注意欠如・多動性障害(ADHD)の症状は、要求度の高い仕事や学校の活動に従事し続けることで、多くの人は大幅に改善したり、解消したりする可能性があると、最近の研究が示しています。
アメリカでは3歳から17歳の子どもの11%以上がADHDと診断されており、その診断率は近年着実に増加しています。
重症度は時間とともに変化する
2024年10月に『Journal of Clinical Psychiatry』が発表した研究では、学校や仕事、他者への責任といった環境要因が、ADHDの症状の変動に良い影響を与える可能性があることが示されました。
この研究は2022年の調査を基盤としており、ADHDを「断続的な寛解期間を特徴とする状態」と定義しました。その14年間の追跡調査の中で、ADHDの子どもの約30%がある時点で完全寛解を経験していたことが明らかになりました。
ワシントン大学医学部の精神医学・行動科学教授であり、両研究の主任著者であるマーガレット・シブリー氏は、要求度の高い生活と症状改善との関連性に驚いたといいます。
「確かに強い関連性が見られましたが、これは私たちの仮説とは逆の結果でした。人々の状態が良くなっていた年は、むしろもっと要求度の高い生活を送っていたのです」と彼女は記者声明で述べています。
ADHDの完全寛解の期間について
この研究では、アメリカとカナダの6カ所で少なくとも16年間追跡調査された483人の患者のデータを分析しました。平均開始年齢は8歳でした。
研究者たちは以下の結果を見出しました。
- 64%の人が症状の変動を経験(部分寛解から完全寛解まで含む)
- 寛解は思春期初期、12歳頃から現れ始めた
- 最小限の症状で完全に寛解するタイプと、軽度の問題が残る部分寛解の2種類が確認された
シブリー氏によると、完全寛解群とは、症状や障害がほとんどなくなり、すべての治療を終えた状態の人たちを指します。一方、部分寛解群は、形式的にはADHDの診断基準を満たさなくなるものの、生活の中で意味を持つ軽度の問題がまだ残っている人たちです。
また、シブリー氏は、完全寛解群、部分寛解群、ADHD診断の間を行き来する人々を「症状変動群」と表現しました。
さらに研究では、追加で3つの患者サブグループも特定されました。
- 約11%は「安定持続型」で、研究期間中毎年ADHDの診断基準を満たし続けた
- 15.6%は「安定部分寛解型」で、持続するADHDから部分寛解へ1度だけ移行し、その状態が研究終了まで続いた
- 9.1%は完全寛解を達成し、少なくとも2回連続の評価で再発が見られなかった
シブリー氏は、この豊富なデータセットにより、研究者たちは一人の人間の将来を一回の評価に基づいて臨床的に「スナップショット」するのではなく、ADHDの患者がどのようにこの状態を経験するかという「動く画像」を描き出せたと述べています。
ADHD症状に影響を与える要因
この研究結果は、ADHDのある患者が良い年とそうでない年の両方を経験する可能性を示しており、医師が患者に伝えるべきメッセージの重要性を強調しています。
「もしあなたがADHDの診断を受けたばかりの患者と話す医師なら、『いい年もあればそうでない年もあります。でも、適切な要因を整えれば、とても良い状態を維持できます』というメッセージは大きな助けになるでしょう」
「ADHDのある人は、自分の状態をよりよく管理するために、寛解期に寄与する個人的要因を特定する必要があります。また、生活にどんな要因を取り入れるべきかを学ばなければなりません」とシブリー氏は語ります。
科学は、ADHDのある人を助ける具体的な要因を引き続き解明していますが、患者自身がこれまでの人生を振り返ったり、セラピストと協力して成功した戦略を見つけることも可能です。
「寛解していた期間、調子がとても良かった時期に、何が自分を良い状態にしたのか。それを人生の中で再現できるかを自問することが大切です」とシブリー氏は言いました。
(翻訳編集 神谷一真)
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