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インスリンは味方か敵か 女性の体で起こる二重の働き

インスリンは、女性の変化していくニーズを陰ながら支えているが、ときにバランスを崩して悪循環に陥ることもある。
代謝健康をマスターする  第 1 話

女性の生殖ライフサイクルは思春期に始まり、やがて更年期へと至ります。そのすべての段階を通して、目立たないながらも重要な役割を果たしているのがインスリンです。インスリン抵抗性は、成長を促す自然な働きとして現れることもあれば、脂肪の蓄積や血糖の調整を乱し、糖尿病や心臓病へつながる「嵐」のような存在になることもあります。

内分泌学専門医で代謝健康の専門家でもあるロシャニ・サンハニ(Roshani Sanghani)医師は次のように指摘します。「女性がインスリン抵抗性を経験する主な時期は、思春期、妊娠期、そして更年期前後の3つです」

しかし、適切な食事を中心とした生活習慣の組み合わせ次第で、インスリン抵抗性をより良い状態でコントロールし、生涯を通してバランスを保つことができます。
 

人生の各段階で起こるインスリンのゆらぎ

1. 思春期:自然で一時的なインスリン抵抗性

思春期には、一時的にインスリン抵抗性が高まるのが自然な現象で、身長や体重、生殖機能の発達といった急激な変化を支えるためのエネルギー源となります。このインスリン抵抗性の上昇は成長ホルモンによって引き起こされ、身体がインスリンに対してやや鈍くなることで、急成長に必要なブドウ糖がより多く利用できるようになります。膵臓は血糖バランスを保つため、インスリンの分泌を増やして対応します。

しかし、糖分の摂り過ぎや加工食品、高脂肪食などの代謝負荷が高まると、この自然な調整機能が乱され、思春期の正常な発達を妨げたり、将来の2型糖尿病リスクを高めたりする可能性があります。

2. 妊娠可能年齢:多嚢胞性卵巣症候群との関わり

思春期に起こるインスリン抵抗性は通常の現象ですが、一部の若い女性では多嚢胞性卵巣症候群と重なって現れることがあります。多嚢胞性卵巣症候群では、体重増加や月経不順を伴うことがよく見られます。

サンハニ医師はこう述べています。「インスリン抵抗性こそが、多嚢胞性卵巣症候群と体重増加を結びつける大きな要因です」

多嚢胞性卵巣症候群の女性は将来的に2型糖尿病のリスクが高くなることも知られています。また、多嚢胞性卵巣症候群の治療に使われるホルモン療法(経口避妊薬など)が代謝の状態を悪化させる場合もあります。

3. 妊娠期:胎児の成長を支えるための仕組み

妊娠中は、胎児の成長を支えるため、身体が自然にインスリン抵抗性を高めます。膵臓の細胞も増えてインスリンの分泌量が上がりますが、代謝負荷が大きくなるとこの仕組みが追いつかず、妊娠糖尿病を引き起こすことがあります。

また、黄体ホルモン(プロゲステロン)が急速に増えることでもインスリン抵抗性は高まります。妊娠中の女性の約9%が妊娠糖尿病を発症し、産後もインスリン抵抗性が続いたり、一生を通して2型糖尿病のリスクが高まったりします。

4. 更年期前後:守られていたバランスが崩れる時期

50歳前後に差し掛かると、多くの女性が再びインスリン抵抗性の強まりを経験し、代謝や心血管の健康に大きな影響が出ることがあります。エストロゲンやプロゲステロンが減少することで、脂肪のつき方やインスリン感受性が変化し、腹部脂肪の増加や筋肉量の減少、代謝異常や心血管疾患のリスク上昇につながります。

婦人科専門家によると、長年健康的な生活を続けてきた人でも、腹部の脂肪増加や膨満感といった変化に気づくことがあるそうです。ホルモン補充療法(HRT)、特に皮膚から吸収するエストロゲンと、経口の微粒子化プロゲステロンを併用する方法は、インスリン抵抗性の改善、睡眠の質向上、気分の安定に役立ち、結果としてインスリン抵抗性のバランスを整えるサポートにもなります。
 

代謝を守るための重要なポイント

生活習慣、栄養、ストレス管理まで、複数の要素を組み合わせることで、人生のあらゆる段階でインスリン感受性を良い状態に保つことができます。

栄養補給

  • コレステロールを過度に抑えないこと:ホルモンはコレステロールを材料としてつくられ、DHEA やエストロゲンといった重要なステロイドホルモンの生成に欠かせません。このため、特定のスタチン系薬剤などでコレステロールを必要以上に抑えすぎないことが大切です。
     
  • たんぱく質と良質な脂肪を最適化する:多くの女性はたんぱく質の摂取が不足しがちで、1日80〜100gほどの摂取を目標にするとよいとされています。また、オメガ3脂肪酸は心臓の健康を守るうえで不可欠で、1日に2〜3gを目安にとりたい栄養素です。
     
  • 炭水化物を控える:サンハニ医師は「低炭水化物食が基本です」と強調します。
     
  • イノシトール:オレンジ、メロン、豆類などに自然に含まれるこの栄養素は、細胞がインスリンに反応する効率を高め、インスリン抵抗性や多嚢胞性卵巣症候群のある人に特に役立ちます。

生活習慣とストレス管理

  • 睡眠を大切にする:睡眠が乱れると、ストレスホルモンであるコルチゾールが上昇し、インスリンに影響を与えて血糖の安定を損ないます。
     
  • 筋力トレーニングを習慣化する:生涯を通じて筋力トレーニングを行うことは非常に重要です。筋肉量が増えると代謝が高まり、血糖コントロールが改善し、年齢とともに増えやすい体脂肪への対抗にもつながります。
     
  • 動的なバランスを保つ:代謝の健康は身体全体の総合的なプロセスであり、栄養・睡眠・ストレス管理・運動の「四つの車輪」のバランスで成り立っています。人生の状況に合わせてそれぞれを調整する「動的なアプローチ」こそが、インスリン抵抗性をうまくコントロールする鍵となります。

(翻訳編集 華山律)

ニューヨークを拠点とする健康レポーターである。栄養療法の専門家であり、機能的栄養と自然食品に重点を置いた活動を行っている。