「LDL値を下げる」が予防につながる
それでも、人体のもつ免疫系が良好に働いていれば、この状態は、ひとまず悪化しません。
それだけでなく、血中の「悪玉コレステロール」の値(LDL値)を、ある程度まで低くすることができれば、動脈硬化を起こしたプラークを縮小することも可能です。つまり、心筋梗塞の予防につながるのです。
悪玉コレステロールとは「低比重リポタンパク質(LDL)」のことです。
「アメリカ現代心臓病学の父」と呼ばれるユージーン・ブラウンヴァルト氏は、「悪玉コレステロール値は50 mg/dLを超えないことが望ましい」と言っています。
また2017年に、循環器関係の専門誌『World Journal of Cardiovascular Diseases』に発表された研究では、「悪玉コレステロール値が55~70 mg/dLまで下がると、動脈硬化による心臓血管への負担が低下し始める」と指摘されています。
同様に、2018年の専門誌の研究でも、「悪玉コレステロール値を45 mg/dLより低くすることで、アテローム性動脈硬化プラークを縮小できる」ことが示されています。
まずは私たちの日常生活のなかで、食事をはじめとする生活習慣を見直すことから、「LDL値を下げる」を目指してみようではありませんか。
「血圧の急上昇」は極めて危険
さて、プラークの種別である「安定」「不安定」を問わず、動脈硬化が招いて形成されたプラークについて、どのような場合に突然破裂し、急性の心筋梗塞を起こすのでしょうか。
血流の方向は通常、血管の内壁に平行しています。これに対して、私たちが普段測定する血圧は、血管壁に対して垂直に作用する圧力です。
この二方向の力は、いずれもプラーク破裂の引き金となる可能性があるため、突然強い力をかけることは好ましくありません。つまり「血圧の急上昇」がそれです。
もしもあなたが心臓や血管に普段からリスクを感じていたら、急な激しい運動、急激な温度変化、感情が高ぶって興奮するなどは、ぜひ避けてください。それが誘因となって血圧が急上昇すると、血管内プラークの破裂を招く可能性がありますので、十分注意していただきたいのです。
プラークの外層が破れると、その中にあるコレステロール、細胞の破片、炎症を起こしている細胞が飛び出てきます。それらは、流れている血液中の赤血球や血小板と凝集反応を起こし、破裂したプラークを固形物にして血管を完全に塞ぐのです。
そのような場合、緊急に対応しなければ、心筋虚血、酸素欠乏、心筋細胞の死など重大な事態に至ります。
自分の心臓を守るために
多くの免疫細胞がプラークの生成に関与しているため、体内各所に起きる炎症や、内部からプラークの外殻を分解するプロテアーゼなど、多くの要因がプラークの破裂に関与しています。
ただ、いずれにしても、人体の免疫系の機能が低下すると血管がもろくなり、不安定プラークの形成につながることは間違いありません。
それらは、喫煙習慣や糖尿病などの目に見える原因のほか、精神的ストレス、感情の激しい変化なども、特に若年層の心筋梗塞発症と無関係ではないのです。
改めて言えることは、「生活習慣を改善すれば、心筋梗塞のリスクが下がる」ということです。
年齢や性別(男性は比較的リスクが高い)は変えることができません。しかし、自分で管理することで、軽減できる危険因子もたくさんあります。
例えば、血圧、コレステロール値、体重などは自分で適正な数値に抑えるとともに、喫煙は今日から止めます。さらに、精神的ストレスをためないようにする、適度な運動を行い、栄養バランスのとれた食事をとる、など実行可能なことを始めれば良いのです。
その全ては、あなたご自身の心臓を守るためです。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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