肝臓は解毒を司る臓器であるため、お酒を飲むと、肝臓が傷められると良く言われます。肝臓は自己修復能力が高いとはいえ、長期にわたる過度の飲酒は肝臓に害を及ぼし、致命的となることさえあります。では、飲酒をやめると肝臓はどうなるのでしょうか? 元に戻るのでしょうか?
プリマス大学のアシュウィン・ダンダ准教授(肝臓学)はウェブサイト「ザ・カンバセーション」で、肝臓は体内で最大の臓器であり、アルコールの分解など多くの機能を持つため、アルコールの影響を最も受けやすいと述べ、脳や心臓などの臓器も長期的なアルコール乱用によって損傷を受ける可能性があると指摘しました。
肝臓専門医として、ダンダ氏はアルコール関連肝疾患の患者を日常的に診察しています。肝臓の損傷には、脂肪肝から肝硬変までたくさんありますが、重篤な損傷が発生した後に症状が現れます。
まず、アルコールによって肝臓に油脂が蓄積され、これらの脂肪は肝臓の炎症を引き起こします。肝臓が損傷した細胞を修復して新しい組織で置き換えようとする過程で、瘢痕(はんこん:きずあと、あばた、痘痕・とうこんともいう)組織を作り出します。これが続くと、肝臓全体に網状の瘢痕が形成されます。 脂肪肝は最終的に肝硬変に発展する可能性があります。
肝硬変の最終段階で肝臓が機能しなくなると、黄疸が起きて、皮膚や白眼の部分が黄色くなります。浮腫、嗜眠(しみん・意識が清明ではない状態)、錯乱などの症状が現れます。これらの症状は重篤で、死に至ることもあります。
厚生労働省が示している「節度ある適度な飲酒」の目安は1日平均20g、1週間で140g程度です。よくこの上限を超えた量のお酒を飲む人のほとんどは脂肪肝になります。 長期的な過度の飲酒は、瘢痕組織や肝硬変のリスクを高めます。
禁酒のメリット
ダンダ氏によれば、禁酒には多くの利点があります。飲酒によって肝臓が損傷した人にとっては朗報でしょう。
ダンダ博士は、脂肪肝にかかる方は2~3週間禁酒すると、肝臓が回復し、見た目も機能も健康な肝臓と同様になると述べました。
肝臓に炎症や軽度の瘢痕組織がある人は、禁酒後7日以内に脂肪肝、炎症、瘢痕組織が大幅に減少します。数か月禁酒すれば、肝臓は正常に戻ります。
肝臓に重度の瘢痕がある、または肝不全を持つアルコール依存症患者の場合、数年間の禁酒で、肝機能が低下して死亡する可能性を減らすことができます。 しかし、アルコール依存症患者の体はアルコールに過度に依存しており、急に飲酒を中断・減量したときに、アルコール離脱症候群を引き起こす可能性があります。軽度の場合は、震えや発汗、重度の場合は幻覚、失神、さらには死に至ることもあります。
ですから、重度のアルコール依存症患者は急に飲酒を中断するのではなく、医師に尋ねるべきです。
ダンダ氏はまた、睡眠、脳機能、血圧への良い影響など、禁酒の他の利点についても言及しました。禁酒は肝臓がんなど数種類のがんや心血管疾患のリスクを低減する効果もあります。
肝臓には自己修復能力がありますが、肝臓に既に重度の瘢痕組織ができた(肝硬変)場合、禁酒して肝機能を改善することはできても、肝臓が完全に回復することはできません。
ダンダ氏は、肝臓をいたわるには、適度な飲酒と週に2、3日の禁酒が必要だと結論づけました。そうすれば、肝臓の自己修復能力に頼らずに健康を維持することができます。
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