新型コロナワクチンを接種した人は、未接種の人に比べて感染する可能性が高いことが、2つの新しい研究で明らかにされた。
クリーブランド・クリニックの研究者が発表した論文(pdf)によれば、接種を重ねるごとに感染の発生率が高くなっており、最も低い発症率を示したのはワクチン未接種者であった。
もう一つの研究は、インディアナ州の研究者のもので、自然免疫力を保持しているワクチン未接種の人と比較して、ワクチン接種者の方が感染率が高いことが明らかとなった。
今回の研究は最新のものであり、ワクチン接種者の感染に対する効果が低い、あるいはマイナスであることを示している。最近、免疫の刷り込みあるいはそれが原因だと指摘する専門家が増えてきている。この「免疫の刷り込み」という用語は、初期段階のウイルスにさらされることで免疫システムがロックインされ、変異したウイルスに対する免疫が妨げられることを指す。新型コロナウイルスワクチンは、オリジナルのウイルス株のみを標的としており、この株とオミクロン変種のBA.4/BA.5亜型の両方を標的としているブースターとは異なる。
カタールの研究者たちが、最近の論文(pdf)の中で、「古いワクチンは、特定の狭いプレオミクロンチャレンジを想定して免疫反応を訓練した可能性があるが、実際のチャレンジが免疫回避的オミクロン亜変種だったので免疫反応は機能しなかった」と書き、ブースター投与による感染に対する防御力の低下を明らかにした。
クリーブランド・クリニック論文
クリーブランド・クリニックの研究者は、medRxiv(メドアーカイブ:健康科学に関する未発表の電子出版を配布するインターネットサイト)に掲載された論文の中で、クリニック従業員のデータを分析し、ワクチンの有効性を表す推定値を算出したと報告した。後ろ向きコホート研究(縦断研究の1つ。特定の条件を満たした集団〈コホート>を対象にして診療記録などから過去の出来事に関する調査を行う研究手法)においては、新しいブースターが利用可能になった9月12日から12月12日までのデータを調査した。
クリニックの研究者は、新しいワクチンが提供する防御は不完全であるばかりか、どのワクチンであれ、より多く接種した人に対して感染リスクを増加させたという「予期しない」結果を見つけた。
「簡単に説明してしまうと、接種によってより多くの用量を取り込んだ人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスクが高い個人になっている可能性が高いということかもしれない。ごく一部の人はこの説明に当てはまるのだろう。しかし、この研究の被験者の大半は一般に若い人たちであり、この研究の開始日までに、全員が少なくとも3回のワクチンの接種を受ける資格があり、その機会は与えられていた」と、Nabin Shrestha博士を含む研究者は書いている。
「従って、3回未満の接種者(研究対象者の45%以上)は、ワクチン接種の不適格者ではなく、新型コロナワクチン接種の継続に関するCDCの勧告に従わないことを選択した者であり、彼らはより高いリスクを示す傾向があったと考えるのが妥当であろう。にもかかわらず、彼らの新型コロナウイルス感染症感染リスクは、より多くのワクチンを事前に接種した人たちよりも低かった」。
研究者らは、カタールの論文を含む他の複数の研究でも同様の結果が得られていることを指摘している。
「我々は、新型コロナワクチン接種から身を守ることについて、まだ多くのことを学んでおり、ワクチンの有効性に加えて、時間をかけて複数回接種することが、一般に想定されている有益な効果をもたらしていない可能性を検討することが重要である」と研究者らは述べている。
研究者らは、重症化や入院に対する有効性は調べていない。
この研究の資金源は記載されていない。研究者たちは、「資金」の下に「なし」と記載していた。
「この研究は、若くて比較的健康な医療従事者を対象に行われたことが注目に値する。小児は含まれず、高齢者もほとんどおらず、免疫不全者もほとんどいないと思われる。従って、この研究結果を一般大衆に当てはめることには注意が必要で、一般大衆にはこの研究とは異なる集団が含まれる可能性がある」と、クリニックの広報担当者は電子メールでエポックタイムズに語った。
「この研究では、感染やワクチン接種によるウイルスへの最後の曝露から時間が経過するほど、新型コロナウイルス感染症に感染するリスクが高くなることが明らかになった。また、過去に受けたワクチンの回数が多いほど、新型コロナウイルス感染症に感染するリスクが高いことも判明した。なぜこのようなことが観察されたのか、どのように解釈すべきなのかは現時点では不明であり、この知見を確認または否定するためにはさらなる研究が必要である。この論文はまだ査読を受けていないことに注意することが必要である」。
インディアナ州の論文
レーゲンストリーフ研究所のショーン・グラニス博士を含むインディアナ州の研究者は、州全体の検査・ワクチン接種データおよび医療記録を調べ、個人をマッチングして、感染症発生率、救急外来受診、入院、死亡を比較した。2016年1月1日から2022年初頭の間に、患者ケアのためのインディアナ・ネットワークに過去に1回以上医療機関の受診記録がある12歳以上の人のみを対象とした観察研究では、2020年11月29日から2022年2月9日の間のデータを精査した。
研究者らは、ワクチン未接種だが自然免疫のある人と比較した場合、ワクチン接種者の方が新型コロナウイルス感染症の発生率が高いと推定した。初感染から30日後、またはワクチン接種から30日後という指標日から6カ月後の累積感染率は、ワクチン接種者で6.7%、既往感染者ではわずか2.9%だった。この累積感染率は、年齢で層別した場合、すべての年齢層でワクチン接種者が高いままであった。
研究者らは、イスラエルの研究者が4月に発表した論文を引用して、「興味深いことに、少なくともこの研究対象者と分析時点では、自然免疫の方が新規感染症の予防に有効であるように思われる」と述べた。研究チームは、ワクチン接種を受けた人は新型コロナウイルス感染症の検査を受ける可能性が高いため、ワクチンの効果が過小評価されるのではないかと推論した。
この研究ではまた、ワクチン接種者は自然免疫者よりも、救急外来の受診、入院、死亡率に対して守られていると結論付けている。
「この結果は、ワクチン接種の現実的な効果を強調し、初めて暴露した後のSARS-CoV-2の健康への影響について言及している」と、グラニス氏とその共著者らは書いている。
この論文は、米国公衆衛生学会の出版物であるAmerican Journal of Public Healthに掲載された。資金源は記載されていない。
編集部注:この記事は、クリーブランド・クリニックからのコメントで更新されました。
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