コロナ感染やワクチン接種後の血栓形成を防ぐ4つの習慣

血管を詰まらせる血栓は、新型コロナウイルス感染症の合併症の1つです。研究により、新型コロナウイルス患者の間で、動脈血栓症と静脈血栓症の両方の発生率が大幅に増加することが判明しています。

さらに、ワクチン接種後に血小板減少症候群を伴う血栓症などの副作用を起こす人も稀にいます。これは、ワクチンによって産生された抗体が血小板を活性化し、血小板数の低下と血栓が発生するためです。

西洋医学では通常、血栓症に対処するために抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)と血栓溶解療法(血栓を破壊する薬)を採用します。ただし、出血やアレルギーなどの副作用のリスクも伴います。

一方で、伝統的な中医学には、抗凝固薬での治療が難しい血栓症の場合でも、血栓症を効果的に治療してきた長い歴史があります。

まずは、これらの血栓がどういったものなのかについて、掘り下げていきましょう。

血栓症の発症率が大幅に上昇

米国心臓協会のウェブサイトで発表された研究報告によると、新型コロナウイルスは患者の血栓症のリスクを増加させます。

また、医療専門家らがイングランドとウェールズの成人4,800万人の健康記録を調査したところ、 感染者約144万人のうち、致死的な動脈血栓症および静脈血栓症の発生率はそれぞれ5.3%と4.7%で、非致死的な発生率はそれぞれ2.5%と4.4%でした。

感染の全過程において、動脈血栓形成の発生率は、新型コロナウイルス感染症と診断されてから最初の数週間で著しく高く、時間の経過とともに急速に減少しましたが、静脈血栓症の発生率は比較的ゆっくりと減少しました。

言い換えれば、静脈血栓症は、コロナ後遺症患者にとって重大な合併症であるということです。

研究チームは早期発見と早期治療を推奨し、血栓症のリスクを軽減するために脂質低下薬や降圧薬を定期的に服用するよう患者に奨励しています。以前これらの患者には、臨床的に高脂血症や高血圧などの慢性疾患はありませんでした。これは、血栓症の原因が複雑であることを示しています。

血栓形成の原因

血管血栓症は臨床的によく見られ、発生率は女性よりも男性の方が高くなります。

現代西洋医学では、血栓は、不溶性フィブリン、沈着した血小板、蓄積した白血球、および捕捉された赤血球によって形成される、非構造的な塊であると考えられています。血栓形成に寄与する主な状態は、心血管内皮 (血管の内側を覆う細胞の層)の損傷、血流の速度と方向の変化、および血液凝固の増加です。その中でも、内皮の損傷と血液凝固の増加は重要な要因です。

動脈と静脈の生理的環境が異なるため、動脈血栓症と静脈血栓症のメカニズムは異なります。動脈は心臓の拍動に伴って酸素を含んだ血液を心臓から運び出し、静脈は酸素が除去された血液を心臓に戻します。

動脈血栓症は通常、アテローム性動脈硬化のプラーク(こぶ)が破裂した場所に形成されます。動脈壁にあるこれらのプラークが破裂すると、脂質を多く含むコアとコラーゲンが露出し、通過する血液中の血小板が付着、活性化、凝集し始め、血小板を多く含む白色血栓症が形成されます。

静脈血栓症は、手術や怪我による形成ではない場合、主に血流の遅さ、排液不良、および凝固亢進状態に関連しています。

コロナワクチンが症状を誘発

新型コロナウイルスによって重度の肺炎が引き起こされた後、動脈血栓症のリスクが高まります。これは、重度の感染症や敗血症によって引き起こされる急性炎症反応が、血栓の形成と予防を司る凝固・線溶系に影響を与える可能性があるためです。

ここには、C反応性蛋白やアンチトロンビンIIIレベルの減少、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1レベルの増加など、多方面の素因があり、最終的には凝固カスケード機構の活性化と線維素溶解プロセス(血栓を分解・予防する)の阻害につながります。それらが血栓症の形成を促進するのです。

イギリスとアイルランドで行われた大規模調査では、多くの患者が感染の急性期ではなく、コロナ後遺症期に静脈血栓症を発症したことが判明しました。

欧州と米国では、アストラゼネカのバキスゼブリアワクチンやジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチン接種後に、血小板減少症候群を伴う稀な血栓症の副作用が発生したケースもありました。

また、静脈血栓症患者に関する研究から、ほぼすべての患者の血清中に高レベルのPF4抗体が検出されました。この抗体は血栓の形成に深く関係しています。

現代医学の限界

治療法としては、抗凝固療法、抗血小板療法、血栓溶解療法、フィブリノーゲン低下療法などが利用できます。ただし、これらの治療法は出血やアレルギー反応などの副作用を伴い、禁忌がある場合もあります。一部の複雑なケースにおいて、現代医学の療法は理想的とは言えません。

たとえば、強力な抗凝固剤には依然として出血のリスクが伴う可能性があります。これを防ぐために、患者は通常、定期的に血液検査を受けます。また、局所的な皮膚潰瘍がある場合は、薬効が得られない可能性があります。

現代医学はまた、血栓症が早期に検出された場合には血栓溶解療法を使用できると提案していますが、48時間以内の実施が必要となります。48時間が経つと、血栓の内側に瘢痕が形成され始め、血栓が溶けにくくなります。血栓溶解薬によって出血性合併症のリスクも高まります。

8か月続く静脈血栓症が20日で治癒

私には、“典型的”な深部静脈血栓症を抱える男性患者を治療した経験があります。彼の左下肢は8か月間にわたり痛みを伴う腫れを起こしていました。皮膚は紫がかった黒色の潰瘍で覆われていました。

彼は8か月前にかかりつけ医の診断を受け、薬を処方されましたが、6か月間服用しても効果はありませんでした。 その間、虚血の悪化の兆候である潰瘍が現れました。

この男性はバスケットボールが大好きな活発な若者でしたが、病気のせいで1年以上プレーできませんでした。周りから促されて、彼は私に相談に来ました。

彼の食事、睡眠の質、尿、便は、基本的にすべて正常でした。し中医学の理論に従えば、これは典型的な気虚(ききょ)と瘀血(おけつ)です。

中医学において「気」は、体内の生命を構成する「エネルギー」または「活力」として理解できます。このエネルギーが全身を巡り生命活動を維持しています。中医学理論では、気は人体と生命活動を構成する最も基本的で重要な物質であると考えられています。

心拍、肺の呼吸、筋肉の収縮、血液循環、神経信号の伝導など、人体のさまざまな現象はエネルギーの表現です。さまざまな形のエネルギーは、中医学では「気」として要約されます。心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓などのあらゆる臓器の一般的な動作は、エネルギーによって駆動します。エネルギーがなければ臓器は機能しません。

気は体の総エネルギー需要を満たす物質と考えることができます。それは主に私たちが吸い込む空気と食べ物から来ます。

中医学における気(エネルギー)は、血液循環、心臓の機能、血液凝固機構、抗凝固機構のバランスなどに関係します。

気虚や瘀血によって、血液の流れが遅くなったり、血液が凝固しやすくなったり、血栓ができやすくなったりします。西洋医学でも同様の結果が出ています。

しかし、中医学では、血栓症が発症する前にこの状態を検出できるため、早期治療が可能です。血栓が形成されて何らかの症状や合併症を引き起こす前に、気血の滞りをかなりの期間にわたって経験することがあるのです。

私は気血を活性化させる治療法を採用しています。生命を構成するエネルギーを補い、血液循環を改善するなどの機能を備えた中医学の処方によって、気虚と瘀血を治します。

たとえば、中国河北省の有名な中医学医、メン・チュンデ氏による回春スープは、この病気の治療に非常に効果的です。

この処方薬は、気を活性化し治癒効果のある漢方の生薬であるレンゲをはじめ、当帰、鶏血藤、丹参などの薬草や、ミミズ、オサムシ、ヒルなどの生薬を配合したもので、血行を促進し、血管を拡張する効果があります。これらは経験豊富で信頼できる中医師によって処方されています。

私を訪ねてきた若い男性患者に20日分の処方薬を服用させたところ、服用し終わる前に症状が全て消え、下肢の皮膚潰瘍も治り、肌の色も正常に戻り、再びバスケットボールコートを駆け回ることができるようになりました。

2,500年前に書かれた独創的な中医学の古典「黄帝内経」にも、「経絡が開けば気血は通ずる」といった記述が見られます。血管の健康が血液循環を正常にするのです。

血栓症に対する中医学の治療手法は主に2つです。1つは、急性期において清熱、解毒、および気血を活性化させる方法です。もう1つは、慢性期において気を養い、気血を活性化する方法です。

予防のための4つの習慣

血栓症を予防できる習慣を日常生活に組み込みましょう。多くはそれほど難しくありません。

1. 長時間座らないようにする

血栓症の予防には、座りっぱなしの生活習慣を無くしていくことが重要です。長時間座らなくてはならない仕事が多いですが、少しずつ直していくことはできます。

コンピューターを1時間使用したら、立って腕と脚を伸ばし、可能であれば廊下を少し歩きましょう。机から離れられない場合は、足首を動かしてつま先を内と外に回転させたり、ふくらはぎの筋肉を数秒間伸ばしきってみてください。

これを行うだけで血液循環は効果的に促進され、血液凝固や血管閉塞が軽減されます。

長期間寝たきりの人は、下肢静脈血栓症のリスクが高まります。寝たきりの患者には、下肢を動かすよう奨励する必要があります。

長期間の静脈注射が必要な患者は、同じ場所に繰り返し穿刺しないようにする必要があります。静脈内皮が損傷すると、血栓が形成されやすくなります。

2. よく食べて喫煙を避ける

適切なタイミングでバランスの良い食事を取るよう心がけましょう。血栓症を予防するには、イワシ、玉ねぎ、ニンニク、セロリ、黒キクラゲなどを適量摂取します。これらの食品は血液の粘度を高めず、血液凝固を防ぎます。

喫煙は血管にダメージを与えます。血栓血管炎患者の多くは長年の喫煙者です。したがって、禁煙は血栓性疾患を予防する上で重要です。

3. 十分な量の水を飲む

水をたくさん飲みましょう。人は1日に1.5〜2Lの水を飲む必要がありますが、高齢者は血液が比較的濃く、粘着性があり、凝固・凝集しているため、より多くの水を飲む必要があります。

水を飲むほど血液が薄まる可能性があります。起床時と就寝前に水を飲めば、血液の粘度が下がり、血栓の形成が抑えられます。

4. 根本的な健康状態の管理

肥満、糖尿病、高血圧はすべて血栓症の危険因子であり、これらの疾患を積極的に治療ないし予防し、発症を抑えることが非常に重要です。

丹参茶で血栓症のリスクを軽減

気血を活性化しうっ血を解消する中医学の生薬に抗血栓機能があることは、現代薬理学によって明らかにされましたが、その効果は化学薬品の効果とは異なります。

この薬は、血液が凝集する特定の部位を標的とするのではありません。抗炎症作用や血管拡張作用、血圧降下作用、血液粘度や血中脂質の低下作用、血小板凝集抑制作用、血液微小循環改善作用などを複合的に作用させ、血液の凝集を予防し、血栓を除去します。

血液循環を促進し、瘀血を除去するには、丹参を使った中医学の治療法が好ましいです。

丹参は健康食品店で入手できることもありますが、信頼できる中医師に推奨事項を尋ねるのが最善策です。これは専門的に中医学で使用される薬草ですが、正しい方法を用いれば家庭でも使用できます。

血栓症の高リスク因子を持つ人は、発症を防ぐために、毎日10グラムの丹参でお茶を淹れましょう。

研究により、丹参とその抽出物には複数の心臓血管保護効果があることが確認されています。また、抗酸化、抗炎症、血液粘度の低下、微小循環の改善などの機能もあります。

自分自身を変え、悪い習慣を取り除き、健康的な生活を維持することが重要です。結局のところ、健康は自分自身にかかっているのです。

中国伝統医学の専門家。26年以上の医療経験を持つ。カナダの中国伝統医学・薬学大学、鍼灸大学、トロント中国伝統医学学校で10年間にわたり様々なコースを受け持つほか、ジョージアン・カレッジで中医学教授を務める。