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野菜、果物、豆類などさまざまな食品の食物繊維含有量に関する『イギリス医学雑誌』(British Medical Journal)のメタ分析でも、全粒粉の摂取量と大腸がんリスクとの関連は、すべての食品の中でより明確であるとされています。
特に、全粒粉を1日3食(90g)食べると、大腸がんのリスクが約20%減少しました。また、大腸がんの予防には、1日に10gの総食物繊維と穀物繊維を摂取することが有効です。
なぜ、全粒粉を食べると大腸がん予防に大きな効果があるのでしょうか。
国立がん研究センターの研究者によると、全粒粉には、ふすま、胚芽、胚乳が含まれており、水溶性・不溶性食物繊維を完全に保持し、さらにビタミンB、ミネラル、フェノール、抗酸化物質、植物エストロゲンなど、大腸がん予防に役立つ栄養素が多数含まれているとのことです。
全粒穀物:玄米、キビ、トウモロコシ、オーツ麦、ソバ、大麦、小麦、キヌア、ライ麦、ソルガムきびなど。
野菜と一緒にご飯を食べると
腸内環境が良くなり、健康維持に繋がる
実際、東洋の伝統的な食事では、穀物や雑穀が主役で、野菜は補助的なものです。しかし、現代人は健康に良いからと野菜や果物をたくさん食べ、米にはあまり関心を持たなくなってきている傾向にあります。
漢明基督教病院大腸外科主治医の黃燈明氏は、長年の臨床経験から、大腸がんの予防には野菜とご飯の組み合わせがとても有効であることを発見しました。
実は、野菜や果物の食べ過ぎには、2つの問題があるのです。
黃燈明氏によると、人は美しい野菜や果物を摂りがちですが、美しい作物ほど農薬が多く含まれていて、よく洗浄しなければ、これらの毒素を摂取してしまう可能性があると言います。
また、野菜の食べ過ぎや不溶性食物繊維の摂り過ぎも、腸の負担を増やし、酷使することになります。不溶性食物繊維を摂りすぎると、排便の量や回数が増え、大腸がんの危険因子である便秘になりやすくなります。
東洋では米が主食で、グルテンや胚芽を取り除いた美味しい白米を食べる人が多いです。そのため、玄米の方が食感が硬いと感じる場合は、白米と玄米を混ぜて炊くとよいでしょう。ただし、消化の悪い方には白米をお勧めします。白米は消化が良く、微量栄養素や食物繊維も一定量含まれています。
また、黃燈明氏によると、米にはでんぷんのほかに水溶性食物繊維も含まれており、お通じを良くする効果があるそうです。長年の経験から、「お米を食べてスムーズなお通じと腸内環境を整えましょう」と語っています。
穀類を野菜と一緒に食べることは、健康のための漢方医学の原則にも合致しています。漢方医学の古典書『黄帝内経』には「五穀は滋養、五果は扶養、五畜は益、五菜は充実」と書かれています。
穀類を食べると、体に栄養を与え、脾胃を丈夫にし、陽の気を高め、食物が十分にエネルギーに変わるようになります。カナダ公立大学漢方医学教授の劉新生氏によると、漢方医学における大腸がんの根本原因は「陽のエネルギー」の不足にあるといいます。
また、大腸がん患者の93%が45歳以上であるのは、体の陽のエネルギーが強から弱に変わる年齢だからだと劉新生氏は説明しています。食生活の乱れは体内のバランスを崩し、陽の気を害することにもなりかねません。一方、穀類を含むバランスの良い食事は、体の陽エネルギーをより良く保護し、癌に対する免疫力を強化します。
(翻訳編集:香原咲)
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