般論として心臓に重大な傷害があったことを示唆すると主張。心臓と呼吸が停止すれば脳は酸欠となり脳死に至り、その後ほかの臓器も機能を失うはずであり、損傷した臓器は移植できないのではないかと疑問を呈している。
第三に、1月20日に7つの臓器の提供が完了したことから、脳死判定後も病院で4日間生命維持が行われていたと推測。その間、脳以外の7つの臓器は健康で生命力を保っていたことになるとし、「全身の臓器が強く機能していた若者が、なぜ先に心拍停止し、その後に脳死に至ったのか」と疑問を投げかけている。
第四に、父親が息子の度重なる献血歴を語った点についても、「独身で生活も苦しかった配達員が、なぜそれほど献血に積極的だったのか」との声がある。一部ネットユーザーは、配達会社入社時に血液検査や健康診断が義務付けられていたのではないか、血液型などが特別で献血を勧められていたのではないか、といった憶測を投稿している。
ほかにも「献血は控えるべきだ」「以前は突然死は不幸中の幸いと言われたが、臓器収奪の存在以降は何が起こるかわからない」といった書き込みが見られる。
配達員の突然死と臓器提供をめぐる事例は、これまでも中国メディアで複数報じられてきた。
中共の官製メディアが運営するウェブサイト「央広網」は2020年8月25日、安徽省阜陽市の38歳の配達員が脳出血で倒れ、救命措置の末に死亡し、家族が肝臓、心臓、腎臓、角膜を含む6つの臓器を提供したと報じた。
また2019年8月9日、別の報道では、杭州の51歳の配達員である陸継春さんが配達中の事故で脳死となり、両親はすでに他界、妻子もいなかったため、親族が「人を救えるすべての臓器」を提供したと伝えている。
「潜在的ドナーの評価と維持」をめぐり議論
最近、中国で開催されたとされる臓器移植関連の会議をとらえた写真がネット上で拡散された。写真では、医師が壇上で講演しており、スクリーンには「潜在的ドナーの評価と維持」と題されたスライドが映し出されている。講演者は昆明第一人民病院に勤務する黄志剛医師とされる。
ネット上では「潜在的ドナー」とは何を指すのか、どのような「維持」が必要なのかといった疑問が相次いだ。また一部では、「潜在的ドナーの評価と維持」とは事前に健康な人を選別・監視することを意味するのではないか、との憶測も投稿されている。
あるユーザーは「一部の特権層は重病になる前から既に適合者を確保している。それが潜在的ドナーであり、所在を常に把握することが“維持”なのではないか」との見方を書き込んだ。
こうした臓器提供をめぐる報道とネット上の議論は、透明性や説明責任の在り方を問う声として広がっている。
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