がんに繋がるキッチン習慣――冷蔵庫や調理器具を正しく使いましょう

台湾中原大学バイオテクノロジー学科の教授であり、米国認定トキシコロジスト(毒性学における十分な教育と経験者)である招名威さんは、新唐人テレビ局の番組「健康1+1」で、冷蔵庫の正しい使い方や、野菜の洗い方と調理法を紹介しました。日頃の小さな習慣を変えれば、キッチンの有害物質から危険を遠ざけることができます。

 

がんの前兆となるサイン

招さんは今年3月に新書『抗がんに失敗した母』を出版しました。番組では、母親は甘いものは食べない、お酒も飲まない、たばこも吸わないのに、すい臓がんを患ったことに家族みんな驚いたと母親の生前の様子を紹介しました。

招さんは、母親が65歳で定年退職した後、一年も立たないうちに、頻繁に発熱したり食べても重が増えなかったりなど、体の異常が何度もあることに気づきました。最初、免疫、内分泌や感染症による発熱かと思った母は、泌尿器科と消化器内科を受診しましたが、原因はみつかりませんでした。最終的に腫瘍科の先生に診てもらって、CTスキャンとMRI検査を受けた結果、膵臓のそばに腫瘍があることがわかりました。

招さんは、がんの場合、外見の変化もなく、自覚症状もないまま静かに進行していく病気なので早期発見は非常に難しいのです。前兆のサインが出たら注意を払う必要があると述べました。

アメリカ国立がん研究所の資料によれば、体が表すがんの前兆となるサインは次のような症状です。

• 原因不明の体重の増加または減少

• 原因不明の発熱または寝汗

• 継続的に深刻な疲労感

• 皮膚の下にできたしこりやはれもの

• 排便や排尿の習慣の変化

• 原因不明の出血やあざ

• 持続的な咳や声のかすれ

• 嚥下困難、食後の痛み、食欲の変化

• かゆみや発赤などの皮膚の変化

 

間違った冷蔵庫の使い方、健康被害をもたらす

日常生活の中で、間違った習慣を身に付けた人が多くいます。例えば、食べものを冷蔵庫に正しく保存しなければ、がんを患うリスクを高めてしまう恐れがあります。

招さんは、食べ物を冷蔵庫に入れれば安心して長期保存できると思わないでくださいと強調しました。冷蔵庫の内部は常に湿度が高く、細菌やカビが繁殖しやすい環境となります。ただし、温度も低いので、その繁殖のスピードは比較的遅いです。

招さんは、冷蔵庫保存に向いてないものもあると指摘しました。例えば、食べ残した料理をラップせずに冷蔵庫に入れてしまうと、数日後、細菌やカビが生えてきます。それを食卓に再びだしたら、確実に体によくありません。

カビ毒は主に食事、呼吸及び皮膚との接触を通じて体に健康被害をもたらします。研究によると、室内でカビ毒に長時間触れることで、呼吸器疾患やがんを患うリスクが増すことが示されています。別の研究では、カビ毒であるアフラトキシン類に長期間接触すると、胆のうがんのリスクを高めることがわかりました。アフラトキシン類は肝細胞がんの元凶です。

開封済みの豆類(緑豆、大豆、赤豆など)を密封せずに冷蔵庫にいれると、細菌やカビが入り込んで、低温でゆっくり増殖するケースがあります。招さんは、冷蔵庫に入れた大豆に黒カビがたくさん生え、「黒豆」になって、家族に取り出されるのを目撃したことがあります。豆類は必ず冷蔵庫に入れて保存することはありませんが、入れるなら、密封容器に入れ保存すると良いとアドバイスしました。

招さんは、薬の保存も注意を払うべきだといいます。タンパク質系の薬と目薬は冷蔵庫に入れなければなりませんが、鎮痛薬や風邪薬は涼しくて乾燥したところに保管すれば十分です。冷蔵庫に入れる必要はありません。冷蔵庫に入った錠剤やカプセルにカビが生えているのを見たことがあります。

果物に関して、招さんは、一部にカビが生えたら丸ごと捨てることを推奨しています。腐った部分を切り捨てても、カビの細長い根っこが果物の皮を貫通して果肉に到達するので、このような果物を食べる時、カビも一緒に食べてしまいます。長期間続ければ、免疫力の低下、喘息、皮膚の赤み、アトピー性皮膚炎など発症しやすくなります。

チーズやパンの場合、カビが深いところまで生えているかどうかの判断は難しいので、カビが見えたら捨てましょう。

 

残留農薬 がんになるリスクを高める

農薬が残った状態の農作物に触れ続けると、臓器にさまざまな悪影響を与えます。研究者の分析では、有機リン系農薬は炎症を起こし、リンパ球の働きを妨げる上、微生物や免疫系と相互作用をし、酸化ストレスを増やし、女性ホルモンが乱れやすくなります。

その上、脳機能の損傷を起こし、細胞が、がん化するリスクも高めることがわかりました。別の研究では、農薬に触れることは膵臓がん、脳がんを患うリスクを高めます。

招さんは、農薬が体内で徐々に蓄積されると、免疫細胞が細菌を消滅させる力、つまり免疫力を低下させると指摘しました。

農薬は「水溶性」と「脂溶性」に分けられていますが、ほとんどの農薬は「脂溶性」です。なぜなら農作物に散布したら、雨による洗い流しに耐えることができるからです。そのため、水で洗うだけでは農薬を除去することは難しいので、招さんは、洗う時に少量の天然洗剤や重曹の使用を推めています。ただし、果物や野菜が傷んでしまうので使いすぎは禁物です。

招さんは、洗浄手順を以下のように説明しています。まず、果物や野菜を天然洗剤や重曹を加えた水に浸し、その後、スポンジで軽くこすって洗い、最後に流水で5分間すすぎます。これで、農薬の8~9割除去できます。完全に除去することはできませんが、健康への影響は最小限にとどまります。

 

レンジフードの使用 肺がんのリスクを減少

『ネイチャー』誌の姉妹誌である『サイエンティフィック・リポーツ』に2020年に掲載された台湾の研究報告によると、料理した時に発生した油煙を長期間吸収すると、肺がんを発症するリスクが増すといいます。多くの女性は喫煙しないのに、料理をするだけに肺がんを患うことがあるのです。

該当研究では、料理する時に、レンジフードを使用すれば、肺がんを患うリスクを50%以上低減できるとしています。

中華料理に「爆」という強火でスピーディーに炒める方法があります。炒める時に、油を敷いてニンニクを投入した後、香りを嗅ぐ動きがあります、この動きはダメなのです。招さんは、高温料理の時に発生した油煙の主成分はPM2.5、ベンゾ[a]ピレン、多環芳香族炭化水素およびホルムアルデヒドであり、このような化学物質を吸い続けると、肺細胞の炎症、細胞の死亡及びDNA酸化損傷による肺がんが発症する恐れがあると指摘しました。それが原因で、喫煙も飲酒もしない主婦が肺がんを患うケースが多いのです。特にアジア地域ではよく見られます。

油煙を減らし、呼吸器への侵入を防ぐために、高性能のレンジフードを設置することを推奨します。また、ガスコンロの横に換気扇を設置し、水平の位置から油煙を外へ出すのも効率的な方法です。

炒め方を変える方法もあります。「爆」をやめて、「水炒め」を試してみましょう。料理する際に、まず鍋を熱してから野菜をいれ、少量の水を加えて、蓋をします、数分後に火が半分ほど通ったら、油を入れて混ぜながら炒めます。この炒め方は油煙を減少させることができます。

 

有害なキッチングッズ

調理器具に含まれている有害物質が調理の過程で食品に溶け込み、体に摂取されると、病気のリスクが増すので、キッチングッズの選択も大事です。

招さんは、安全認証されたステンレス製の鍋を推奨しています。ステンレスは耐熱性がよく、鍋が焦げ付きにくいからです。鉄鍋は焦げ付きやすく、擦ったりすると傷つきます。その傷から重金属が溶け出し、次回の調理の際、食品と一緒に摂取してしまい健康被害をもたらします。

まだ、調理器具の材質に有害化学物質を含有する場合があります。招さんは、くっつかない、焦げないで人気なフッ素材脂加工鍋のフッ素材脂に有害化学物質PFOA(ペルフルオロオクタン酸)が含まれていると指摘しています。これが体内に蓄積されると、発がんのリスクが増えます。

さらに、招さんは、アルミ製の器具は傷に弱く、酸性物質に触れると、酸化アルミニウムを放出し、認知障害等の神経疾患を引き起こす可能性があります。メラミンを原材料とする食器も販売されていますが、基準値を超えているメラミンを使用した食器を使うと、腎臓結石、腎不全さらに死亡を引き起こす恐れもあります。まだ、色鮮やかなプラスチック食器の場合、使用されている顔料に重金属が含まれている場合があり、健康被害をもたらす恐れがあると紹介しました。

 

(翻訳編集 正道 勇)

林一山