氷河に潜む14万年前のウィルス

【大紀元日本8月20日】地球温暖化が進むにつれて、世界各地の氷河が溶け始めており、これによって、海面上昇が引き起こされるだけでなく、未知のウィルスの出現という更なる脅威もやって来るという。

米オハイオ州立ボーリング・グリーン大学(Bowling Green State University)のスコット・ロジャース教授は、極地の氷中に存在する微生物の探査・研究を行っており、このほど、ある氷河から採取した氷芯の中に14万年前の未知のウィルスを発見したという。

ロジャース教授は、このウィルスは氷の中で冬眠状態で14万年近くも生き続けているとしたうえで、このウィルスの伝染方式が人類史上のいかなる文献にも記載されていないからといって、発生しないとは言い切れないと指摘した。

研究者はこれまで、溶け始めた太古の氷層の中に隠れているウィルスは、インフルエンザウィルス、骨髄灰質ウィルス、天然痘など相当な種類に及ぶうえ、未知のウィルスも数多く存在することを発見している。

ロジャース教授の研究グループは、これらのウィルスは人類や水生生物あるいは他の生物など、このウィルスに免疫力のない宿主が現れるのを待っており、一旦適当な宿主を見つけたら、急速に増殖し、その宿主の同種間で感染が広まっていくと推測している。

中国科学院寒冷・干ばつ地区環境及び工程研究所で氷河微生物の研究に従事している張新芳博士は、中国青藏高原の氷河に同様に古代ウィルスが存在しており、それらの遺伝子は気候の温暖化によっていつでも解き放たれてしまう可能性があると指摘する。

米オレゴン州立大学の微生物学専門家カルバン博士は、氷河ウィルスの危険性を次のように指摘する。「人類の自己防御能力は、人類社会から消失して何千年も経つこれらウィルスに対しては脆弱なもので、一度伝染し始めたら大規模な感染流行が起こるだろう」。博士はまた、数十年ごとに沿海地帯に現れる、伝染性下痢症を引き起こすウィルスの棲息地が南極北極の氷河であるということを例にして、氷河ウィルスの危険性を指摘した。

中国科学院地学部主任・秦大河院士は、350年前と比べ、中国の氷河の総量は4分の1減少しており、2050年までにさらに4分の1減少すると指摘した上で、氷河という「パンドラの箱」が一旦開いてしまったら、その氷中に存在する大量の古代ウィルスは、中国内外の各国にとって大きな脅威となるであろう。そして、その毒性は未だ未知であり、大規模に発生してしまったらその危害は計り知れず、しかも、遅かれ早かれその事態が発生するだろうと語った。