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研究:人工甘味料は発がん性に加え、脳の老化も促進か

世界保健機関(WHO)が人工甘味料アスパルテームを発がん性物質に分類した後、ブラジルの新しい研究ではさらに、人工甘味料を長期かつ過剰に摂取すると、記憶力や思考力が急速に衰え、脳の老化も加速することを指摘しました。特に60歳未満の人や糖尿病患者にその影響が顕著だといいます。

この研究は、ブラジルのサンパウロ大学、サンパウロ大学病院、ミナスジェライス連邦大学など複数の機関の科学者が共同で行ったもので、長期的に人工甘味料が脳の健康に予想外の悪影響を及ぼす可能性があると示されました。研究結果は9月3日、アメリカ神経学会の医学誌『Neurology』に発表されました。

研究の対象となったのは、ブラジル各地から集められた35歳以上の公務員12,772人で、平均年齢は52歳(女性54.8%、男性45.2%)。追跡期間は平均8年間にわたり、その間に3回の認知機能テストを実施しました。

研究チームは7種類の一般的な人工甘味料に注目しました。それは、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、タグアトースです。これらは主に調味水、炭酸飲料、エナジードリンク、ヨーグルト、低カロリーデザートなどの超加工食品に含まれています。

サッカリン、アセスルファムK、アスパルテームは代表的な人工甘味料です。一方、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールは、レタス、ブロッコリー、ナス、キノコ、ラズベリー、イチゴなどにごく少量含まれる天然成分ですが、人工的に合成され、他のゼロカロリー甘味料の甘さを和らげるために利用されます。

特にエリスリトールなどの糖アルコールは、低カロリー飲料やお茶、ガム、キャンディー、チョコレート、焼き菓子、ケトジェニック対応アイスクリームなどに多く含まれています。しかし、一部の研究では、エリスリトールやキシリトールが血小板の凝集を促進し、心臓病や脳卒中のリスクを高める可能性があるとも報告されています。

研究の開始前、参加者は過去1年間の食生活を詳しく記録した食事アンケートに回答しました。その内容をもとに、人工甘味料の摂取量に応じて3つのグループに分類されました。

全体の平均摂取量は92.1 ± 90.1mg/日 で、最低グループは1日平均20mg、中間グループは66mg、最高グループは191mg(およそ小さじ1杯分)でした。なお、最高グループの摂取量は、アスパルテーム入り無糖炭酸飲料1缶(200〜300mg)に相当します。

研究開始時、中期、終了時において、参加者は6種類の認知テストを受けました。これらは記憶力、思考力、言語の流暢さ、作業記憶、語彙の想起、処理速度を評価するもので、研究チームは年齢・性別・高血圧・心血管疾患などの影響を除外して分析しました。

「作業記憶」とは、学習・推論・問題解決といった複雑な課題を行う際に必要な情報を保持する能力を指します。また「言語の流暢さ」とは、会話の中で適切な語彙を素早く自発的に使える能力を意味します。

結果として、人工甘味料を最も多く摂取したグループは、最も少なかったグループに比べて思考力と記憶力の低下が62%速く、これは加齢にして約1. 6年分に相当します。中程度の摂取グループでも低下速度は35%速く、加齢にして約1. 3年分に相当します。

さらに詳細な分析では、60歳未満で最も多く甘味料を摂取した人々は、言語の流暢性や全体的な認知機能の低下が顕著であり、最も少なかった人々より明らかに早く衰退しました。一方、60歳以上では明確な関連は認められませんでした。

また、糖尿病患者は記憶力や全体的な認知機能の低下がさらに著しく、研究者はこれは非糖尿病患者に比べて人工甘味料の総摂取量が多いことに関連している可能性があると指摘しています。

研究では、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールが特に認知機能の低下、特に記憶力低下を速めることが示されました。ただし、タグアトースに関しては認知機能低下との関連は認められませんでした。タグアトースは果糖やブドウ糖と同じ単糖で、ごく限られた植物に含まれるほか、化学的または酵素的な方法で製造されます。

研究者はこの研究の限界として、すべての人工甘味料を対象にしていないこと、また食事データが参加者の自己申告に基づくため記憶の誤差がある可能性を挙げています。今後さらなる研究で不足を補う必要があるとしています。

研究責任者であるサンパウロ大学のクローディア・スエモト医学博士は「低カロリーやゼロカロリー甘味料は一般的に砂糖の健康的な代替品と見なされていますが、今回の研究結果は、特定の甘味料が長期的に脳の健康へ悪影響を及ぼす可能性を示しています」と述べています。

さらに彼女は続けてこう述べています。
「この研究は観察的研究であり、人工甘味料が直接的に認知機能低下を引き起こすと断定できるわけではありません。しかし、人工甘味料と認知障害との間に関連があることは確かです」

アメリカのラッシュ大学のトーマス・ホランド博士も、この研究と同時に発表した社説の中で次のように指摘しました。
「一般的にLNCS(低カロリー甘味料)は安全な砂糖代替品と考えられています。しかし、それは誤解を招く可能性があります。これまで『より健康的』とされて普及してきましたが、その実態は再検討が必要です」

ホランド博士はさらに、「今回の発見は、中年期の食習慣が数十年後の認知機能や脳の健康に影響を及ぼすことを示唆しています。この発見は、特に糖尿病や代謝症候群、脳血管リスクを持つ患者に対する標準的な食事指導を、神経科医が見直すきっかけになるかもしれません」と述べました。

この研究は、ブラジル保健省、ブラジル科学技術革新省、国家科学技術開発委員会の支援を受けて実施されました。

(翻訳編集 華山律)

吳瑞昌