古来の薬草の有効成分が新型コロナに治療効果を発揮する

「天然のイベルメクチン」があった! 中医学にルーツを持つ「ノーベル賞受賞」薬とは?

イベルメクチンと同じ特性を持つある薬草が、「天然の同効薬」として専門家らに注目されています。

かつて、その薬草から抽出した有効成分は画期的な抗マラリア薬として注目され、研究者がノーベル賞を受賞したことで俄に有名になりました。

もう一つの「ノーベル賞受賞」薬

クソニンジン(学名:アルテミシア・アンヌア)は、東南アジア原産の緑色の薬草です。ニンジンに似た羽状複葉で、黄色い花を咲かせます。

生薬名を黄花蒿(オウカコウ)といい、伝統的な中国医学では数千年前からマラリア、ウイルス感染、細菌感染、炎症の治療薬や解熱薬として使われてきました。

その有効成分である「アルテミシニン」は、1972年に初めて植物から抽出することに成功して以来、数十年にわたり世界保健機関(WHO)が推奨するマラリア治療の第一選択薬とされています。

2015年には、抗マラリア薬としての成果が認められ、アルテミシニンの発見者がノーベル生理学・医学賞の半分を受賞しました。

また、同じ年にノーベル生理学・医学賞を同時受賞したのが、駆虫薬「イベルメクチン」を開発した2人の研究者でした。

イベルメクチンは、新型コロナのパンデミック期間に最も議論を呼んだ薬のひとつでした。当時、多くの医師が有効性を報告したにもかかわらず、使用はほとんど奨励されませんでした。

自然療法士のヤナ・シュミット博士は、エポックタイムズに対し、「(クソニンジンは)強力な抗ウイルス、抗寄生虫、抗炎症特性を持つ植物であり、イベルメクチンに代わる第一選択薬になりうる」と述べています。

クソニンジン(アルテミシア・アンヌア)の接写(Photo by RIJASOLO/AFP via Getty Images)
 

新型コロナに対し「爆弾のように作用」

アルテミシニンとその誘導体であるアルテスネイトは、鉄と反応してフリーラジカルを発生させます。

ウイルスや寄生虫は増殖に鉄を必要するため、一部のウイルスや寄生虫は鉄を保有する細胞にのみ感染し、感染部位に鉄を隔離します。

それらが感染時に鉄の保有量を増やす傾向があるため、アルテミシニンは治療薬候補として適しているのです。

植物科学を専門とするヌエボ・レオン州立大学のホセ・ルイス・アブレウ教授は、アルテミシニンが「爆弾のように作用する」と表現しています。

濃縮された鉄がアルテミシニンの活性を引き寄せることで、フリーラジカル産生が増加し、感染細胞、寄生虫、ウイルスを強力に破壊するそうです。

がん細胞も増殖のために鉄を多く取り込むことから、アルテミシニンの抗がん作用も研究されています。

分離されたアルテミシニンは強力ですが、植物ごと摂取した方がより効果が得られるとアブレウ教授は解説しています。

クソニンジンにはファイトケミカル、ポリフェノール、エッセンシャルオイルなど、アルテミシニンの働きを助ける多くの化学物質が含まれており、より強力な相乗効果を発揮すると考えられます。

アルテミシニンとその誘導体であるアルテスネイトの化学構造(Peter Hermes Furian / PIXTA)
 

第二のイベルメクチンになりうる?

シュミット博士によると、クソニンジンにはイベルメクチンと同様の抗SARS-CoV-2作用が多く見られるといいます。

どちらも毒性が低く、安全で、比較的安価に入手可能な上、以下にまとめた共通の特性を有しています。

抗ウイルス作用

  • ACE-2、CD-147、TMPRSS2に対する抗ウイルス剤として働き、これらの受容体を介してウイルスが細胞に侵入するのを防ぐ。
  • ウイルスのスパイクタンパク質に結合することで、ウイルスが細胞に感染するのを防ぐ。『Journal of Biomolecular Structure and Dynamics』誌に掲載されたコンピューターシミュレーション研究で発見された。
  • Rdrp、Mpro、Clproと結合することにより、ウイルスの複製と集合を阻止する。
  • 亜鉛を感染細胞内に輸送し、ウイルスの複製を阻止する。
  • 感染した細胞やウイルスを殺すことができるフリーラジカルを生成する。

抗炎症作用

  • IL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインのレベルを下げることで炎症を抑制する。「Rheumatology(Oxford)」誌に掲載された研究により明らかになった。
  • サイトカインストームを抑制する。「Rheumatology(Oxford)」誌の研究により明らかになった。
  • 肺に厚い瘢痕組織が形成されるのを防ぐ

その他

  • 神経障害性疼痛の緩和
  • がんの発生を予防する

イベルメクチンとの相違点も

クソニンジンとイベルメクチンには以上のような類似性が見られますが、両者が新型コロナウイルスの同じ場所に対して作用するわけではなく、互いに補完し合うことも研究によって分かっています。

イベルメクチンとレムデシビルやヒドロキシクロロキンなどの他の薬剤を比較した研究で示されたように、イベルメクチンは新型コロナのスパイクタンパク質に最も高い親和性で結合し、ウイルスが人間の細胞に入るのを阻止します。

一方、アルテミシニンとその誘導体は、『Journal of Biomolecular Structure and Dynamics』の研究で示されたように、スパイクタンパク質への結合性が低いです。

しかし、アルテミシニンとその誘導体は、SARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質と結合する能力が高く、これはイベルメクチンにはない特性です。

また、イベルメクチンは、低酸素条件下でミトコンドリアを活性化し健康を維持する能力など、クソニンジンにはない他の抗ウイルス特性も持っています。

マダガスカル・プロトコル

アブレウ氏は、イベルメクチン、クソニンジン、亜鉛を組み合わせた治療プロトコルを発表しました。

彼は、クソニンジンとイベルメクチンの消費量が多いマダガスカルでは西側諸国よりも疾病の影響が著しく少ないという観察に基づいて、このプロトコルを「マダガスカル・プロトコル」と名付けています。

アルテミシニンには、体内の酸素濃度を高める可能性のある化学物質が含まれているとアブレウ氏は指摘しています。他の植物や化学物質では、そのような物質は「見たことがない」そうです。

新型コロナに感染し低酸素症になったときにアルテミシニンが役立つのだそうです。

クソニンジンの摂取方法

アルテミシニンをサプリメントなどで摂取することもできますが、クソニンジンをお茶にして飲んだりすることで、さらに効果を発揮するとされています。

クソニンジンに含まれるエッセンシャルオイルは、抗菌・抗真菌作用があります。また、植物に含まれるフラボノイドがアルテミシニンの相乗効果を高めると言われています。

中国の研究では、乾燥したクソニンジン4〜9.5gを熱湯に浸し、お茶として飲むことが推奨されています。

アブレウ氏は、1gの葉をお湯に浸して飲み干すという方法で摂取しているそうです。1日に4人前を飲むこともあるのだとか。

シュミット氏は、新型コロナの治療薬としてクソニンジンを摂取した人たちの肺の状態が目に見えて改善されていることを確認しています。また、多くの患者はアルテミシニン服用後に呼吸改善が見られるそうです。

しかし、新型コロナの治療薬として、この植物に関する人間を対象とした研究が発表されていないことには注意すべきです。

シュミット氏は、妊娠中の女性や、抗発作薬や抗凝血剤を服用している人にはクソニンジンはお勧めできないと述べています。また、植物にアレルギーのある人は、副作用が出る可能性があるそうです。

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。