新型コロナワクチン接種者の中には脳卒中リスクが高い人がいたが、インフルエンザワクチン接種がそのリスクと関連していることが判明した。医薬品等の承認審査などを所管する米国食品医薬品局(FDA)の研究者が新たな研究で発表した。
研究者らはメディケア(米国の高齢者および障害者向け公的医療保険制度)のデータを分析し、2022年秋から2023年秋まで使用可能だったファイザー製とモデルナ製の新型コロナ2価ワクチン接種後の、高齢者における脳卒中リスクの上昇を検出した。ファイザー製ワクチン接種後の85歳以上とモデルナ製ワクチン接種後の65〜74歳の高齢者は、非出血性脳卒中または一過性脳虚血発作のリスクが上昇していた。
しかし、続いて研究者らが新型コロナワクチンの接種と同時にインフルエンザの予防接種を受けた人を調べたところ、リスク上昇が持続したのは同時接種者だけだった。
FDAの生物統計学・疫学部長であるスティーブン・アンダーソン氏と他の研究者らは次のように述べている。「この所見は、同時接種したサブグループで観察されたワクチン接種と脳卒中との関連が、高用量またはアジュバント(免疫補助剤)を含むインフルエンザワクチン接種によってもたらされた可能性が高い」
高用量インフルエンザワクチンは主に高齢者向けで、アジュバントを含むインフルエンザワクチンは別のタイプの予防接種だ。
研究者らはまた、インフルエンザワクチンを接種し、新型コロナワクチンを接種しなかった人の間で、非出血性脳卒中のリスクが上昇していることも発見し、この知見を支持した。
「ワクチン接種後の脳卒中リスクの臨床的意義は、インフルエンザワクチン接種の重大なベネフィット(プラスの効果)とともに慎重に考慮されなければならない」「高用量またはアジュバントを含むインフルエンザワクチン接種と脳卒中との関連をよりよく理解するため、さらなる研究が必要だ」と研究者らは述べた。
この研究論文はの医学雑誌『Journal of the American Medical Association』に掲載された。
脳卒中発症前30日間に新型コロナを発症した症例を除外したこと、ワクチン接種者に限定したことなどが、この研究の限界だ。研究者らが用いた「自己対照ケースシリーズ」という研究方法は、ワクチン接種者を主要群と対照群の両方に用いたものだ。
研究者らは、ワクチン接種後42日以内に発症した脳卒中を接種に関連しているものとしてカウントし、接種後43日から90日の間に発症した脳卒中は接種とは無関係なものとしてカウントした。
論文では、脳卒中の種類に応じて、2022年8月31日から2023年1月または2月までの脳卒中症例1万1001件を対象とした。
一部の研究者らがバイオ医薬品会社のアキュメン社に勤務していたことが唯一、利益相反だ。論文は、アキュメン社が契約しているFDAからの資金提供を受けている。論文によると、「FDAは研究のデザインと実施、データの解釈、原稿の準備・レビュー・承認、出版に向けた投稿の決定に関与したが、データの収集、管理、分析には関与していない」という。
これまでの知見
ファイザー製の2価ワクチンと高齢者の脳卒中リスクは、2023年初頭に初めて報告された。FDAと米国疾病予防管理センター(CDC)は当時、政府のモニタリングシステムに「安全性シグナル」が現れたと発表した。
安全性シグナルとは、医薬品との関連が疑われる有害事象に関する情報のことで、さらなる調査・研究の必要性を示すものだ。
後にCDCは、このシステムから得たデータから、リスクの上昇は新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種に起因すると述べた。
フランスの研究者らが、2価ワクチンの接種が旧型ワクチンよりも脳卒中やその他の心血管系イベントの発生率が高いかどうかを調べたところ、前者の方が低いことが分かった。
「ブースター投与21日後において、2価ワクチン接種者は1価ワクチン接種者に比べて心血管系リスクの増加証拠は認められなかった」と彼らは医学雑誌『New England Journal of Medicine』に発表したレターで述べた。
キャスリン・エドワーズ博士とマリー・グリフィン博士は、最近の論説で以下のように述べている(両氏はFDAの研究やフランスの研究には関与していない)。
「この研究結果は心強いものである。高齢者におけるインフルエンザワクチンの継続的なモニタリングは、脳卒中リスクに関する追加データを提供するだろう」
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