【名作随感】『美女と野獣』 原作のストーリーは違っていた

ディズニーによって、アニメ・実写化された不朽の名作『美女と野獣』の名は、今や誰でも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。ディズニー、またはグリム童話アンデルセン童話のお話は、30歳、40歳の大人にも、飽きを感じさせませんね。

欧米の童話やお話は東洋の神話やおとぎ話のように、神様が与えてくれたプレゼントです。子どもたちがまだ純真で純粋な時に、彼らの心に善良の種を植え付け、例え大人になって、この複雑な社会に入っても、まだ夢を抱くことができ、理想を持つことができ、素晴らしいことを考えることができ、そして、希望を持つことができるようにしてくれます。そのため、筆者はお話や童話の背後に隠された真の意義を探し出すことを趣味としています。

『美女と野獣』も単なる恋愛物語ではありません。「王子様とお姫様は末永く幸せに暮らしました」という結末がこの物語のポイントではなく、重要なのは物語の発展と、その過程における作者が伝えようとしているメッセージなのです。

『美女と野獣』のオリジナル版はフランスの作家、ガブリエル=シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ(ヴィルヌーヴ夫人)によって書かれ、1740年に出版されました。当時のフランスはちょうど戦争が多発している時期にあり、ヴィルヌーヴ夫人が書いたオリジナル版の中には、今ではあまり知られていない、主人公の野獣とベルの成長過程が記されています。

そのオリジナル版では、国王は王子が生まれる前に亡くなり、女王は戦争を通じて自国を守らなければならないため、王子を世話役の年老いた醜い妖精に託すしかありませんでした。その後、王子が美しい青年へと成長していき、醜い妖精は王子に自分を娶るよう要求しましたが、王子に断られました。妖精は逆恨みをし、王子を野獣の姿に変えたのです。

一方、ベルも本当は商人の娘ではなく、良き妖精の子でした。邪悪な妖精はベルを亡き者にするために、ちょうど娘を1人失ったばかりの商人の家に送ったのです。

ヴィルヌーヴ夫人の『美女と野獣』は後にボーモン夫人によって大幅に短縮されました。ベル自身に関する部分はかなり簡潔化され、また、商人の6人の息子と6人の娘も、3人ずつに減らされましたが、より子供向けになり、ディズニーの『美女と野獣』の原本となりました。

しかし、細かいところまできれいな言葉で描写されているヴィルヌーヴ夫人のオリジナル版は、映画やアニメに劣らず素晴らしいものです。この『美女と野獣』に限らず、他の多くの小説やお話に関しても、アニメや映画化されたものより、原作を読むほうが良いと思っている方も少なくありません。

映画やアニメと違って、オリジナル版の中の野獣は実は何も悪いことをしておらず、ただ醜い妖精の嫉妬により、獣の姿に変えられてしまったのです。本来の王子は心の優しい人間で、自分の家族だけでなく、他のすべての人にも親切にしていました。また、オリジナル版では、王子の外見だけでなく、知識まで呪われたため、映画やアニメのように博学ではありませんでした。

オリジナル版の『美女と野獣』が伝えたいことは、映画やアニメの『美女と野獣』と大きくかけ離れています。ベルとシンデレラの境遇は非常に似ており、どちらも一夜にして以前の裕福な生活を失い、その上、他人に冷たい目で見られるだけでなく、家族にも嫌われるようになりました。しかしシンデレラと同様、ベルも、冷たくされても嫌われても、相手を恨まず、却って他人を包み込み、親切にしています。

嵐の中、城の光を頼りに狼の群れを避けて、お城に入ってきたベルの父親の視界に入ったのは、暖かな飲み物と豪華な食事でした。そして翌朝、体に合った服が用意されていたことから、ベルの父親は、城の主はきっと心の優しい親切な人だという印象を持ちました。

この点からも、王子の本当の性格が分かります。そして、その後、王子と城で暮らしていくベルの人生がいかに幸せなものかも伺えますね。

(翻訳編集・天野秀)