「帝国主義」という歴史用語がある。
▼その是非はともかく、昔(特に19世紀において)は世界の各所に見られた。強国が弱国を支配下におく、あるいは独立させず植民地にして、その人民から搾取する形態である。
▼帝国主義の定義については、小欄では触れない。筆者は、植民地主義と言い換えてよかろうと思っている。その語頭に、英、仏、独、米などの国名をつけて「ナニナニ帝国主義」と左翼は好んで呼んだ。20世紀に入ると、列強の最後尾に日本も参加する。日本の言い分は、筆者も多少は代弁できるが、今は控えておく。
▼英語はインペリアリズムだが、やはり中国人が、漢語の大声でそれを言う場合が多い。しかも、そのまま怒りの表現になる。「日本帝国主義!」は罵語なのだ。日本人が、当時の状況をニュートラルに説明しても、中共治下の反日で洗脳された中国人は、聞く耳をもたない。歴史とは、片方だけの責任で進展するものではないのだが。
▼1925年5月30日。上海の租界で「5・30事件」が起きた。中国語では、惨劇を意味する語をつけて「五卅惨案」と言う。これだけで「被害者は中国人。悪いのは外国人」の印象づけになる。5月中旬の労働者の暴動から、30日、学生と労働者のデモに発展。それに対し、イギリス人警部の命令で、中国人警官およびインド人警官が発砲し13人が射殺された。
▼確かに痛ましい事件だ。しかし、と思う。それにも勝る惨劇を、今、「中共帝国主義」は香港にもたらしている。「歴史を鑑とせよ」とは、よく言ったものだ。その言葉、中南海へお返ししよう。
【紀元曙光】2020年5月30日
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