千葉県印西市立・原山小学校における新たな学び「情報探究の時間」実践報告

 このたび、​特定非営利活動法人みんなのコードは、千葉県印西市原山小学校(千葉県印西市、校長:松本 博幸、以下原山小)との2023年度の取り組みをまとめた報告書を発表します。

 本プロジェクトの実施にあたっては、印西市や千葉県に住む児童生徒を対象にしたプログラミングなどのデジタル教育活動の支援プロジェクトとして、 Google から助成をいただいています。

本プロジェクトについて

 印西市は、5つのまちづくり政策の1つに「子どもたちの未来を育み誰もが心に豊かさをもたらすまちづくり」を掲げています。この方針の一環として、2023年4月に印西市とみんなのコードは、2023年4月に連携協定を締結しました。この協定は、情報教育をさらに前進させるための重要な取り組みの1つです。

 原山小は、2023年度には授業時数特例校の指定を受けて情報を学ぶ時間を確保し、情報教育の発展に積極的に取り組んでいます。みんなのコードは、同校の取り組みを印西市内の他の小・中学校へ広げるため、情報教育のモデルカリキュラム開発をサポートしました。
 2020年の学習指導要領改訂において、小学校における情報教育は、プログラミング教育が必修化となりました。しかし、情報教育に関する時間が独立した教科として確保されているわけではなく、その学びは各教科に分散されています。みんなのコードは、子どもが体系的に学習できるようにするため、小学校段階から「情報を学ぶ時間」を設立し、情報活用能力を育成する時間を確保する必要があると考えています。本プロジェクトは、公立学校において体系立てた情報教育の時間をつくることで、他の地域や自治体のモデルケースとなることを目指し取り組みました。

千葉県・印西市立原山小学校における新たな学び「情報探究の時間」実践報告書

URL:https://speakerdeck.com/codeforeveryone/qian-xie-xian-yin-xi-shi-li-yuan-shan-xiao-xue-xiao-niokeruxin-tanaxue-bi-qing-bao-tan-jiu-noshi-jian-shi-jian-bao-gao

最初は戸惑いや違和感があった情報教育、でも「やってみないとわからない」

情報教育に対して深まる理解から生まれるデジタル・アナログの融合性

原山小にきて、情報教育への見方が変わり、そもそも情報教育自体がもっと広義的なものだと再認識しました。個人的には、情報教育に対する理解が高まったからこそ、デジタルとアナログの融合が必要だと、また再実感できました。わたしもそうでしたが、「情報教育」と聞くと難しいものをしなければいけないと身構えてしまい、一人で抱え込んでしまいがちです。しかし、同じ職場の先生たちと一緒に悩み、話し合い、自分がやりたいと思う情報教育の授業を展開していくことが大事だと考えています。これからも、私自身も子どもたちのスタイルにあった授業の在り方を見つけることを意識していきたいと思います。
(4年生担任 和田 諭教諭)

 

子どもたちが教えてくれた情報教育の価値

最初は情報教育に違和感を感じることもありました。30年くらい教員をしてきて、ICTがない教育が普通でした。ちゃんと鉛筆を持って、良い姿勢で紙に書くっていうのを、1年生の最初から取り組ませるようにしてきましたから。ただ、ICTは、子どもの生活の中にも、自然に利用されているものなんです。デジタル・アナログのどちらかがいいという極端な考えではなく、「どちらも、やらないといけないんじゃないかな」というのが今の感覚です。低学年のうちは「そんなことがあるんだな」くらいのふんわりした体験的な学習を始め、段階的にコンピュータサイエンス分野のスキルを身につけていくことは、中学校以降の学びにつながるという意味で大切だと思います。(2年生担任 竹本しずか先生)

プロジェクトメンバーのコメント

印西市立原山小学校 校長 松本 博幸 

原山小は、「社会とつながる情報教育×情操教育×市民性教育」を重点テーマとし、先進的な情報教育の推進に力を入れてきました。今後は、これまでの成果と課題を踏まえ、教育課程特例校制度により、独自教科の「情報探究科」を実施します。印西市内をはじめ、他の地域や自治体での情報教育のモデルケースとなるよう研究を進めて参りますので、これからも忌憚のないご意見・ご指導をいただけますと幸いです。職員や保護者、教育委員会、みんなのコードさんをはじめとする学校外の皆さん、そして子どもたちからも理解と協力を得て、これからも情報教育の推進に取り組んで参ります。

 

NPO法人みんなのコード  未来の学び探究部 講師・研究開発員 竹谷 正明

原山小での授業づくりを支えたのは、先生方の前向きな姿勢です。子どもたちの未来につながる力を育てるために挑戦していく姿を何度も見ました。不安を感じたこともあったと思いますが、それを乗り越えられたのは先生方同士の関わり合いの力です。ICT に長けた方ばかりがいたからではありません。特別な学校でなくても、チャレンジ精神と豊かな関係性があれば、どの学校でもできる取り組みがこの報告書に収められています。

 

NPO法人みんなのコード  未来の学び探究部 部長 釜野 由里佳

2023年度から情報教育のモデルカリキュラム開発のプロジェクトの取り組みが始まり、1年間授業設計をご一緒にさせていただきました。先生方や子どもたちが試行錯誤されながら学びに向かう姿を直近で拝見していく中で、情報教育における更なる可能性の広がりを感じました。本報告書では、原山小の情報教育の背景や取り組み方と共に、先生方のリアルな声や授業紹介もまとめています。ぜひご一読いただけますと幸いです。