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人生の目標を見つけることは、高齢者にとって有益
2019年、「Archives of general psychiatry(一般精神医学アーカイブ)」誌は、951人の高齢者を前向きに追跡した研究を発表しました:平均年齢は80歳、追跡期間は最長7年、この期間中に155人(16.3%)がアルツハイマー病(AD)を発症しました。
比例ハザードモデルは、人生の目標が高いほどアルツハイマー病のリスクが著しく低い(52%)ことを示しました。しかし、この独立した危険因子は、うつ病、神経症、社会的規模、慢性疾患などの他の交絡因子とは無関係でした。もちろん、リスク低減の程度は年齢、性別、家庭環境によって異なります。
同時に、人生目標が高い人は、ADの前兆である軽度認知障害(MCI)の発症リスクが低下していることが分かっています。
これに加えて、人生の目標を設定することは、認知症の予防だけでなく、高齢者の他の健康分野でも効果が期待できます。2009年に「Psychosomatic Medicine」誌に掲載された論文では、2つの長期的追跡調査のデータを用いて、認知症のない高齢者1238人を5年間にわたり分析しました。
分析の結果、生きがい評価で高得点を獲得した人は、低得点を獲得した人に比べて死亡リスクが43%低いことが分かりました。この結果には、年齢、性別、教育、民族の影響は含まれていません。
なぜ、積極的に人生の目的を持つことが、健康に良いのでしょうか?
まず、前述したように、有意義な人生の目的の追求を大切にしている女性の体内には、より強力なナチュラルキラー細胞が存在します。ナチュラルキラー細胞は、末梢血、脾臓、リンパ系、肺、皮膚、皮下脂肪組織、腎臓、肝臓などに存在し、病気の細胞を監視して除去する、健康の番人であり体の特別なパトロール隊です。
第二に、免疫力が全体的に向上することで、慢性炎症状態やがん、自己免疫疾患などの予防に好影響を与えることです。自己実現的な幸福のマインドセットが、体内の抗ウイルス状態を良好に保つのに役立つことは、以前に説明したとおりです。更に自己実現的な比例ハザードモデルは、人生の目標が大きいほどアルツハイマー病のリスクが著しく低い(52%)ことを示しました。
マインドフルネス(今この瞬間を生きる)には、人生の目標の追求、自律的な生活やポジティブ思考、優しさや利他主義などがあり、その重要な要素として、適切な人生の目的を確立することがあげられます。
また、2009年の研究では、人生の目的が明確な人は、うつ病の症状が出にくいという結果が出ています。人生の目的意識を持つ人は、目標を持って日々の活動に取り組む傾向があり、その考え方が長寿に貢献しているのです。
更に、生きがい意識の高い人は、予防医療サービスをより活用しており、入院する可能性も低いです。命の価値を重視することで、病気の引き金となる予防や健康管理への関心が高くなり、健康を害する行為や行動が少なくなります。
例えば、喫煙は肺がんになりやすいと言われていますが、それでも人はなぜ喫煙するのでしょうか。それは、人生の目的意識が欠けていて、自分の欲望をコントロールできないからではないでしょうか。
(つづく)
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