マスト細胞活性化症候群とは(三)

低ヒスタミン食でマスト細胞活性化症候群を緩和

マスト(肥満)細胞活性化症候群(MCAS)に苦しむ人々にとって、食生活を変えることは、症状を大きく軽減できます。多くの人が健康的な食事を心がけていますが、実際にはそうであっても、過敏性腸症候群やかゆみ、くしゃみ、不眠症などのMCASの症状を引き起こすヒスタミンが多く含まれている「健康食品」も存在します。

MCASの症状を和らげる食事法には、ヒスタミンが多い食品を避けることが求められます。この方法についてはインターネット上で情報が錯綜していますが、この記事は食事やライフスタイルを変えるスタート地点を明確にし、方向性を示すことで、読者のためになれば幸いです。

 

ヒスタミンに関する注意が必要な食品

ヒスタミンに敏感な人は、体の回復を促すために、高ヒスタミンを含む食品を一時的に食事から排除することが有効的でしょう。

これは生活に大きな変化をもたらすことがあるため、経験豊富な専門家のサポートを受けることを推奨します。

ここに挙げるリストは完全ではなく、また、食品に対する個人の反応はそれぞれ異なります。食品を排除することに焦点を置くのではなく、代わりになる食品を見つけることをお勧めします。このリストは、あなたが無意識のうちによく摂取しているかもしれない高ヒスタミン食品についての指針となり、食生活の見直しの第一歩として役立つでしょう。

 

高ヒスタミン食品

一般に、加工食品、発酵食品、熟成食品はヒスタミンの含有量が高いのです。

 

長期保存可能な加工食品

・缶詰

・ザワークラウト、キムチ、漬物などの発酵野菜

・ケフィア、ヨーグルト、サワークリーム、クリームチーズ、熟成チーズなどの発酵乳製品

・ベーコン、ソーセージ、サラミなどの加工・熟成肉類

・オリーブ、ピクルス、マヨネーズなど酢を含む食品

アルコール

・ピーナッツやカシューナッツ

・チョコレート

・酵母を含む製品

・アボカド、柑橘類、パイナップルなどの果物やドライフルーツ

・ほうれん草、トマト、ナスなどの野菜

・シナモン、ナツメグ、アニス、クローブ、カイエンペッパーなどのスパイス

長期保存可能な加工食品にヒスタミンが多く含まれている(Givaga / PIXTA)

 

ヒスタミンを放出させる食品

これらの食品は、白血球にヒスタミンの放出を促すことがあります。

・アルコール

・人工保存料や着色料

・バナナ

・チョコレート

・乳製品

・ナッツ類

・パパイヤ

・パイナップル

・貝類

・イチゴ

・トマト

・小麦胚芽

バナナ、イチゴ、チョコレート、乳などよく食べる食品が実はヒスタミンの放出を促している(no_sick / PIXTA)

これらの食品を控えることで症状を緩和できますが、目指すべきはヒスタミンの代謝経路を正常に機能させることです。そうすることで、上記の食品を再び食べられるようになります。発酵食品など、ヒスタミンが豊富な食品には栄養価が高いものも多いため、永久的に摂取しないことは望ましくありません。

ヒスタミンが多い食品を3〜6か月間食事から除外することを推奨します。しかし、排除食ダイエットを行っても大きな改善が見られない場合は、ヒスタミンを分解するために体が生成するダイアミンオキシダーゼ酵素のサプリメントの検討をお勧めします。

 

低ヒスタミン食とは?

MCASに直面している人にとって、高ヒスタミン食品やヒスタミンを放出する食品を控えつつ、栄養摂取を向上させる免疫サポート食を摂ることが大切です。特に、体内の炎症を抑え、マスト細胞を安定させる助けとなる抗炎症性の食品を摂ることが有効です。

低ヒスタミン食を選ぶ際のポイントをいくつか紹介します。効果を高めるためにも、これらを念頭に置いてください:

 

残り物は冷凍保存を

冷蔵保存された食べ残しは、日に日にヒスタミンが増える原因となります。すぐに冷凍することで、そのリスクが避けられます。

 

熟成肉は避ける

熟成させた肉はヒスタミン含有量が増えます。例えば、牛肉は14~21日間で熟成されることが多く、その間にヒスタミンが増えていきます。新鮮な肉はすぐに冷凍させたほうが望ましいです。地元の農家や肉屋、または屠殺直後に冷凍された高品質なタンパク質を宅配してくれる業者を利用すると良いでしょう。

 

砂糖の摂取量を抑える

低ヒスタミンの食事中は、血糖値の急激な上昇を避けることが重要です。メープルシロップ、米シロップ、アガベ、ココナッツシュガーなどの精製糖類はもちろん、ヒスタミンが多いはちみつも控えましょう。

 

外食は控えめに

外食は低ヒスタミン食事計画を守る上で非常に難しいものです。食事の材料リストを確認することすら一苦労です。

 

食事日記をつける

毎日の食事と感じた症状の記録は、ヒスタミンとは無関係の食物感受性や不耐性など、きっかけを見つけるのに非常に有効です。

 

水分をしっかりとる

体をサポートするために、十分なミネラルを摂るようにしましょう。水分をしっかり摂ることで、体が毒素を排出しやすくなります。

水分をしっかり摂ることで、体が毒素を排出しやすくなる(y.uemura / PIXTA)

 

非炎症性で免疫をサポートする食品

基本的に、新鮮で栄養豊富な食品を中心に食事を摂ることを推奨します。治癒プロセスを促進するために、体はできるだけ多くの利用可能な栄養素を必要とします。可能であれば、自分で果物や野菜を育てるのも良いでしょう。食事に非炎症性食品を取り入れることで、体が必要とする全ての栄養素を吸収する手助けになります。以下は、低ヒスタミン食品の一例です:

 

野菜

・バターレタス(厚葉のサラダ菜)

・青ねぎ

・玉ねぎ

・サツマイモ

・アーティチョーク

・ルッコラ

・キャベツ

・カリフラワー

・チンゲン菜

・ラディッシュ

・バターナッツスクワッシュ(ひょうたんかぼちゃ)

・スパゲッティスクワッシュ(そうめんうり)

・ズッキーニ

・エンダイブ(チシャ)

・フェンネル(ウイキョウ)

・アスパラガス

・ネギ

ブロッコリー

・マスタードリーフ

・ニンジン

 

ハーブ

・カモミール

・イラクサ

・ターメリック

・ガランガル

・バジル

・コリアンダー

・ニンニク

・チャイブ

・ミント

・ローズマリー

・パセリ

・モリンガ

・オレガノ

ミント、ローズマリー、バジルなど(karin / PIXTA)

 

ナッツや種子

・ブラジルナッツ

・キヌア

・フラックスシード

・麻の種

 

穀物

・キャッサバ粉

・タイガーナッツ粉

・アマニ粉末

・ココナッツ粉

 

果物

・桃

・タートチェリー

・青リンゴ

・ブラックベリー

・マンゴー

・ブルーベリー

 

タンパク質

・熟成肉以外の牛肉、鶏、豚、羊、七面鳥

・鶏、うずら、またはアヒルの卵

・新鮮な魚

 

脂肪

・ギー(溶かしバター)

・ココナッツオイル

・アボカドオイル

 

その他の潜在的な食品の誘因

低ヒスタミン食を食べている人でも症状が続く場合があります。これは他に考慮すべき点があることのサインです。免疫システムに影響を与えているか、もしくは、食べている他の食品成分について考える必要があるかもしれません。たとえば、レクチン(植物性タンパク質総称)やシュウ酸の多い食品がそれにあたります。

レクチンは、植物が持つ炭水化物に結合するタンパク質で、植物の自然な防御機能の一部です。この防御機能が人体に炎症を引き起こす可能性があります。

 

レクチンを含む一般的な食品

・豆類(レンズ豆、エンドウ豆、大豆、ピーナッツ)

・小麦などの全粒穀物

・ズッキーニ

・ナス科の野菜(トマト、ジャガイモ、ピーマンなど)

・オキサレート(シュウ酸カルシウム)は多くの植物に存在し、外敵からの防御の一環です。カルシウムの吸収を妨げるため、「抗栄養素」とも呼ばれます。

小麦などの全粒穀物(kerdkanno / PIXTA)

 

シュウ酸を多く含む食品

・ビーツ

・ルバーブ

・サツマイモ

・ほうれん草

・アーモンド、カシューナッツ

・スイスチャード

・そば

・キヌア

・インゲン豆

・ピーナッツ

・ゴマ、松の実

・チョコレート

MCASはほとんどの場合、食事を調整するだけで時間とともに症状が改善されます。体内バランスが整うにつれて、以前は症状を引き起こしていた高ヒスタミン食品を少量なら食べられるようになります。この食事法は一時的なものであり、永遠に続けるものではありません。食品を1種類ずつ慎重に再摂取することが、それぞれの食品に対する体の反応を理解する上で重要です。

MCAS患者のほとんどは、食事を変えることだけが治療の方法ではありません。医者と協力して治療プロセスを進めることで、最善の結果が得られるでしょう。

伝統的な訓練を受けた自然療法医であり、ホリスティックの認定医でもある。慢性疾患、リーキーガット、または自己免疫疾患を持つ人々を助けるための料理本とライフスタイルガイド『Restorative Kitchen』と『Restorative Traditions』を出版。