アメリカにおいて、国内の多数の港で使用されている中国製クレーンが、中国共産党のスパイ行為の一助となる可能性に対する懸念が高まっている。こちらの写真は2023年3月8日にカリフォルニア州オークランドの港で撮影された使用されていないクレーンの様子である。(Justin Sullivan/Getty Images)

三井E&S、中国製クレーン置き換えへ協議開始 高まる存在感に株価も上昇傾向

三井E&Sと同社の米国での子会社のPACECO(パセコ)は米国で港湾クレーンの生産再開に向けて、パートナー候補と協議を始めた。米政府が5年間で助成金など200億ドルを投じる肝煎りのプロジェクトへの参入だけに、1日の同社株価は上昇傾向を示した。米国は中国共産党のサイバー攻撃を危惧しており、信頼性の低い中国製クレーンを置き換える計画だ。米国のサプライチェーンにおける日本の役割が一段と高まる。

三井E&SとPACECOのクレーン生産については、2月21日の米ホワイトハウスの発表で明らかになった。近年、中国企業が大挙して港湾クレーンの市場に参入したが、情報漏洩のリスクがあると指摘されている。内蔵センサーによって荷物のルートを追跡できるため、軍事物資の輸送データなどが中国共産党に察知されるリスクが米国当局内で議論されてきた。

大統領令では、海運等に関する国土安全保障省の権限を強化し、港湾施設の事業者に対して、サイバー攻撃を受けた際の報告を義務付けた。中国製クレーンの使用を継続する場合には、システムの安全対策を強化し、脆弱性を排除することを求めた。

PACECOはコンテナ海運業界で長い歴史を持つ企業で、1980年代後半まで米国を拠点としてクレーン製造を行ってきたが、近年では中国勢が古参勢のパイを奪ってきた。PACECOが生産再開すれば、米国は30年ぶりに港湾クレーンの製造能力を取り戻すこととなる。

三井E&Sは米ホワイトハウスの発表後、コメントを控えていたが、新年度を迎える前に、自社ホームページで正式発表を行なった。

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