マスク着用による新型コロナウイルス防御の効果については、それを疑問視する意見も含めて、多くの国で論議されています。
最近の大規模な研究報告によると、「マスクを着用することで、感染の度合いを軽減することができる」として、そのマスク効果を是認する結果が出ました。とくに高齢者に効果があるといいます。
このほど、「マスクがウイルスを有効に防ぎ、新型コロナの感染拡大を抑制できるか」という設問について、米国のイェール大学、スタンフォード大学、および組織「貧困対策のためのイノベーション」(IPA)が共同で、大規模な調査研究を行いました。
この研究は、バングラデシュの600の村を対象に行われ、参加者は約34万人。
研究チームは、その半数の村に「布製マスク」や「外科用(医療用)マスク」を提供し、様々な方法で、マスクを正しく着用するように勧めました。残り半数の村ではマスクをつけずに、8週間にわたり経過を観察するテストを行いました。
その結果、マスクを着用した人の感染の割合は、全体的に試験前より9.3%下がりました。このうち、外科用マスクをつけた人の感染率は11.2%減少したのに対して、布マスクの人々の感染率は、ほとんど減少しませんでした。
また、マスク効果は年齢が高くなるとともに増加し、外科用マスクを着用した50~60歳の集団では感染の割合は23%減少、60歳以上では35%減少したことが分かりました。
ただし、外科用マスクを着用した人々でも、50歳以下の人は、マスク未着用の人々とほとんど差がないことも判明しています。
この調査結果をふまえて、同研究の主催者は「外科用マスクで予防できる新型コロナ感染は約10%である、という解釈はすべきではない」と指摘しています。
この実験では、調査対象地域へマスク着用を宣伝・奨励する措置を進めましたが、マスクを着用する人の割合は42%までしか増加しなかったといいます。そうすると今後、より厳格なマスク政策が実施され、外科用マスクを着用する人々の割合がより高くなった地区では、10%を超える予防効果が得られることが予想される、としています。
バングラデシュのワクチン接種率は、まだ5%にとどまっています。その背景として「ワクチンだけが唯一の防疫手段でない」と人々が見ていることも伺われます。
一方、この調査研究にも限界があります。その一つは、被験者の同意を得なければ血液検査ができないため、多くの場合、血液検査ができておらず、その分、マスク効果が高く評価される可能性があることです。
また、今回の研究ではアルファ変異種(イギリス株)のみを対象にしたスクリーニングを行っているため、現在世界的に流行しているデルタ株については、マスクの防疫効果がどれくらいあるかは、まだ分かっていません。
(文・李行/翻訳編集・鳥飼聡)
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