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炭水化物を再び健康的にするには

店に入って2種類のオートミールを手に取ると、どちらも「100%全粒オーツ」と表示されており、炭水化物量は27g。ただし、一方は調理に30分かかり、もう一方は90秒で食べられます。あなたにとっては便利さの違いかもしれませんが、体にとってはまったく異なる食べ物になります。このわずかな違いが、エネルギーや食欲、さらには血糖に影響を与える可能性があります。

近年、炭水化物の評判は悪くなっていますが、すべての炭水化物が悪者ではありません。では、本当に健康的な炭水化物とは何でしょうか? それはラベルに書かれた含有量だけでなく、体内でどのように働くかに関わっています。

炭水化物は鎖のようにつながっており、体はそれを分解しなければなりません。消化とは、この鎖を細かく切って細胞が利用できる小さな分子にすることです。工場、或いは調理場で包丁、ミキサーによって処理されたものほど炭水化物の加工度が高くなり、吸収が速くなります。このスピードが体の反応を決定します。つまり、健康かどうかは「何を食べるか」だけでなく、「どれだけ消化に力と時間がかかるか」にも左右されるのです。

元アメリカ食品医薬品局長のデイビッド・A・ケスラー博士は、公式の食事ガイドラインに低炭水化物の選択肢を加えるよう呼びかけています。これは、「炭水化物はすべて不健康」という誤解を正し、本当に健康的な炭水化物とは何かを考え直す良い機会になるでしょう。

炭水化物に対する体の反応は、食物繊維の含有量、食べ合わせ、加工の度合い、そして活動量など多くの要因によって変わります。こうした要素が消化や血糖にどう影響するかを理解することで、より賢く、そして自分に合った選択ができるようになります。
 

炭水化物の定義

たんぱく質と脂肪に加えて、炭水化物は三大栄養素の一つです。「常量(マクロ)」とは、体が正常に機能するために多量に必要とする栄養素という意味です。炭水化物は体にとって最も主要で、最も取り入れやすいエネルギー源です。炭水化物は化学構造や含まれる糖分子の数によって分類されます。

ニューヨーク大学食品実験室主任で管理栄養士のルルデス・カストロ氏はエポックタイムズにこう語っています。炭水化物は次の3つに分類できます:

  • 単純炭水化物
     
  • 複合炭水化物
     
  • 食物繊維

単純炭水化物は、1~2個の真珠からなる短い鎖のようなもので、体は簡単に分解できます。複合炭水化物は、10個以上の真珠からなる長い鎖で、分解にはより多くの時間とエネルギーが必要です。

食物繊維は複合炭水化物に似ていますが、異なる点があります。それは「真珠」のつながり方のために体が分解できないことです。そのため、食物繊維は大部分が分解されずに消化器官を通過し、消化器の健康や血糖調整、満腹感の維持に重要な役割を果たします。

「一部の炭水化物は消化しにくいのです」とカストロ氏は言います。「でも、それは実は良いことで、特に健康な状態であればなおさらです」

一般的に、炭水化物が分解されにくいほど、代謝における利点は大きくなります。つまり、消化は「何を食べるか」だけでなく、「血液に入る前に食べ物がどれだけ咀嚼・調理・加工を経ているか」にも左右されるのです。
 

炭水化物は敵ではない理由

厳密にいえば、炭水化物は人間が生きるために必須の栄養素ではありません。しかし、それは炭水化物が悪者だという意味ではありません。

神経科学者で栄養学者のアナヤンシ・マシス=バルガス氏はエポックタイムズにこう述べています。炭水化物を完全に排除すると、パズルの重要なピース、すなわち腸の健康を失うことになります。

「腸が健康であることが、どんな恩恵をもたらすのかを本当に理解していないのです」とマシス=バルガス氏は言います。「食物繊維などを取り逃してしまいますし、肉だけを食べると、残念ながら一部の微量栄養素やビタミンが不足してしまうのです」

具体的には、食物繊維は腸内の微生物に栄養を与え、これらの微生物がビタミンBやビタミンKといった重要なビタミンを生成します。

カストロ氏によれば、最も誤解されやすい迷信のひとつが「炭水化物は太る」という考え方です。実際は1990年代に炭水化物の摂取がピークだった時期、肥満率は現在よりも低かったのです。

「つまり、炭水化物そのものが太る原因ではなく、それらの加工や私たちの扱い方に問題があるのです」と彼女は指摘します。「あらゆる添加物こそが本当の問題なのです」

この考えは、2023年に『イギリス医師会雑誌(BMJ)』に掲載された長期研究でも支持されています。研究者らは、砂糖や精製穀物といった精製炭水化物の摂取は体重増加と関連している一方、全粒穀物や食物繊維を多く含む炭水化物は体重の安定、さらには体重減少と関連していると報告しています。
 

なぜ消化速度と食物繊維が重要なのか

炭水化物は、体をすぐに燃焼させてエネルギーを得るための栄養素ですが、その燃焼の速さは種類によって違いがあります。再びオートミールの例に戻ると、店で100%全粒オーツの製品を2種類手に取ったとします。どちらも炭水化物量は同じですが、唯一の違いは調理時間。この違いが、実は想像以上に大きな意味を持ちます。

精製・加工された炭水化物、たとえば電子レンジで90秒加熱する即席オートミールでは、多くの天然の食物繊維や構造が失われています。そのため、消化器官はほとんど瞬時に炭水化物の長い鎖を分解し、ブドウ糖が一気に血液中に流れ込み、血糖値が急上昇します。体は簡単にエネルギーを得られますが、その後エネルギーが急に落ち込み、すぐに空腹を感じやすくなります。

一方で、30分ほど弱火で煮る全粒オートミールは構造や繊維がしっかり残っています。体はそれを分解するのに多くの時間と労力を必要とするため、糖がゆっくりと、段階的に放出されます。これによりエネルギーが安定して供給され、長く満腹感が続き、血糖値の調整にも効果的です。
 

炭水化物が体に与える潜在的な影響

アナヤンシ・マシス=バルガス氏は、炭水化物の消化と吸収はまず咀嚼の程度から始まると指摘しています。これは即席オートミールのような高度に精製された食品では軽視されがちです。なぜなら、ほとんど噛む必要がないからです。

唾液には複雑な炭水化物を分解する酵素が含まれています。加工度が高い炭水化物は咀嚼の必要が少なく、その結果、消化が速まり、ブドウ糖が早く血液に入ってしまいます。

さらに、調理方法も炭水化物の吸収速度に影響します。

「どの穀物が全粒かどうかだけでなく、調理の仕方も重要です」とマシス=バルガス氏は語ります。

彼女によれば、炊きたての白ご飯は糖がすぐに吸収されますが、炊いたご飯を完全に冷ましてから再加熱すると、消化しにくくなります。これは冷却の過程でデンプン分子が再配置され、レジスタントスターチが形成されるためです。名前の通り、レジスタントスターチは消化酵素で分解されにくく、その結果、糖の吸収が遅くなります。

また、カストロ氏はオートミールの作り方も精製度に関係すると説明しています。たとえば「オーバーナイトオーツ」は加熱せず、ヨーグルトや牛乳に浸して柔らかくしたものを食べます。この方法では体が分解しにくくなるのです。

彼女は炭水化物の調理法をスペクトルになぞらえて説明します。両端の片方には即席で粉状の精製オートミールがあり、消化器官はほぼ瞬時に処理します。その中間には調理した全粒オーツ(ロールドオーツやスティールカットオーツ)があり、より多くの消化の働きを必要とします。そしてもう片方の端にはオーバーナイトオーツがあり、体にとって最も分解しにくいものだとされています。
 

果物も健康的な炭水化物の供給源になり得る

カストロ氏とマシス=バルガス氏は、果物が炭水化物を含むという理由でしばしば不公平に批判されていると指摘します。確かに果物には単糖の一種であるフルクトースが含まれていますが、それは全体の一部に過ぎません。

果物には有益な食物繊維、ビタミン、ミネラルも含まれており、これらは体が糖をより効率的に処理するのに役立ちます。カストロ氏は、果物の繊維を「絡まった糸の塊」にたとえ、それがフルクトースの吸収を遅らせると説明しています。加糖飲料に含まれる「遊離糖」とは異なり、果物に含まれる天然の糖分は血液中にゆっくりと放出されます。

ただしマシス=バルガス氏は、現代の果物は私たちの祖先が食べていた野生種に比べてずっと甘くなっていると指摘します。食味を追求するための品種改良によって、糖の含有量は時代とともに増えてきました。

彼女は例として、夏に森で見つける野生のベリーは酸味が強く、糖分も少ないのに対し、スーパーに並ぶベリーははるかに甘いと述べています。果物がここまで甘くなるべきだったのかは議論の余地がありますが、炭水化物を考える上で重要な視点です。

これは果物が悪いという意味ではなく、代謝の観点からすべての果物が同じではない、ということを思い出させてくれるのです。

糖の作用を抑えるために、マシス=バルガス氏は果物をギリシャヨーグルトやナッツなど脂肪分を含む食品と一緒に食べることを勧めています。これにより消化が調整され、血糖の急上昇を和らげる効果があります。ただし「必要以上に複雑に考える必要はない」とも強調しています。

「恐れることはありません」と彼女は言います。「健康であれば、そのまま果物を食べても大丈夫です。特に運動前のおやつとして食べるのはとても良いことです」

果物は依然として栄養豊富な炭水化物の選択肢ですが、どれくらいの量を、どのくらいの頻度で、どんな場面で食べるかが、私たちが思う以上に重要なのです。
 

炭水化物のモニタリング

連続血糖測定器の普及により、糖尿病でない人々の間でも血糖を追跡することが健康トレンドになりつつあります。これらのデバイスは、炭水化物に対する体の反応をリアルタイムで教えてくれます。

「血糖の変動は必ずしも悪いことなのか?」とカストロ氏は問いかけます。「私が得た答えは『いいえ』です。食後に血糖が変動するのは自然な現象なのです」

重要なのは血糖がどれくらい上がるかよりも、それが高い状態でどれだけ維持されるかです。理想的には血糖は速やかに上昇し、その後下がること。長時間高いまま維持されたり、一日に何度も大きく乱高下するのは望ましくありません。

カストロ氏は、一部の連続血糖測定器ユーザーが「血糖の揺れをすべてなくそう」としすぎる傾向に注意を促します。代謝が健康であれば、そこまで気にする必要はないのです。

むしろ彼女は、連続血糖測定器を洞察を深めるための道具と捉えています。

「もし連続血糖測定器が『米だけ食べるより、米に豆を加えた方が良い』と気づかせてくれるなら、それはとても素晴らしいことです」と彼女は語ります。
 

天然由来の食物繊維を選ぶ

カストロ氏は、より健康的な食生活の鍵は「天然由来の食物繊維」に注目することだと考えています。

「もし誰かに、毎日40~50gの繊維を天然の食品から摂るように目標を設定したなら、その人は大量のジャンクフードを食べるのは非常に困難になるでしょう」と彼女は言います。

天然の食物繊維に重点を置くことで、自然と超加工された炭水化物が排除され、代わりにより自然な形の炭水化物食品を選ぶようになります。

より良い炭水化物を選ぶ際、マシス=バルガス氏は「できるだけ丸ごとで、加工の少ない食品」を勧めています。

「スーパーではできるだけ外側の売り場で買いましょう。新鮮な農産物、未加工の動物性食品、そして過度に手を加えられていない全粒穀物です」と彼女は言います。

栄養成分表も役に立ちますが、カストロ氏は「原材料リストの方が重要」だと考えています。ラベルを見るときのアドバイスとして、こう語っています。
「もし1つだけ数字を見るなら、食物繊維と添加糖です。ただし、原材料リストはもっと包括的にその食品の実態を物語ってくれます」

カストロ氏によれば、ジャンクフードには通常、長い原材料リストがあります。ビタミンの添加は問題ありませんが、さまざまな糖類、乳化剤、食感を改良する添加物や増粘剤が並んでいる場合、その食品はより厄介です。これらの余分な成分によって体は炭水化物をより早く消化してしまい、その結果、代謝上の問題を引き起こす可能性があるのです。

マシス=バルガス氏もこの意見に同意し、特に原材料名が長い食品、又、原材料の多くが見分けがつかないものや、高度に加工されたものは避けると述べています。

さらに彼女は、炭水化物の必要量は人によって異なり、運動量に大きく左右されると指摘します。そのうえで、活動量が少ないときには炭水化物を控えめにするのが有効ですと助言しています。

「でも、恐れる必要はありません」と彼女は言います。「とにかく体をしっかり動かしていれば大丈夫です」

(翻訳編集 華山律)

ニューヨークを拠点とする健康レポーターである。栄養療法の専門家であり、機能的栄養と自然食品に重点を置いた活動を行っている。