免疫は強ければよいわけではない 健康長寿を支える「オフスイッチ」の働き

健やかな免疫系には、アクセルとブレーキの双方が必要です。感染や損傷が起きたときは力強く応答しなければなりません。しかし、危険が過ぎたあとは、止まる方法も知らなければなりません。

加齢とともに、その制動系は信頼性が低下することがあります。免疫系は本物の脅威への応答では効果が落ちる一方、低い水準で慢性的に活性化したままになることがあります。この逆説は、加齢が感染への脆弱性の高まりと、炎症関連疾患の負担の増加の双方に結びつく理由を説明する助けになります。

機能医学の専門家オウ・ハンウェン氏は、健やかな免疫とは最大の強さではなく、適切に応答してから均衡へ戻る能力だと述べています。その能力を保つことが、健やかな加齢の見落とされがちな土台になり得ると、同氏は新唐人テレビの番組「健康1+1」で語りました。
 

免疫の警報が鳴り続けるとき

炎症は本質的に有害なものではありません。感染を制御し、傷ついた組織を修復する、体に不可欠な防御機構の一つです。問題が起きるのは、炎症応答が十分に収束せず、免疫の警報がかすかに鳴り続けるときです。

研究者は、この持続する加齢関連の背景炎症を「インフラメイジング」と呼ぶことがあります。これは、心血管疾患、2型糖尿病、関節炎、認知症、その他の慢性疾患と関連づけられてきました。ただし、これらの疾患に関わる多くの要因の一つであり、加齢や疾患の唯一の原因ではありません。

こうした炎症は、代謝と深くつながっています。血糖管理の不良、過剰な内臓脂肪、筋肉量の減少は、炎症シグナルを促すことがあります。逆に、炎症は血糖調節、脂質代謝、睡眠、筋肉の維持をさらに妨げ、代謝機能の不全と免疫の活性化が互いを強め合う循環を生み出すことがあります。

慢性ストレスも、この悪循環を強める要因になり得ます。コルチゾールは通常、目の前の課題に対処するためにエネルギーを動員し、免疫応答が過剰になるのを防ぎます。しかし、身体的または心理的なストレスが続くと、体のストレス応答系が乱れ、血糖、睡眠、炎症の調節が難しくなることがあります。

オウ氏によると、睡眠不良、消化の問題、代謝機能の不全などに対処したあと、血糖値や血圧の改善を経験した患者がいるといいます。こうした観察から、炎症がそれらの状態の唯一の原因だと断定することはできません。むしろ、一つの負担要因を減らすことで、相互につながる複数の系にわたって利益が生まれ得ることを示しています。

免疫の調節は、本物の脅威と無害な曝露を区別することに一部依存しています。そのため、免疫を調節するうえで最も重要な訓練の場の一つが腸です。
 

免疫の訓練場としての腸

腸管には、体内で最大級かつ最も活発な免疫区画の一つがあります。毎日、そこで免疫細胞は食品成分、有益な微生物、潜在的な病原体に出会います。無害なものには耐え、危険なものには攻撃できるよう備えていなければなりません。

オウ氏は、便秘、下痢、膨満感、吐き気、その他の消化の変化が続く場合には注意するよう勧めています。これらの症状はよく見られ、必ずしも免疫機能の不全を示すわけではありません。しかし、症状が長引いたり、原因が分からなかったりする場合は、消化、食事、薬の使用、あるいは根本的な疾患に注意を払う必要があるというサインになり得ます。

日常生活でできる対策として、オウ氏は、ゆっくり食べること、食べすぎを避けること、加工度が高く糖分の多い食品を減らすこと、さまざまな植物性食品から食物繊維を摂取することを勧めています。

食物繊維は、免疫の「オフスイッチ」に特に関わっています。腸内細菌は特定の食物繊維を発酵させて短鎖脂肪酸を作り、大腸の内壁を構成する細胞に栄養を与え、腸のバリア機能や免疫応答の調節を助けます。野菜、果物、豆類、全粒穀物、ナッツ、種子は、それぞれ異なる種類の食物繊維を含んでいます。そのため、一つの「スーパーフード」に頼るよりも、多様な食品を取り入れることが役立ちます。

一方、プロバイオティクスは、万能の免疫ブースターとして扱うべきではありません。その効果は菌株や健康状態によって異なり、摂取量が多ければよいとは限りません。

腸は、免疫の調節に関わる仕組みの一部にすぎません。目指すものが免疫の最大限の活性化ではなく、柔軟な調節能力であるなら、日常の習慣は、より広い視点から判断する必要があります。つまり、体が通常の状態に戻るのを助けるかどうか、という視点です。
 

体が通常の状態に戻るのを助ける

睡眠は、その最も分かりやすい例の一つかもしれません。睡眠と免疫は双方向に影響し合います。免疫活動は睡眠に影響し、睡眠は自然免疫と獲得免疫の応答を調節する助けになります。長引く睡眠不足は、持続的な低度の炎症を促すことがあります。規則正しく十分な睡眠を取ることは、単に休息を感じる以上の意味を持ちます。

オウ氏は、30分早く寝ることや、就寝・起床時刻を一定にすることなど、小さくても継続できる変化から始めるよう提案しています。こうした習慣の価値は、特定の時刻に寝ること自体ではなく、体に回復のための時間を安定して確保することにあります。

体を動かすことも、別の調節シグナルを与えます。定期的な身体活動は、インスリン感受性を改善し、筋肉の維持を助け、内臓脂肪を減らします。これらはいずれも、炎症ストレスの原因を減らすことにつながります。また、一回一回の運動も、炎症と抗炎症の活動を協調させるシグナルを生み出します。目標は、激しいトレーニングである必要はありません。ウォーキング、レジスタンストレーニング、水泳、自転車など、継続できる運動を、自分の健康状態や体力に合わせて選ぶことができます。

ストレス管理の実践も、同じような目的を果たします。呼吸法、瞑想、祈り、屋外で過ごす時間、人とのつながり、身体活動は、人生のストレスそのものをなくすわけではありませんが、体が長時間にわたって生理的な警戒状態にとどまるのを防ぐ助けになり得ます。ただし、不安やうつ、不眠が長く続く場合は、セルフケアだけでなく、専門的なケアが必要になることもあります。

最後に、オウ氏は、免疫や長寿に良いと宣伝されているという理由だけで、複数のサプリメントを摂取することには注意が必要だと述べています。サプリメントは、記録などで確認された必要性を補うことはできますが、睡眠、身体活動、栄養バランスの取れた食事、適切な医療の代わりにはなりません。製品によっては、成分が重複していたり、薬と相互作用したりすることもあります。そのため、目指すべきなのは、やみくもに補充量を増やすことではなく、目的に応じて適切に補うことです。

これらの習慣を組み合わせることで、必要なときには応答し、脅威が過ぎたら均衡へ戻る力を保つ助けになり得ます。健やかな加齢には、強い防御だけでは不十分です。免疫の働きを落ち着かせる調節機能と、回復する力も重要です。

(翻訳編集 日比野真吾)

英文大紀元が提供する医療・健康情報番組「健康1+1」の司会者を務める。海外で高い評価を受ける中国の医療・健康情報プラットフォームであるこの番組では、コロナウイルスの最新情報、予防と治療、科学研究と政策、がんや慢性疾患、心身の健康、免疫力、健康保険など、幅広いテーマを取り上げている。
Shan Lam