中国の神話伝説「道家八仙人」の一人として知られる張果老。中国の史書によると、彼は唐の時代、恒州中條山に住み、当時すでに数百歳だったと伝えられています。
仙人はやはり一般の俗人とは違いました。張果老はいつも白い驢馬に乗り、一日数万里(数百キロメートル)移動したという伝説があります。休憩する時は驢馬を紙のように折りたたんで小箱に納め、乗る時には水を吹きかけて元に戻しました。
さて、張果老は何故後ろ向きにロバに乗ったのでしょうか? 幾つかの民間説がありますが、唐の終わり頃、当時有名な張天師(道教5大門派の一つ「正一道」の創始者)の言葉から、その理由を垣間見ることができます。
今の時代を予見していた
張果老は張天師に言いました。「今から千年後の社会では、官職についている者は公に賄賂を貰い、まさに鬼が食べ物を奪い合う有様である。また、一般の民衆は親孝行の提唱を排除し、淫らな風潮を広げ、節義廉恥と礼儀を忘れ、利己的になります」。千年後の現代の中国社会に照らし合わせてみると、まるで張果老は予測していたかのようです。
張果老は「乱」についても論じました。彼は刀や銃で四方八方から攻めてくる戦争は本当の「乱」ではなく、人々の道徳心がなくなり、鬼と化した時代になれば、本当の「乱」になると言いました。(清・無垢道人の「八仙得道傳説」より)
張果老は、社会の状態が日増しに悪くなり、「道(どう)」からますます離れてしまうことを懸念しました。彼は、歴史が流れて前進することは後退することであると考え、後ろ向きにロバに乗ったのです。
(翻訳編集・豊山)
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