ハーバード大学の心理学者リサ・フェルドマン・バレット氏はこのほど、長年にわたる神経科学と心理学の研究をもとに、子供の意欲や柔軟な思考の発達に役立つ「7つの育児ルール」をまとめました。
以下は、バレット氏による「7つの育児ルール」の概要です。
1、子供の特技を伸ばす
大工は、庭師の仕事をしないものです。
親は自分の子供が、例えば将来、バイオリンのソリストになることを願った場合、そのための経済的条件が許せば、高度な音楽教育の環境を子供に提供することができます。
しかし、もともと大工の仕事が向いている子供に、ハイレベルの音楽教育を押し付けても、子供にすれば、音楽を不愉快で苦痛なものとしか考えられないのです。
親は、子供の特性をよく理解して、その特技が伸ばせる環境を与えましょう。
2、子供とたくさん話す
生後数カ月の乳児は、母親の話す言葉の意味は理解していなくても、脳はきちんと母親の心を感じ取り、活発に反応しています。
つまり、子供が乳児(1歳未満)のころから、母親や父親が話しかける言葉が多ければ多いほど、その後の子供の語彙力や会話力が速やかに向上するのです。
バレット氏によると、親は自分自身を「子供を不思議な世界に導くツアーガイド」と考えるべきだと言います。
3、子供の「なぜ?」に根気よく答える
子供の問いに対して、きちんと理由を説明することも必要です。
親から「(クッキーを)全部食べちゃ、だめよ」しか聞かされていない子供は、親がいないときに、クッキーを食べないよう我慢できる可能性は低いと言えます。
「この缶のクッキー、全部食べちゃ、だめよ」
「なぜ?」
「だって1人でこんなに食べたら、必ずお腹が痛くなるから。それに、いま学校に行っているお兄さんの分がなくなって、がっかりするでしょう。あとで、皆と一緒に食べたほうが、きっとおいしいと思うわ」
「あとで、皆と食べたほうが、おいしい」
このような推論ができるようになることは、子供にとって、自分の行動の結果を想像するのに役立つだけでなく、他者への思いやりを育むことにもつながります。
4、叱るのは「行為」に対して
子供は、過ちを犯しながら学んでいくものです。
多くの場合、その時の、その行為が間違っていたのです。
親が子供を指導する際に、その行為に対して叱りきちんと説明するのは必要ですが、子供の人格に対して「おまえは悪い子だ!」と言ってはいけません。
ほめる場合も同じルールが適用されます。
つい「いい子ね」と言いたくなりますが、それはあまり適切なほめ方ではないのです。
子供が努力した具体的内容について語り、「あなたのお手伝いのおかげで、ママは助かったわ。ありがとう」と言って、称賛しなければなりません。
5、子供に「親をまねる」ことをさせる
父親のあなたにとって、庭の草むしりは休日にやるべき家事ですが、小さな子供にとっては遊びの一種かもしれません。
子供は、何よりも大人のマネをすることで自然に学びます。
そこであなたが家の掃除や庭の草むしりする時は、子供にも小さなホウキや除草用のレーキ(熊手)を持たせて、これらの道具を使う大人のマネをさせてみましょう。
6、子供が多くの人と触れ合えるようにする
子供の安全が大前提ですが、乳児の発育にとっては、できるだけ多くの人と触れ合えるようにすることも見落とせないポイントです。
研究によると、異なる言語を話す人に多く触れる機会をもった乳児は、脳の重要な神経経路(brain wiring)が刺激されて、将来、母国語および複数の外国語を習得するのに役立つ可能性があると言います。
7、子供の自主性を育てる
衣服の着脱にしても、排泄にしても、子供は始めからうまくはできません。
そんな時、親が手を貸してあげることももちろん必要ですが、少しずつ、自分の力で何かをする意識も持たせていきたいものです。
子供は、何かをする上で困難に直面することにより、精神の強さが身につきます。たとえうまくできなかったとしても、子供は自分の行動の結果を理解し、改善点を考察できるようになるのです。
(翻訳編集・鳥飼聡)
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