最近行われた約50の研究をまとめたレビューによると、野菜をたくさん食べることが心臓病や一部のがんを予防する鍵となることがわかりました。
5月に「PLOS One」が発表したこの包括的なレビューは、2000~2023年の間に発表された48のレビューとメタ分析を評価しました。その結果、ベジタリアンやビーガンの食事が虚血性心疾患、消化器がん、前立腺がんのリスクを「大幅に減少させる」、そしてこれらに関連する死亡率も減少させることがわかりました。
病気のリスクを減らすために野菜をもっと食べよう
このレビューの結果は、野菜中心の食事が健康に良いという多くの研究を裏付けるものです。
心臓専門医で『The Plant-Based Solution』の著者であるジョエル・カーン博士は、「果物、野菜、全粒穀物、豆類などをたくさん食べることは健康に良いという科学的なデータがたくさんあります」と述べています。「実際に、1940年代や1950年代からこのデータはあります」
最近のデータもこれを裏付けており、2017年のレビューでは、野菜中心の食事が心臓病やがんのリスクを減らすと示されました。また、2023年のレビューでは、全粒穀物や豆類をたくさん食べることで、2型糖尿病や心臓病、一部のがんのリスクが減ることもわかりました。
さらに、野菜中心の食事が体重を減らし、2型糖尿病や心臓病のリスクを減らす証拠もあります。
野菜中心の食事の力は、慢性疾患の原因となる要素に影響を与えます。このレビューでは、「ベジタリアンやビーガンの食事が、血液中の脂肪のバランス、血糖値のコントロール、体重、炎症の改善と強く関連している」と述べています。これらの要因改善は、心臓病や2型糖尿病の予防につながります。
野菜中心の食事の鍵は自然食品にあり
すべての野菜中心の食事が同じように健康に良いわけではありません。最近の野菜中心の食事の人気の高まりに伴い、「肉汁が出る」植物性バーガーや食べられる骨付きのフェイクリブなど、さまざまな製品が登場しています。しかし、これらの多くは超加工食品のカテゴリーに入ります。
自然食品を中心とした野菜中心の食事と超加工食品を中心とした食事を比較した研究では、健康状態を改善し病気のリスクを減らすのは自然食品を使った食事パターンだけであるとしています。
これらの食品を日常の食事に取り入れるために、カーン博士はジョエル・ファーマン博士が提唱した「G-BOMBS」のようなフレームワークを勧めています。G-BOMBSとは、グリーン(緑の葉野菜)、ビーンズ(豆類)、オニオン(タマネギ)、マッシュルーム(キノコ)、ベリー(ベリー類)、シーズ(種子)の頭文字を取ったもので、抗酸化作用や抗炎症作用、抗がん作用を持つ栄養豊富な植物食品の範囲をカバーしています。
食物繊維、ポリフェノール、その他の病気を防ぐ成分
自然食品が健康に良い理由の一つとして、食物繊維の摂取が挙げられます。果物や野菜、豆類、全粒穀物には水溶性食物繊維が含まれており、この繊維は腸内の細菌と作用しあい、体重や全体の健康に良い影響を与えます。
また、野菜中心の食品には、ポリフェノールやスルフォラファンといった特別な成分が含まれています。これらの成分は炎症を抑えたり、心臓病のリスクを減らしたり、乳がんや前立腺がん、大腸がん、皮膚がん、肺がん、胃がんなどのがんを予防するのに役立ちます。
ただし、これらの結果をうのみにせず、慎重に考える必要があります。現在の研究では、研究方法や参加者の年齢、生活習慣が異なるなどの限界があります。また、バランスの取れていない野菜中心の食事は、ビタミンや他の栄養素が不足するリスクもあることが指摘されています。
野菜中心の食事で不足しがちな栄養素を補おう
ベジタリアンやビーガンにとって最も重要な栄養素は何でしょうか? それはビタミンB12です。
「ビーガンやベジタリアン、または主に野菜中心の食事をしている人は、ビタミンB12のサプリメントを摂るべきです」と、ビーガンの登録栄養士で『Vegan for Life』の共著者であるジニー・メッシーナ氏は言います。ビタミンB12は動物性食品や強化食品(栄養素を加えた食品)にしか多く含まれず、不足すると貧血や気分の変化、あるいは永久的な神経損傷を引き起こすと指摘しています。
野菜中心の食事では、ビタミンD、オメガ3脂肪酸、ヨウ素、セレン、鉄、亜鉛などのミネラルも不足しがちです。しかし、カーン博士はこれらの不足は野菜中心の食事に限った問題ではないと指摘しています。
必要な栄養素を確保するために、カーン博士は主に野菜中心の食事に切り替える人に対して、重要なビタミンやミネラルとオメガ3を組み合わせたビーガン用のマルチビタミンを摂ることを勧めています。
タンパク質が必要? 野菜にもあります
野菜中心の食事を考えるとき、ビタミンよりもタンパク質が不足するのではと心配する人が多いですが、実際にはほとんどの人はタンパク質のサプリメントを必要としません。
確かに、レンズ豆、エンドウ豆などの豆類、ナッツ、大豆製品などの植物由来のタンパク質は、動物性のものに比べて吸収されにくいのですが、その違いはわずかです。このため、栄養士のメッシーナ氏は、体重1キログラムあたり0.8グラムの推奨摂取量(RDA)よりも約10%多く摂取することを勧めています。体重が約68キログラムの人なら、1日約6グラムの追加タンパク質を摂ることになります。
しかし、年齢や運動量によってタンパク質の必要量は変わります。50歳以上の大人は、タンパク質の筋肉増強効果が低くなるため、骨や筋肉を維持するために、体重1キログラムあたり1〜1.2グラムのタンパク質摂取を勧めています。アスリートは、筋肉を増強し、激しいトレーニングをサポートするために、体重1キログラムあたり最大2.7グラムのタンパク質が必要になる場合もあります。
一般の人々にとっては、いろいろな野菜を中心に食品を食べることが全体的な健康を改善する最良の方法だとしています。メッシーナ氏によると、野菜中心の食事をするために、ビーガンである必要はありません。
「健康を最も気にかけている人は、90~95パーセントを植物由来の食事にすることを目指すと良いでしょう」
(翻訳編集:華山律)
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