冬のだるさと胃もたれに 酸味で巡らせる「酢豚」養生

冬は自然界にとって、あらゆるものが静かに力を蓄える季節です。木々は葉を落とし、地面の下には春に芽吹くためのエネルギーがひっそりと蓄えられています。人の体も自然と同じように、陽気(体の温かさやエネルギー)を守りながら、しっかり休んで次の季節への準備を進めるべき時期なのです。

この時期は、なぜか食欲が増して肉料理を食べたくなる人が多くいますが、それは体が自然にエネルギーを欲しているから。春に向けて備えようとする、本能的な反応です。

冬の肉料理がつらい人へ 酢豚で軽やかに

ただし、肉を食べすぎると、消化が追いつかず、胃もたれやお腹の張り、だるさなどが出やすくなります。中医学では、季節や内臓の働きを「五行」という考え方で捉えています。

胃もたれのイメージ写真(Shutterstock)

冬は「水」の季節で、体のエネルギーを蓄える「腎」が深く関係しています。一方、胃腸は「土」に属し、体の栄養をつくる大事な部分。もし胃腸が湿気や冷えで弱ると、腎が必要とするエネルギーをうまく支えられなくなってしまうのです。

そこで昔の人は、食べたものが体にちゃんと消化・吸収されるよう、酸味と甘味をうまく使って、肝臓を整え、胃腸を元気にする「酢豚」という料理を考え出しました。これは薬膳の知恵が詰まった健康料理なのです。
 

五行で見るとわかる 酢豚はなぜ消化を助けるのか

中医学では「食べ物も薬も、もとは同じ」という考えがあります。食材の味や性質にはそれぞれ五行(木・火・土・金・水)に対応する力があり、内臓の働きを助けるとされています。

たとえば、甘い味は「土」に属し胃腸に効き、しょっぱい味は「水」に属して腎に作用します。辛味は肺、酸味は肝、苦味は心臓に働きかけるとされます。
酢豚はこの理論にぴったり当てはまる料理です。

主な材料の豚肉は甘味と塩味があり、甘味は胃腸を元気にし、塩味は腎の働きを助けて体のエネルギーを蓄える役割があります。

ピーマンは緑色で「肝」に効き、味はピリッとしていて、肝の気を整え、消化を助けます。玉ねぎは温かい性質で、肺と胃腸の働きを助け、気の巡りを良くし、寒さからくる不調にも効果的。にんじんは甘くて胃腸に優しく、全体の食材のバランスを整えます。

そして主役の「酢」は酸味で「肝」に働きかけ、気や血の流れをスムーズにし、食べ物の脂っこさを和らげてくれます。

酸味と甘味をうまく組み合わせることで、肝の緊張をほぐし、痛みを和らげ、胃腸の働きもスムーズになります。これが、冬に肉を食べるときに酢豚が最適だと言われる理由です。
 

肝と胃腸をととのえて 冬の「食べすぎ停滞」を防ぐ

冬は栄養をしっかりとることが大切ですが、胃腸の力を無視して食べすぎてしまうと、かえって消化不良を起こしてしまいます。

中医学では、「五臓六腑はすべて『気』の流れで動いている」と言います。気が滞ると、いくら栄養をとっても体に負担になるだけです。

肝は「気」や「血」の流れを整える役目があり、胃腸は食べ物を消化吸収する要の臓器です。肝の気がスムーズに流れていれば、胃腸もよく働きます。逆に肝の気が滞ると、肝が胃腸に影響を与え、調子を崩してしまいます。

冬は体のエネルギーが内にこもりやすく、肝の気も滞りがち。さらに肉をたくさん食べると、湿気や痰がたまり、胃腸の働きが鈍くなります。こんな時こそ、酸味のある食材で肝の気を整え、辛味や甘味で胃腸の働きを助けてあげることが大切です。

昔の人が冬に甘酢を使って肉料理を調理したのは、「酸味で滞りをほぐし、辛味で気の流れを良くし、甘味で胃腸を整える」という知恵から来ています。

これは自然の流れに合った食べ方で、エネルギーをしっかり蓄えつつ、体の中が滞らないように整える、とても理にかなった方法なのです。
 

レシピ:胃腸を休ませる薬膳「酢豚」

酢豚のイメージ写真(Shutterstock)

材料(4人分)

  • 豚ヒレ肉……300g(食べやすい大きさに切り、塩・酒・片栗粉を少し加えて10分ほど下味をつける)
  • ピーマン……2個(ざく切り)
  • にんじん……1/2本(薄めの輪切り)
  • 玉ねぎ……1/2個(細めのくし切り)
  • にんにく(みじん切り)……小さじ1
  • 生姜(千切り)……少々

【調味料】

  • 水溶き片栗粉……適量(とろみづけ用)
  • 醤油……大さじ2
  • 米酢……大さじ2
  • 砂糖……大さじ1.5
  • みりん……大さじ1

作り方

  1. フライパンに少量の油を熱し、にんにくと生姜を炒めて香りを出す。
  2. 下味をつけた豚肉を入れ、軽く焼き目がつくまで炒める。
  3. にんじん、玉ねぎ、ピーマンを加え、全体がしんなりするまで炒め合わせる。
  4. 調味料を加え、全体にしっかり絡むように手早く炒める。
  5. 最後に水溶き片栗粉を加えて、軽くとろみをつけたら完成。

こんな方におすすめ

  • 冬に手足が冷えやすい方
  • すぐ疲れを感じる方
  • 食欲はあるけれど、消化が遅く感じる方

※胃腸が弱い方は酢を少なめに、イライラしやすく食後にお腹が張る方は、ピーマンと酢を少し増やすとより効果的です。

期待できる効果

  • 胃腸の働きを整えて、消化を助ける
  • 肝の気の流れをスムーズにして、ストレスをやわらげる
  • 食べすぎや脂肪のたまりを防ぐ
  • 冬に起こりやすい気分の落ち込みやだるさの緩和にも効果的
     

結び

冬の栄養補給は、たくさん食べることではなく、季節に合った食べ方で体のバランスを整えることが大切です。

「酢豚」は、ただ美味しいだけではなく、日々の食事の中で気や血の流れを整え、体を温め、春に向けたエネルギーを育てる知恵が詰まった一品です。酸味で肝を整え、甘味で胃腸を助け、辛味でめぐりをよくする――そんな薬膳の力を、ぜひ食卓に取り入れてみてください。