非アルコール性脂肪性肝疾患(MASLD 代謝機能障害関連脂肪肝)は、世界で最も罹患率の高い慢性肝疾患であり、世界人口の30%以上が影響を受けていると推定されます。肝細胞への脂肪蓄積に伴い、炎症、痛み、疲労など様々な症状を引き起こします。
糖質も人工甘味料も避けられない脂肪肝リスク
従来の研究はメインとして糖質飲料の有害性に焦点が当てられてきました。しかし欧州消化器病学会(UEG Week 2025)で発表された最新研究では、甘味料を含む飲料を1日1缶(約250ミリリットル)超摂取する場合、MASLDの発症リスクが有意に上昇し、とりわけ人工甘味料飲料のリスクがより高いことが示されました。
本研究は、イギリスバイオバンク(UK Biobank)に登録された約12万4千名を対象とし、平均10.3年間追跡した大規模研究でした。
主要研究者であるリウ・リーホー(Lihe Liu)博士は次のように述べています。「糖質飲料と人工甘味料飲料は構成が異なるものの、いずれも肝臓の代謝機能に対して悪影響を及ぼすことが示唆されました」
研究は次のような結果をしめされています。
- 糖質飲料を1日1缶超摂取する群では、MASLDの発症リスクが50%増加
- 人工甘味料飲料を1日1缶超摂取する群では、同リスクが60%増加
- 人工甘味料飲料を習慣的摂取は、肝疾患関連死亡率の上昇 とも関連します
人工甘味料はどのように腸や代謝系へ影響を及ぼすか
研究によると、糖質飲料と人工甘味料飲料では人体に及ぼす影響の経路が異なるとされています。
糖質飲料 代謝負荷の直接的増大
糖質飲料は血糖値およびインスリン分泌を急速に上昇させ、脂肪蓄積と体重増加を促す結果、肝臓への代謝負荷を直接的に増大させます。
人工甘味料飲料 腸内細菌叢の攪乱と慢性炎症の誘発
サッカリン、アスパルテーム等の人工甘味料は腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを崩し、「リーキーガット(腸漏れ)」を誘発する可能性があります。その結果、腸由来の毒素が血液へ流入し、全身性炎症を引き起こします。
慢性炎症はインスリン抵抗性を増悪させ、2型糖尿病およびMASLDの発症リスクを高めます。また、人工甘味料は満腹中枢の反応性を低下させ、食欲増進および過食につながる可能性が指摘されています。
専門家が勧める「肝臓を守る飲み方・食べ方」
登録栄養士マディソン・リーダー(Madison Reeder)氏は、「添加糖であれ人工甘味料であれ、頻繁に摂取することは肝臓に負荷をかけてしまします」と指摘します。
水への置換が有効
研究データでは、甘味飲料を水へ置き換えることで、脂肪肝発症リスクが約15%低減することが確認されています。
食事改善の提案(ヘレン・ティウ氏)
- 自然由来の甘味の利用 ヨーグルト+ベリー、カッテージチーズ+果物、果物+ナッツ
- 人工甘味料を使用しないフレーバーウォーター 炭酸水+レモン/ライム
- 食物繊維の摂取増加 亜麻仁、リンゴ、オートミール、サツマイモなど
- 高品質なたんぱく質源 適量な赤身肉は脂肪代謝の改善に役立つ
MASLD予防の根幹は「全体的な生活習慣のバランス」
ネバダ大学、運動機能学講師サマンサ・クーガン(Samantha Coogan)氏は、「バランスの取れた食事、十分な食物繊維・たんぱく質の摂取、そして規則的な運動こそが、脂肪肝および代謝性疾患を予防する根本である」と述べています。
免責事項 本記事に記載された健康情報・研究データ・専門家コメントは、学術的・教育的目的の内容であり、医療行為(診断・治療等)の代替にはなりません。健康状態に関する懸念がある場合は、必ず医療専門医へご相談ください。
(翻訳編集 正道勇)
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