進行がんで人は死なない、古代医学が転移を抑制する

現代社会においてがんは珍しい病気ではありません。 がん性腫瘍の多くは進行した状態で発見されますが、中国伝統医学なら有望な治療オプションを提供できます。

香港のTCM登録医である阮愛蓮医師は、ネット番組「百病百醫法」に出演し、中医学の治療がいかに人体を刺激して病気と闘う能力を引き出すか、いかにがんの転移を制御し患者の生活の質(QOL)を改善できるかを示しました。阮医師は「進行がん患者でも腫瘍とともに生きていくことができます」と述べています。

現代医学は日々進歩を重ねていますが、それでもがんの発生率は一貫して高いままです。 米国では毎年170万人以上ががんと診断されており、香港では過去10年間、がん発生率は一年に約3.1%のペースで増加しています。

阮医師は、腫瘍形成の内的要因と外的要因の両方に注目しました。まず、弱った免疫系が内的要因にあたります。これは、典型的な現代のライフスタイルから来る過度のプレッシャーによって悪化します。一方、環境中の発がん性物質が外的要因にあたります。これは、食品保存料や建築材料中のホルムアルデヒドなどに含まれる日常の毒素に由来します。

中医学で体の免疫反応を強化する

中医学のがん治療は、主にがんと闘う免疫系の能力を高めることに重点を置いています。阮医師は、薬物療法の観点から、薬草の中では高麗人参ががん治療によく用いられていることを指摘しています。高麗人参は生命力を大いに高めるからです。

現代医学でも、高麗人参を使った抗がん剤開発の可能性が注目されています。高麗人参やその主要成分であるジンセノサイドは、抗がん作用や抗炎症作用に加え、免疫系、循環器系、神経系への効果を証明する数百の研究が発表されています。

2017年のある研究では、高麗人参に含まれるジンセノシドががん細胞の転移を抑制し、血管新生を阻害して腫瘍の成長を遅らせ、最終的にがん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導することが示されました。

また、中医学では、「気血」が生命維持において必須かつ最重要の基本物質とされています。「気」は、体内の生命を構成する「生命エネルギー」や「活力」と理解できます。人体の根源的な気である「元気(yuán qì)」は、各組織や臓器の生理活動を促進する上で重要です。

中医学の理論では、この「気」の通り道となる経絡に注目します。内臓は経絡を通じて人体の表面とつながっているため、はり治療では、経絡上のツボを活性化させることで、内臓に対応するがんを治療することができます。

阮医師は次のように述べています。「相対的に言って、内臓に問題があれば、病の気が蓄積するツボにも問題があるということです。適切なツボにはりを打つことで、経絡のエネルギーの動きを加速させ、病気を早く発散させることができます。漢方薬と併用すればさらに効果的です」

漢方薬と経絡には親和性があり、異なる薬材のエネルギーが人体の異なる経絡に対応します。阮医師は次のように述べています。「中医学では動植物を薬の素とします。動植物は日光や雨にさらされることで、宇宙のエネルギーを得ます。人間はエネルギーが不足すれば病気になります。中医学では、植物のエネルギーで患者のエネルギーを補い、病気を治すのです」

漢方薬+はり治療で子宮頸がんに治療効果

阮医師が診療したある若い女性患者は、この治療法によって子宮頸部上皮内腫瘍が見事に完治したといいます。上皮内腫瘍は子宮頸部の細胞に見られる異常で、本格的ながんの前兆とされています。西洋医学では通常、手術で異常な細胞を取り除くほか、子宮全体を切除する必要がある場合もあります。未婚だった女性患者は、子宮を失うかもしれないと思い涙したそうです。幸い、はり治療と漢方治療を施してから数ヵ月後に、病院で子宮頸がんの検査を受けたところ、子宮頸部の細胞は正常な状態に戻っていたといいます。

こうした回復体験は、この女性患者のケースに限ったことではありません。台湾の国民健康保険データベースのデータを基にした研究では、子宮頸部異形成(前がん病変)の患者のうち、後に子宮頸がんを発症した人は、発症しなかった人より漢方薬の使用量が少なかったことが示されています。また、漢方薬の服用期間が長いほど、子宮頸がんの発症リスクが低いことが示されています。

進行がん患者の転移が止まった

中医学の治療は、腫瘍や癌の初期段階において、それらと闘うために人体の自然治癒力を刺激することに重点を置いています。進行がん患者に対しては、がん細胞の転移を抑制し、不快な症状を改善し、生活の質(QOL)をより長く維持させることができます。

阮医師の患者で、ステージ4(末期)の咽頭がんと診断されたある70代の男性は、当初非常に落ち込んだといいます。

阮医師が「心配ですか?」と尋ねると、彼は頷きました。それから阮医師は、「まず、『がん』という言葉に言及せずに、ただ解決したい問題を言ってください」と彼に伝えました。

すると彼は「不眠と便秘があります」と答えました。阮医師が「解決を手助けします。 もし睡眠が取れて定期的な排便ができれば、あなたは気分が良くなりませんか?」と返すと、彼は納得しました。

治療は、はり治療と灸療法を組み合わせて行われました。灸は温熱療法の一種で、もぐさを皮膚の上で燃やすことで、体を温めて体内の気の流れを活性化させ、特定の病原体の影響を取り除くことを目的としています。中医学では、はりと灸を単独で用いることもあれば、併用して病気を治療することもあります。

この鍼灸治療と漢方薬を併用した後、男性患者の不眠と便秘の症状が改善しました。ある時、診療前に彼の電話が鳴りました。阮医師は電話に出るよう言いましたが、彼は拒否しました。「これは化学療法と放射線治療を勧める政府病院からの電話です。病院からはこのままでは半年で死ぬと言われていいます。とても恐ろしいです」と彼は言いました。阮医師は、中医学の治療が効果を発揮したのだから、化学療法や放射線治療ではなく、同じ治療を続けてはどうかと提案しました。患者は政府病院との予約をキャンセルし、中医学の治療を続けることを選びました。

その後、彼の気持ちはずっと落ち着いていました。鍼灸治療や漢方薬に加え、「站椿」という立って行う瞑想を実践し、日々の食生活を改善しながら、阮医師の指導のもとで治療を続けました。6年経って、彼はまだ生きています。以前の痩せ細り弱った感じはもうなく、顔色もかなり良くなりました。喉の腫瘍はまだ感じられますが、がんの転移は止まっています。血液検査でがん細胞は検出されず、がん指数は正常値でした。

阮医師は次のように述べています。「がんになったからといって、特に心配することはありません。問題は、それにどう対処するかということです。すぐに亡くなる人もいれば、何十年も生きる人もいます。大切なのは、心の中に抱える不安を手放すことです」

中医学で進行乳がん患者の死亡リスクが低下

阮医師は最近、進行乳がん患者を治療しました。彼女はがんが転移し、腹水になり、放射線治療や化学療法ができない状態でしたが、鍼灸治療と漢方薬の服用により痛みは和らぎ、むくみも消えたそうです。

進行乳がん患者にとって、中医学の治療は命を繋ぐ可能性があります。台湾の健康保険データベースを利用した研究によると、進行乳がん患者で、中医学の治療を1〜6ヶ月間受けた人は、受けなかった人に比べて死亡リスクが45%低いことが分かっています。また、中医学の治療を6カ月以上受けた人は、死亡率が54%減少しました。

さらに、阮医師は、その進行乳がん患者が子供に関する心配事を抱えていることに気づいたといいます。そこで、鍼灸治療や漢方薬の処方に加え、患者やその家族と定期的に対話し、患者のうつ状態を緩和する手助けをしました。

阮医師は、中国伝統医学の古典『黄帝内経』の中の「全ての病は気から生ずる」という言葉を取り上げ、体内の気が喜怒哀楽や恐怖などの感情によって影響を受けることを指摘します。つまり、がんを治療するにしても予防するにしても、まずは気の持ちようから始まるのです。簡単に不安や怒りを抱かないようにすることが肝要です。

ツボ押しで免疫力を高めよう

阮医師は、腫瘍ができにくい体を作るために、「足三里(あしさんり)」のマッサージを勧めています。足三里は膝のお皿から指幅4本分下に位置しています。休息中やテレビを見ながら、定期的にこのツボをマッサージしてみてください。免疫系や消化器系を強化することができます。

膝のお皿から指幅4本分下に位置する「足三里」をマッサージして、免疫系や消化器系を強化しましょう(The Epoch Times)
May Cheng
香港のネットラジオD100の番組「Trapeze」で司会を務めたシニアメディアパーソナリティ。中国伝統医学を実践する家庭で育ち、幼少期から中医学に魅了され、大きな熱意を抱いてきた。現在はネット番組「百病百醫法」の司会を務める。
香港を拠点とする記者。2017年から香港大紀元で健康記事を執筆しており、主に中国伝統医学に焦点をあてている。香港や中国関連の時事も担当。