(前稿に続く)先述した2017年11月のトランプ大統領訪中時に、習近平主席は、懇談のなかで「龍的伝人」と自称した。
▼「龍的伝人」とは、龍の子孫。つまり自身が「伝統中国の継承者である」という意味を含めたらしいが、それはナンセンス。この言葉は、中華圏の人ならば誰でも知っている歌の題名で、1978年に台湾の作曲家・侯徳健がつくったものだ。
▼そこには、米国が1978年に台湾(中華民国)と断交し、1979年1月1日より中華人民共和国と外交関係を結んだ背景がある。台湾人の深い悲しみがある一方で、「我ら台湾人こそ正統な中国文化の継承者だ」という誇りが、この歌の魂となっている。
▼習近平氏は、たぶん背景を知らずに、それを口にしたのだろう。いずれにせよ、彼は墓穴を掘った。89年の六四天安門事件の際、当時32歳だった侯徳健は、天安門広場で他の3人とともに決死の絶食抗議をして「四君子」と呼ばれている。
▼遠くない将来に来ている「中共なき中国」。しかし、すぐに正常な社会には、ならない。中国共産党が人民に注入した猛毒が、枯葉剤のごとく人間の道徳を枯らし、人の心を変質させすぎたためだ。中国大陸に、日本のような精神の「ぬか床」があるとすれば、中国のそれは完全に腐っている。全部捨てるしかない。
▼香港の若者が勇敢に戦っている。台湾の政府と国民が、毅然とした態度で中共に対峙している。時至れば、そうした良心の華人が、大陸の人々を再生させるのだ。味の良い「ぬか床」の種を、海外から持ってきて中国甕に入れる。時間は多少かかるが、希望はある。(4回了)
【紀元曙光】2020年6月23日
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