夜市などで売られている焼き芋は、香ばしくて甘く、とろけるように柔らかく、まるで蜜のような味わいです。一方で、自宅で焼いた芋は、中まで火が通らなかったり、パサパサして満足感が得られないことも多いのではないでしょうか。
夜市の焼き芋と家庭の焼き芋では、何か大きな違いがあるのでしょうか? 実は、「焼く前に冷凍すること」このひと手間を加えるだけで、驚くほど美味しい焼き芋に仕上がるのです。

具体的な方法は以下の通りです:
- 大きさがちょうど良い生のサツマイモを用意し、一晩冷凍庫で凍らせます。
- オーブンを約235℃に予熱設定し、冷凍庫から取り出した芋をそのまま入れます。
- 芋の表面が黒くシワシワになり、皮が簡単にむけるくらいまで焼きます。通常は約70分ほどが目安です。
- 焼き上がった芋は、少し冷ましてから食べると、香ばしくて柔らかく、まるで蜜のような甘さを楽しめます。

焼く前に冷凍する焼き芋の仕組み
冷凍することで、サツマイモの細胞内にある水分が氷となって膨張し、細胞壁を破壊します。これにより、細胞組織が損傷し、後の焼き工程で変化が生まれます。
焼いている間に、氷となっていた水分が高温で蒸発し、すでに壊れている細胞構造が、加熱後によりふんわり柔らかく、ねっとりとした食感へと変化します。
さらに、細胞壁の破壊によって内部のデンプンが表面に出てきて、高温下でより完全に糊化(ゲル化)します。これは、水分を吸収して膨らみ、性質が変化し、糖分を放出する過程です。この変化によって、焼き芋はより甘く、なめらかな口当たりになります。

その他の焼き芋のちょっとしたコツ
収穫したばかりのサツマイモを使う場合は、すぐに焼かないのがポイントです。採れたての芋は水分が非常に多く、皮と実がしっかりと結びついているため、焼いても皮が剥がれにくく、風味も薄くなりがちです。こうした場合は、数日間、風通しの良い涼しい場所(または冷蔵庫)で寝かせて、水分を少し飛ばし、甘みを凝縮させてから焼くとより美味しくなります。
もう一つの小技は、「焼く前に芋に小さな穴を開ける」ことです。これは、熱が内部に通りやすくなり、均一に火が通る助けになります。ただし、すでに冷凍して細胞が壊れている芋にはこの作業は不要です。
また、「焼く前に蒸しておくと早く焼ける」という説もありますが、これはおすすめできません。というのも、サツマイモのデンプンは焼くことで高温によって活性化し、より多くの糖分を放出します。一度蒸してしまうと、この反応が起こりにくくなり、焼いたときのあの独特な甘みや香ばしさが得られなくなってしまうのです。

焼き芋に適したサツマイモの選び方
もちろん、料理の仕上がりは基本的に材料の質によって決まります。ですから、美味しく焼けるサツマイモを選ぶことがとても重要です。
まずは、長さも太さも中くらいのサツマイモを選びましょう。細長すぎると焼いているうちにパサパサになりやすく、逆に太すぎると加熱が均等にならず、部分的に硬くなったり柔らかくなったりしてしまいます。
また、サツマイモにはさまざまな硬さや色の品種があり、それぞれに甘さや食感が異なります。
一般的には、やや柔らかめの肉質を持つ品種の方が焼き芋に適しており、ねっとり甘い食感に仕上がります。たとえば、オーヘンリー(O’Henry)はふんわりとした肉質で知られ、日本のサツマイモ(紅あずまなど)は滑らかで糖分も適度にあり、焼き芋にぴったりの品種です。
一方で、あまり焼き芋に向かない品種もあります。たとえば、淡い黄色のベトナム産サツマイモは肉質がしっかりしていて、焼くよりもフライドポテトに向いています。中国の紫サツマイモは糖分が少ないため、調味料を加えてスイーツにする方が適しています。

じゃがいもは冷凍して焼いても美味しい?
じゃがいもとサツマイモは、どちらもでんぷんを多く含む「いも類」の仲間ですが、含まれるでんぷんの種類が異なります。じゃがいもは高温でもサツマイモのように糖分を多く引き出すことができません。
そのため、香ばしく焼けたとしても、じゃがいもはサツマイモのような“蜜のような甘さ”を感じる焼き芋のようにはなりません。
したがって、じゃがいもを冷凍してから焼く必要はありません。むしろ、マッシュポテト、フライドポテト、じゃがいものスライス焼き、千切り炒めなど、一般的な調理法の方が、じゃがいもの美味しさを活かすことができます。
(翻訳編集 華山律)
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