この50年の間に、デリバリーや手軽なドリンク、長時間の座りっぱなしといった生活習慣が広まり、さらに一部の慢性ウイルス感染が増えたことで、肝がんの発症率は急速に上がっています。現在、世界では毎年およそ87万件の新たな肝がんが確認されており、この数は2050年までにほぼ倍増すると予測されています。
しかし、朗報です。専門家によると、生活習慣を改善することで最大60%の肝がんは予防可能だといいます。
肝臓を悪化させる「3つの加速要因」
世界保健機関(WHO)の専門家は、肝がんを引き起こす主な3つの要因を挙げています。
1. アルコール
WHO欧州地域の広報担当、アレクサンドラ・オルセン氏は「アルコールは最大の単一リスク要因です」と語ります。
アルコールやその代謝産物であるアセトアルデヒドは、「酸化ストレス」を引き起こして細胞のDNAを傷つけ、まるで内部が錆びつくように修復機能を妨げ、がん化を促進します。
このような損傷が長期に続くと、肝臓は「傷跡」をつくり、最終的に「肝硬変」へと進行します。アルコール関連の肝がんの多くは、こうした段階を経て発症するのです。
2. 代謝による負担
お酒を飲まない人でも、「ウエスト周り」と「糖分の摂りすぎ」には注意が必要です。
余分な内臓脂肪や腸内環境の乱れは、肝臓に大きな負担をかけます。特に、清涼飲料水や加工食品に多く含まれる高果糖コーンシロップが問題で、これは腸内の菌バランス(フィルミクテス門やバクテロイデス門など)を崩し、肝細胞のエネルギーを消耗させ、肝臓の線維化(いわゆる「肝臓の傷」)を進めて脂肪肝や肝がんを誘発します。(※天然の果物に含まれる果糖はこの限りではありません)
3. 慢性ウイルス感染(B型・C型肝炎)
ウイルス感染も長期的に肝臓を脅かしますが、現在では効果的にコントロールまたは治療が可能です。
- C型肝炎:すでに治療可能であり、最新の抗ウイルス薬は安全かつ高い効果を持ち、わずか8〜12週間で治癒できます。
- B型肝炎:完全な根治には至っていないものの、優れた薬剤によってウイルス量を大きく減らし、長期的な肝障害のリスクを抑えることができます。
肝がんを遠ざけるための行動リスト
肝がんは一朝一夕に発症するものではなく、長期的な肝臓のトラブルが続き、やがて傷跡(線維化)や肝硬変へと進み、最終的にがん化するというゆっくりとした過程をたどります。この長い過程の中には、医師と患者が協力して薬の治療や生活習慣の改善を行い、病気の進行を止めるための十分な時間があるのです。
以下は、WHO専門家の提案や栄養学データをもとにまとめた、日常でできる肝臓の保護戦略です。
賢く減酒し、肝臓に「休息日」をつくる
WHOの専門家フランク・マレー氏は、飲酒量を減らしたい人のために次のような実践的アドバイスを挙げています。
- 自分の限度を知る:1週間の飲酒量を記録し、上限を決めて定期的にチェックしましょう。
- 目標を設定する:事前に飲む量を決めて守ること。習慣的に飲む人は、「休肝日」や「禁酒週間」を必ず設けましょう。
- 食事と水分補給を忘れずに:飲酒の前や途中で水を多めに飲み、何かを食べておくことで、アルコールの吸収を緩やかにできます。
正しい脂肪を摂って、肝臓の「燃焼モード」をオンに
健康的な食生活は、肝臓の脂肪を減らし、代謝の負担を軽くする鍵です。
1. 食生活の基本は「地中海式」
抗酸化成分が豊富で、果物・野菜・全粒穀物・良質な脂肪を中心にとることで、肝臓や代謝の健康を大きく改善できます。
2. 油は「オメガ3脂肪酸」を意識して
サーモン、チアシード、クルミなどに多く含まれるオメガ3脂肪酸は、炎症や肝臓の線維化(傷跡)を抑え、脂肪を「ためる」のではなく「燃やす」ように肝臓を助けます。
3. 栄養補助(使用前に医師へ相談を)
- ビタミンE:1日約800IUで肝臓の脂肪蓄積を減らす可能性があります。
- シリマリン(マリアアザミ抽出物):肝酵素や血中脂質を下げる効果が報告されています。
- クルクミン(ウコン成分):脂肪の生成を抑え、分解を促進し、炎症を和らげる作用があります。
積極的な検査で、ウイルスによる発がんリスクを断つ
もしあなたがB型やC型肝炎の感染者、あるいはそのリスクが高い場合は、定期的な検査と治療の継続が不可欠です。
C型肝炎:現在は治療が可能です。最新の抗ウイルス薬は安全性が高く、わずか8〜12週間で治癒できます。
B型肝炎:まだ完全な根治には至っていませんが、優れた薬剤でウイルス量を効果的に抑え、長期的な肝臓の損傷を防ぐことができます。医師の指導のもと、定期的な経過観察を続けましょう。
(翻訳編集 華山律)
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