時間が経つにつれて、ウェンシーは建物全体を壊し終え、木材と石材全部を山の下へと運んだ。すべての工程を終えると、師父はウェンシーを北の山の山頂へと連れて行った。「怪力君、この前は、わたしはどうも酒に酔っていたようだ。今度はここに僧房を築いてくれ」
「先生…」話の最後にウェンシーが口を開いた。「私が建てても壊せと言われますが、私が無駄な作業をするのはいいとしても、先生がお金を浪費するだけです。今度はよくお考えになって、間違いがないようにしてください」
「安心しろ、今度は、わしは酒には酔っておらん。仔細を話せば、わしは今度ここに、三角形の家を建ててほしいのじゃ。今度は壊せとは言わん」
ウェンシーは師父の言葉を聞いて、すぐに三角形の家をを築き始めた。今回の工事は、前の二回に比べても匹敵して余りある苦しさだった。なぜなら北の山は険阻で、山道は歩くのも困難だったからだ。作業工程の三分の一が出来上がったころ、また師父がやってきた。
師父はその建物を一目見るなり怪訝な様子で言った。「怪力君、君はなぜこんなものを建てたのだ。誰が君にやれと言ったのか?」
ウェンシーは慌てて答えた。「先生が建てろとおっしゃいました」
「わしが?」師父は頭を掻きながら言った。「ありえない。なぜ私がそんなことを思いつくのだ?もしそれがわしだとしたら、わしはそのとき精神が失調していたとでもいうのか」
「確かに先生はおっしゃいました。こういうことが二度とないよう、わたしはあのとき、先生にははっきりとしたお考えをもって家を建てることをお願いしました。先生は、仔細を考慮したので、二度と壊せとは言わないとおっしゃったのです」。ウェンシーが焦って答えた。
「わしが!?」師父は怒った。「わしがいつそんな話をした?わしが出鱈目なことでも言って、おまえをおとしいれたとでもいうのか?おまえはこんな風水の悪いところに三角形の僧房なぞ建てて、まるで誅法の祭壇を築いているようだぞ。おまえはわしを呪っているのではないのか?わしはおまえの財産を盗ったわけでもないし、おまえを苛めた覚えもないし、おまえの家族にひどいことをしたこともないのに、おまえはなぜ手前勝手にここにこのような三角形の僧房を築こうというのか?もしおまえが本当にわしを害そうとしていずに、もし本当に正法を求めているのなら、このような不吉な僧房はすぐにでも打ち壊し、木材と石材を山の麓まで持ち帰ってくれ!」
ウェンシーは師父の言葉に呆然とし、そこに立ち尽くした。「わたしが師父を害そうとしている?」彼の脳裏にはこの言葉が鳴り響き、しばらく頭の中が真っ白になって混乱し、師父の言ったことが到底何なのか、彼には全く理解できなかった。
このとき、彼の背中に激烈な痛みが走り、一種の痴呆状態から目が覚めた。彼は長期間にわたり過酷な労働に耐え、休息もとらず、加えて毎回のようにいち早く工程を終えようと頑張り、正法を求めて、痛みを顧みなかったためであった。そのために背中の傷は、破れてはかさぶたになり、破れてはかさぶたになりの繰り返しで、こうした日々をくりかえしているうちに、背中全体が爛れて、それはまるで京劇役者の化粧のようなり、実際その痛みは耐えがたいものになっていた。
(続く)
(翻訳編集・武蔵)
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