ロレンツォ・ディ・クレディ(Lorenzo di Credi、1458-1537)はレオナルド・ダ・ヴィンチとともにアンドレア・デル・ヴェロッキオ(Andrea del Verrocchio、1435-1488)に弟子入りしました。彼の「幼子イエスの礼拝」(Adoration of the Christ Child)は円形の構図となっており、このような寸法は、聖母子や聖家族などのテーマによく使われ、円形は、円満、集合、全体などを意味しているため、通常、結婚や出産などの家庭内のお祝い事を記念するために使用されます。
盛期ルネサンスのヴェネツィア画家ジョルジョーネ(Giorgione、1477年/1478年頃-1510年)の「羊飼いの礼拝」は(Adoration of the Shepherds)1505年-1510年頃に創作され、現在、ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーに収蔵されています。わずか30年余りの人生の中で、ジョルジョーネはルネサンス最盛期の最も重要な画家の一員となりました。油絵がヴェネツィアに入った後、色使いや光の当たり方から水の都の独特な風情が伺えます。
村の郊外にある洞窟が「羊飼いの礼拝」の背景で、聖母マリアと養父ヨセフ、そして、2人の羊飼いが幼子イエスを囲い、暖かく見守っています。絵画は精緻で細かいところまでしっかり描かれており、郊外のゆったりした雰囲気が感じられます。
レオナルドがヴェネツィアに短期間滞在している間、ジョルジョーネと接触した可能性があるといわれています。ジョルジョーネの作品の中の柔らかい人体の輪郭から、レオナルドほか16世紀の画家が創始したとされる「スフマート(sfumato)」という絵画技法が見られることがこのことを裏付けています。また、ジョルジョーネの作品から、イタリア画家ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio、1488年/1490年頃-1576年)の早期の画風が見られます。
ドイツの画家ヘラルト・ファン・ホントホルスト (Gerard van Honthorst、1590 –1656)が1622年に創作した「羊飼いの礼拝」(Adoration of the Shepherds)では、光は真ん中の幼子イエスに集中して、その神聖さと人々の注目の的を表しています。暗闇の中、光は神の導きを象徴し、同時に時代の暗黒をも目立たせ、幼子イエスの今後の救世主としての道のりがいかに困難であるかを示しています。
(つづく)
(翻訳編集 華山律)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。