ハエに悩まされた経験はありませんか。ブンブンとうるさく飛び回りますが、簡単に追い払うことはできません。なぜ、虫がよく人の周りにうろつくのでしょうか。専門家が詳しく解説しました。
アメリカの科学情報サイト「Live Science」の報道によると、種類によっては人の周りを飛び回るのが好きなハエがいるといいます。
アメリカ・ケンタッキー大学の昆虫学者ジョナサン・ラーソン氏によれば、ハエが人間に興味を示す原因は、人間が温血の哺乳動物であり、その分泌物がハエの餌となる可能性があるためです。人間が呼吸する際に排出する二酸化炭素にハエは引き寄せられます。蚊やシカアブなども同様です。
また、コーネル大学の昆虫学者ジョディ・ガングロフ・カウフマン氏は、ハエは人間が発する特定の匂いを感知する能力が高く、特に二酸化炭素、乳酸、カルボン酸などの匂いに強く反応すると指摘しています。
ただし、匂いの強さには個人差があります。
コロラド大学ボルダー校の昆虫学助教授サミー・ラムジー氏は、「もし匂いが目に見えるとすれば、人の体の周りに雲のような気体が漂っているように見えるでしょう」と述べています。
さらにラムジー氏は「皮膚から分泌される油脂成分や微粒子は、遺伝子、食生活、その日の活動内容によって変化するため、ハエを引き寄せやすい人とそうでない人がいるのだ」と説明します。
ラムジー氏によると、人間の汗や皮脂には炭水化物、タンパク質、さまざまな栄養素が含まれており、ハエにとって好みの餌となります。スポンジ状の口器で皮膚の表面をなぞるだけで、素早く吸い取ることができるそうです。
しかし、ラムジー氏は「ハエは汗だけを頼りに生きているわけではない」とも指摘します。動物の皮膚から摂取できる栄養分は微量で、それだけでは十分ではなく、むしろ汗から塩分を補給することの方が大きな目的だといいます。そして、さらなる食料を求めて人間の食べ物を狙うのです。
イエバエを含む一部のハエは腐敗した物を好みますが、基本的には何でも食べます。ただし、固形物をそのまま食べることはできないため、唾液に含まれる消化酵素で食べ物を液状化し、その後、ストローのような口器で吸い取ります。
地球上には11万種類を超えるハエが存在するとされており、種類によって食べ物を探すときに使う感覚器官も異なります。さらに、同じ種類でもオスとメスで異なる場合があります。
多くのハエは、触角や体毛を使って広範囲で特定の匂いを感知できます。感覚器官は空気中に漂う食べ物の匂いを探知し、その化学物質を脳に伝えることで、ハエが餌の場所を特定するのです。
ハエが好みの匂いを嗅ぎ取ると、その場所へ飛んで行き、止まります。足には味覚の感覚器官が備わっているため、止まった瞬間に食べられるものかどうかを瞬時に判断できます。
ハエはまた、何千ものオマチディア(個眼)で構成された複眼を持ち、動くものに非常に敏感です。その視野はほぼ360度に及び、視覚情報をもとに食べ物を探したり、危険を察知して逃げることができます。
ラムジー氏によれば、イエバエは特に厄介な存在です。生まれつき強い好奇心を持ち、人の周りをしつこく飛び回り、コレラ、結核、腸チフスなどの病原菌を媒介することもあります。
すべてのハエに有効な対策はまだありませんが、ジョディ・ガングロフ・カウフマン氏は、長袖の服を着たり、虫よけ剤を使ったりすれば、一部のハエを遠ざけられるとアドバイスしました。
本誌の過去の報道でも、イギリスの害虫駆除会社「Fantastic Pest Control」の専門家ジョーダン・フォスター氏が提案した、ハエを追い払う2つのオーガニックな方法を紹介しています。一つは、ペパーミント、ユーカリ、ラベンダー、シトロネラなどの精油を使う方法で、強い香りがハエを遠ざけます。もう一つは、ラベンダー、ミント、マリーゴールドなどの植物を育てる方法で、植物の独特な香りがハエを避ける効果を持ちます。
(翻訳編集 正道勇)
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