天人合一の古代建築 紫禁城

【大紀元日本1月10日】北京市の中心に位置する紫禁城は故宮とも呼ばれる。明朝と清朝の皇宮(紀元1368~1912年)であり、24人の皇帝がここに居住した。紫禁城は比類なき古代建築の傑作、世界で最も完全に保存されている最大の古代木造建築群といわれている。

 全建築群は南北961m、東西753m、敷地面積72万㎡、総建築面積15万㎡の広さを誇る。周りには高さ10mの城壁があり、さらにその外は幅52mの濠に囲まれている。四面に各一つの城門、南に午門、北に神武門、東に東華門、西に西華門がある。

 中国伝統文化の源である孔子と老子の思想が、紫禁城にも色濃く表れている。「紫禁城」という名前も、中華伝統文化の「天人合一」の思想の表れである。中国古代の天文学では恒星を三垣に分け、その周囲に28宿が分布していると考えられた。紫微垣(北極星)は天の中央にあり、すべての星宿の中心である。紫禁城の「紫」も、「紫微中央」の紫を意味し、皇宮が世間の「中央」にあることを示している。「禁」は禁地の意味で、皇室の所在地であるため比類なく尊厳があることを示している。その他、部屋の数も天宮に比して造られている。天上の天帝は1万室の宮殿があり、地上の皇帝は天帝を越えてはならない。故に、紫禁城は9999室からなると言われていたが、実際には8704室しかないという。

 紫禁城の建物の扉には9本(あるいは9の倍数)の銅釘が打ち込まれている。9は数字の中で最も大きく、皇帝は世の中で最も上に立つ人を意味している。その他に9は「久」と同じ発音であり、「永久」を意味し、王朝が永久に続くことを願う意味が込められている。建物の名前にはよく「仁」「和」「中」「安」などの字が使われ、天安門や太和殿など、これらの字には中国儒家思想の「中正」「仁和」の理念が表れている。

 皇帝が住む乾清宮や皇后の住む坤寧宮、及び皇帝と皇后が一緒に生活する交泰殿などの名前は、儒家の経典『周易』と関係がある。『周易』によると、「乾」は陽、天、男性を表し、「坤」は陰、地、女性を表し、「泰」は陰陽和合、安泰を表す。つまり、乾清宮は天陽のように輝いて清らかなところ、坤寧宮は大地のように穏やかで安らかなところ、交泰殿は夫婦が安泰に生活できるところを意味している。

 建物の色も天地陰陽の理に合わせて造られている。紫禁城の建築には多くの黄色と赤色が見られる。『周易』の「八卦」の理論によると、黄色は坤卦の色で土に属し、中央を代表し、厚い徳で万物を背負うことを象徴する。また、土は万物の本であり、皇帝も万民の本である。故に紫禁城の建物の屋根は殆ど黄色の瑠璃瓦に覆われているのである。更に、室内の壁の色や皇帝の衣装にも多くの黄色が使用されている。

 一方、赤色は離卦の色で火に属し、南方を代表し、明るく四方を照らすことを象徴する。故に建物の外壁は多く赤色が塗り付けられている。黒色は、坎卦の色で、水に属し、北方を代表し、暗黒、困難を象徴していることから、紫禁城の建物には殆ど黒色が使用されていない。唯一黒色の瑠璃瓦が使われている建物は、蔵書楼の「文淵閣」である。五行の中で黒色は水を象徴しており、水は火を抑制する力があるため、蔵書楼に黒色の瑠璃瓦が使われたのは、火事を抑制する意味が込められている。

 中国古代の建築物は伝統文化の陰陽、五行を反映し、天人合一の思想を表している。中国伝統文化を知れば、より深く古代の文化遺産を理解することができるだろう。

 (翻訳編集・東山)