アメリカとカナダの大部分の地域では11月2日、標準時間へと「戻す」ことで、1時間多く眠れるようになります。しかし、専門家たちはこの年2回の時間変更が健康に良いとは考えていません。それでも、少し準備をしておくことで、自分の体内時計をスムーズにリセットすることができます。
サマータイム(DST)は現地時間11月2日(日)の午前2時に終了しました。つまり、寝る前に時計を1時間戻しておく必要があります(自動で調整されるスマートフォンは除きます)。標準時間は翌年の3月8日まで続き、その際に再び時計を1時間進めてサマータイムが始まります。
年に2回の時計の切り替えに対して、多くの人が不満を訴えています。春に時計を進めるときは、睡眠時間が1時間減るため適応が難しくなりますが、秋のサマータイム終了を惜しむ人もいます。というのも、日照時間が短くなり、時計を戻すことで放課後や仕事後の運動・屋外活動のための明るい時間が減ってしまうからです。
アメリカ医師会やアメリカ睡眠医学会をはじめとする複数の健康団体は、長年にわたって「年間を通して標準時間を採用すべきだ」と主張しています。
スタンフォード大学の最新研究もこの考えを支持しており、年2回の時間変更が私たちの健康に最も悪影響を及ぼすことを発見しました。研究によると、どちらか一方の時間制度を通年で採用するほうが健康的ですが、中でも標準時間のほうがわずかに優れているといいます。なぜなら、標準時間は太陽の動きと人間の生理的リズム、いわゆる「概日リズム」によりよく合致しているからです。
スタンフォード大学睡眠・概日リズム科学センターの共同所長ジェイミー・ザイツァー(Jamie Zeitzer)氏は、「体内時計が頻繁に時間の変更や他の要因によって乱されると、免疫系や代謝など、体のあらゆる器官システムの働きがわずかに低下します」と述べています。
多くの国はサマータイムを採用していません。サマータイムを導入している国(主に北米とヨーロッパ)でも、切り替えの日程は国によって異なります。アメリカでは、アリゾナ州とハワイ州は時計を動かさず、年間を通して標準時間を維持しています。
年2回の時間変更が健康に及ぼす影響
概日リズムの科学的仕組み
脳には「主時計(マスタークロック)」があり、これは光と暗闇への曝露によって調整されます。この概日リズムは約24時間周期で働き、眠気を感じる時間や覚醒のタイミングを決定します。
朝の光はリズムをリセットします。夕方になると、「メラトニン」と呼ばれるホルモンの分泌が増え、眠気を誘います。しかし、夕方に光を浴びすぎると(日中に外で長く過ごしたり、パソコンやスマートフォンなどの人工光を浴びたりすると)メラトニンの分泌が遅れ、リズムがずれてしまいます。
この概日リズムは睡眠だけでなく、心拍数、血圧、ストレスホルモン、新陳代謝などにも影響します。
睡眠と健康への具体的な影響
たとえ時計の1時間の変更であっても、睡眠スケジュールを乱します。なぜなら、時計が変わっても仕事や学校の開始時間は変わらないからです。
春のサマータイム開始のほうがつらく感じる人が多いようです。夜が明るくなることでメラトニン分泌が遅れ、寝つきが悪くなるうえ、最初の数日間は交通事故や心臓発作の増加と関連しているという報告もあります。また、季節性情動障害(SAD)と呼ばれる、日照時間の減少に伴ううつ病の症状が悪化する人もいます。
多くの人は時差ボケから回復するように、比較的容易に調整することができますが、交代制勤務者のようにすでに太陽のリズムと異なる生活をしている人や、慢性的に睡眠不足の人にとっては、時間変更がさらに大きなストレスとなります。
アメリカ人成人の約3分の1は、毎晩7時間未満しか眠っておらず、さらにアメリカの10代の半数以上は平日の夜に推奨される8時間以上の睡眠を取れていません。慢性的な睡眠不足は、心臓病、認知機能の低下、肥満、その他多くの健康問題と関連しています。
時間変更への準備方法
秋でも春でも、時間が変わる数日前から、毎晩15分ずつ就寝時間をずらしていくことで、体をスムーズに新しい時間に適応させることができます。
また、朝の太陽光を浴びることは、健康的な睡眠のために体内時計をリセットするうえで非常に重要です。外に出られない場合は、窓際で日光を浴びるだけでも効果があります。
アメリカで時間変更は廃止されるのか
アメリカ議会では、「サンシャイン保護法(Sunshine Protection Act)」と呼ばれる法案が提出され、サマータイムを恒久化することが提案されています。しかし、ここ数年、この法案は進展していません。
(本文はAP通信の報道を参考にしています)
(翻訳編集 解問)
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