全世界に存在する「シンデレラ」 唐の時代にも同じストーリー

グリム童話集』の「シンデレラ」は世界中で知らない人はいないでしょう。オペラ・バレエ・映画・アニメなどでも取り上げられ、「シンデレラ」を改編したオペラは少なくとも12種類、バレエは7種類、ミュージカルは12種類、そして、映画は少なくとも49作品あるのです。
 

葉限の物語

驚くべきことに、唐の時代の小説家、段成式による随筆『酉陽雑俎(ゆうようざっそ)』巻一の中にもシンデレラに似たようなお話が記載されていることが分かりました。

『酉陽雑俎』の中のシンデレラは葉限と呼ばれており、秦漢の時代よりも昔、洞穴に住む呉という一族の首領の娘で、首領は相次いで2人の妻を娶りました。最初の妻は娘を残して他界し、その娘が葉限です。葉限は幼い頃から手先が器用で、陶器の制作を得意とし、父親にとてもかわいがられていました。

しかし、首領が亡くなった後、葉限は継母にいじめられ、朝夕、険しい山へ薪を取りに行かされたり、深い谷川で水汲みをさせられていました。

ある日、葉限は谷川で金色の目をした魚を捕り、自分の食べ物を与えていました。魚が成長していくにつれてどんどん大きくなり、仕方なく葉限は家の裏の池に放しました。魚は葉限にとてもなつき、彼女が来た時には姿を現しますが、それ以外は全く姿を現しませんでした。

このことを知った継母は葉限を水汲みに行かせた後、彼女の古い服を着て池に行き、姿を現した魚を殺し、そして、調理して食べた後、魚の骨をゴミ捨て場の下に埋めました。

帰ってきた葉限は魚がいなくなったことに気づき、悲しみのあまり泣き出しました。その時、空から粗末な服を身に着けた人が舞い降りて、葉限に継母が魚にしたことと魚の骨が埋められた場所を教え、そして、「欲しいものがあったら、その骨に願えばなんでも現れるだろう」と伝えました。葉限はその人の言う通りに願ったところ、本当に何でも現れたのです。

ある日、継母は実の娘を連れて、お祭りに出かけ、葉限を家に残しました。しかし、葉限もお祭りに参加したいので、魚の骨に美しい服と金色の靴を頼みました。

しかし、お祭りで妹に見つかってしまいました。葉限は慌てて家に帰り、途中で金色の靴を片方落としてしまいました。

一方、娘から葉限が祭りに来ていたと聞いた継母は、葉限がいなくなってはいないかと疑念を抱き、家に帰って探してみたところ、いつもの服を着て寝ている葉限を見て安心しました。

一方、葉限の金色の靴は洞穴の近くの陀汗という島の王の手に渡りました。王は靴を国中の女に試させましたが、誰一人履けませんでした。そして、隣の領地の洞に向かい、調べたところ、葉限のことを突き止めました。

葉限は美しい服と金色の靴を履いて姿を現して、事情を説明した後、王は葉限を連れて国に帰り、正妃にしました。その後、継母と妹はどこからともなく飛んできた石に当たって死んだのです。
 

「シンデレラ」の「血統」の謎

明らかに、ヨーロッパの「シンデレラ」にも中国版の「シンデレラ」にも、父親が亡くなった後、継母にいじめられますが、不思議な力に助けられ、後に靴のおかげで王族に娶られるという要素が含まれています。

民俗学者の考証によると、「シンデレラ」に類似した物語は中国国内だけでも72ものバージョンが存在し、21もの民族で引き継がれているといいます。

英国の民俗学者、マリアン・ロールフ・コックスの統計によると、世界各地で少なくとも345もの「シンデレラ」に似た物語が存在しているというのです。したがって、一体どの国の「シンデレラ」の「血統」が「本物」なのかはまだ謎のままです。しかし、世界各地で同じような物語が存在していることから、もしかすると、これは空想上の物語ではないのかもしれません。

(翻訳編集・天野秀)

劉暁