啓蟄に雷鳴が聞こえず、肝の気が滞り、情緒が不安定に
現在は二十四節気の「啓蟄」(3月5日~19日)の時期。本来であれば、春雷が鳴り響き、すべての生き物が目を覚ますころです。冬眠していた虫たちも活動を始め、春の陽気が地表に広がり、春らしい景色が現れます。
しかし、今年の3月5日の啓蟄では雷鳴が聞こえず、代わりに雨や雪が降りました。これは、地球に十分な陽気が生じず、近隣の宇宙空間に存在する「秋の収縮する冷たい金の気」に影響を受けたためです。この金の気が、地球の暖かく湿った「春の木の気」と交じり合い、雨や雪をもたらしました。また、下降する金の気が強い気圧を生み、春の木の気の伸びを抑えたことで雷が鳴らず、空気がどんよりとした状態になりました。こうした気候の影響で、人体の「肝の木の気」の流れも滞りやすくなり、気分の落ち込みやイライラが生じやすくなります。
滞った春の木の気は、やがて爆発的に発散され、強風が吹いたり、遅れて春雷が発生したりすることがあります。そのため、この時期は気候の変化が激しく、体内の気の流れも乱れやすくなります。結果として、肝の気が滞りやすくなり、情緒が不安定になったり、肝と脾のバランスが崩れたりし、食欲不振や胃腸の不調を引き起こしやすくなります。
また、肝の血が不足すると、肝火が過剰になり、不安や不眠、目の疲れ、乾燥、充血、腫れといった症状が現れます。この時期の食事は、肝の気を巡らせ、肝火を鎮め、肝の血を補い、脾と胃の働きを整えることが大切です。同時に、乾燥しすぎた食品、冷たいもの、脂っこいものは避けるようにしましょう。
タンポポで肝の気を巡らせ、気分を整え、肝を浄化し目の健康を守る
タンポポは、薬用と食用の両方に使われるハーブで、さまざまな健康効果を持つ植物です。中医学では、特に春に肝の健康を整えるための薬膳茶として用いられ、次のような効能があります。

- 肝の気を巡らせ、気分を安定させる:肝の気の滞りによる情緒の不安定を和らげ、気分の落ち込みやイライラ、不安を軽減します。
- 熱を冷まし、解毒する:体内の余分な熱を取り除き、肝火を鎮める作用があり、湿熱を解消しながら肝と脾のバランスを整え、新陳代謝を促します。
- 利尿作用でむくみを解消する:尿の排出を促し、余分な水分を排出することで、むくみを和らげます。
- 消化を助ける:胃腸の働きをサポートし、消化を促進するとともに、便秘の改善にも役立ちます。
以下は、タンポポを主役とした薬膳茶や点心、そして朝・昼・晩の食養生メニューの提案です。中医学の養生理論に基づき、さまざまな体質の肝脾の乱れに対応するように調整されています。
1. タンポポ玄米抹茶

適した症状・体質:春のだるさ、肝火の高まり、湿気のこもりやすさ、疲れやすさ、頭の重さ、のぼせやすさなどの症状がある方に適しています。ただし、脾胃が冷えやすい人は控えめに。
効果:熱を冷まして頭をスッキリさせ、脾を健やかにし、湿気を取り除き、春のだるさを和らげます。
材料:
- タンポポ 5g
- 玄米粉 小さじ1(脾を強め、気を補う)
- 抹茶粉 1/2小さじ(肝火を鎮め、余分な熱を除く)
- 熱湯 200ml
作り方:
- タンポポを熱湯に5分ほど浸し、濾します。
- 玄米粉と抹茶粉を混ぜ、タンポポ茶を注いでよくかき混ぜます。
合わせる和菓子:抹茶わらび餅
もっちりとした食感にほのかな抹茶の香りが楽しめる和菓子。玄米の香ばしさが際立つこのお茶と相性が良く、気分をリフレッシュし、脾を健やかにし、湿気を取り除いてくれます。
【養生メニュー】
朝食:玄米粥(玄米、昆布、胡麻)、温かいほうれん草和え(ほうれん草、胡麻ダレ)、玉子焼き
- 効果:食物繊維を補い、脾と胃を整え、エネルギー代謝を高めてくれます。
昼食:かつおだしで煮た大根(大根、乾燥かつお、醤油)、焼き豆腐の柚子味噌添え(豆腐、柚子味噌、胡麻)、玄米ご飯
- 効果:脂肪の消化を助け、胃をすっきりさせ、良質なタンパク質を補います。
夕食:鯛の炊き込みご飯(煮付け鯛、紫蘇、雑穀米)、味噌茄子(茄子、味噌、砂糖)
- 効果:肝を養い、脾を健やかにし、DHAを補給して心血管を守り、リラックスして眠りやすくします。
2. タンポポ甘草菊花茶

適した症状・体質:春に肝火が高まりやすい方、口や喉が渇きやすい方、目が乾燥しやすい方、アレルギー性鼻炎がある方、のぼせやすい方におすすめです。ただし、脾胃が冷えやすい方は控えめにしましょう。
効果:肝火を鎮め、肝を養い、目を健やかにし、春のアレルギー症状を和らげます。
材料:
- タンポポ 5g
- 乾燥菊花 3輪(肝を浄化し、目を健やかにする)
- 甘草 2本(熱を冷まし解毒し、肺を潤し脾を強め、肝と脾のバランスを整える)
- 熱湯 300ml
作り方:
- すべての材料をカップに入れ、熱湯を注ぎます。
- 10分ほど蒸らして完成です。お好みで蜂蜜を加えてもよいでしょう。
合わせる和菓子:豆乳白玉団子
豆乳でこねた白玉団子は、もちもちとした食感が特徴です。豆乳には肝火を鎮め、肝の血を養い、肺を潤し、乾燥を防ぎ、目を守る効果があります。
【養生メニュー】
朝食:山芋と納豆の和え物(山芋、納豆、小ねぎ、醤油)、五穀ご飯(玄米、粟、ハトムギ)、海苔のスープ
- 効果:脾を健やかにし、気を補い、腸内環境を整え、目を守り、アレルギーを防ぎます。
昼食:サバの味噌煮(サバ、味噌、生姜)、人参とえのきの胡麻和え(人参、えのき、胡麻油)麦ご飯
- 効果:炎症を抑え、解毒し、オメガ3を補い、肝を潤し、目を健やかにします。
夕食:湯葉のいなり寿司(湯葉、酢飯、胡麻)、ほうれん草の胡麻和え(ほうれん草、胡麻、醤油)、大豆もやしの味噌汁
- 効果:脾を整え、消化を助け、肺を潤し気を補い、目を守り、肝を落ち着かせます。
3. タンポポ柚子蜂蜜茶

適した症状・体質:春に喉が乾燥してかゆくなりやすい方、咳が出やすい方、口臭が気になる方、消化不良や便秘に悩む方におすすめです。
効果:体内の余分な熱を取り除き、肺を潤し、咳を鎮め、痰を減らし、消化を促進します。
材料:
- タンポポ5g
- 柚子の皮 適量(肝の気を巡らせ、気分を整え、脾を健やかにし、消化を助ける)
- 蜂蜜 大さじ1(肺を潤し、痰を鎮め、咳を和らげる)
- 温水 250ml
作り方:
- タンポポを熱湯に5分ほど浸し、濾します。
- 柚子の皮と蜂蜜を加え、よくかき混ぜます。
合わせる和菓子:よもぎ饅頭
爽やかな香りと優しい甘みが特徴のよもぎ饅頭は、腎を温め、冷えを取り、血の巡りを良くする効果があります。柚子蜂蜜茶と相性が良く、肺を潤し咳を和らげながら、体を冷やしすぎないように守ってくれます。
【養生メニュー】
朝食:ほうれん草の茶碗蒸し(卵、ほうれん草、だし)、玄米ご飯、味噌汁
- 効果:喉を潤し、脾と胃を強くし、免疫力を高めます。
昼食:サバの塩焼き 柚子風味(サバ、柚子果汁)、山芋の柚子和え(山芋、柚子ソース)、いなり寿司(豆腐の皮、酢飯)
- 効果:痰を取り除き咳を鎮め、口臭を改善し、胃腸を健やかにします。
夕食:柚子風味の焼き鮭(鮭、柚子醤油、白ごま)、和風豆腐サラダ(絹ごし豆腐、ミニトマト、紫蘇)、青菜の味噌汁
- 効果:肺と胃を潤し、余分な熱を取り除き、代謝を促進します。
4. タンポポはと麦茶

適した症状・体質:体内に湿気がこもりやすい方、むくみやすい方、湿疹ができやすい方、肌にニキビができやすい方におすすめです。
効果:脾を健やかにし、余分な湿気を取り除き、むくみを解消し、新陳代謝を促進します。
材料:
- タンポポ(蒲公英) 5g
- 大麦 10g(肝の気を巡らせ、気分を整える)
- はと麦(薏仁) 10g(脾を強め、湿気を取り除く)
- 水 500ml
作り方:
- 大麦とはと麦を鍋に入れ、沸騰させます。
- タンポポを加え、さらに10分ほど煮て完成です。
合わせる和菓子:小豆もち米団子(红豆糯米团)
もち米粉と小豆で作る団子は、もっちりとした食感が楽しめます。小豆には湿気を取り除く作用があり、大麦はと麦茶と一緒に食べることで、体内の余分な湿気を排出し、肝の血を養い、心を落ち着かせ、良質な睡眠を助ける効果があります。
【養生メニュー】
朝食:はと麦と小豆のお粥(はと麦、とうもろこし、小豆)、ピータン豆腐(ピータン、豆腐、小ねぎ)
- 効果:湿気を取り除き、むくみを改善し、脾と胃を養います。
昼食:鯛のスープ煮(鯛、はと麦、白菜)、ゴーヤの醤油漬け(ゴーヤ、醤油、酢)
- 効果:脾を健やかにし、余分な湿気を取り、痰を減らし、咳を鎮めます。
夕食:鰻の煮付け、白菜と豆腐の煮込み(白菜、豆腐)
- 効果:体内の熱を冷まし、湿気を取り除き、免疫力を高めます。
まとめ
これらの茶飲と食養生メニューの組み合わせは、肝の気を巡らせ、気分を整え、脾と胃を健やかにし、余分な湿気や熱を取り除きます。春に起こりやすい肝と脾の不調を改善し、気分の浮き沈みや不安、湿気による体調不良を和らげることで、心身の健康を維持するのに役立ちます。
(翻訳編集 華山律)
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