自閉スペクトラム症の急増、遺伝学と診断の新たな視点

医療界では、自閉スペクトラム症の増加率は診断技術の向上と共に遺伝的素因によるものだとされています。しかし、子供健康に深く関わるホリスティックな視点を持つ小児科医として、より深い問題を見落としている可能性の懸念があります。

個人の責任から目を逸らして、問題から自分たちを切り離す方向に話が進んでいるように見えます。これは、自閉スペクトラム症の子供たちにとって不利益になる可能性があります。

カリフォルニアは、自閉スペクトラム症の発病率が世界で最も高く、子供22人のうち1人の割合で発症しています。

なぜカリフォルニアの医療界は、自閉スペクトラム症の発生率が全国平均よりもはるかに高い原因をもっと強く探ろうとしないのでしょうか? この驚くべき傾向の原因についてあらゆる可能性を検討しないのはなぜでしょうか? 自閉スペクトラム症の発生率の急増は、「なぜ」と問い続ける必要があると思います。それは誰かを非難することではなく、真実を明らかにし、問題の核心に迫ることです。私たちの子供たちには、その明確さが必要なのです。
 

環境とライフスタイルの影響

遺伝や診断の向上にばかり焦点を当てると、自閉スペクトラム症の増加に影響を与えている環境や生活習慣の要因が見過ごされてしまう危険性があります。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、アメリカの子供における自閉スペクトラム症の割合は、2000年の150人に1人から2020年には36人に1人にまで増加しています。

(Shutterstock)

診断基準の改善と認識の向上がこの増加に一部影響していると思われますが、しかし、それだけでは説明がつかないほど増加しています。つまり、他にも原因があると考えられます。

科学的な研究では、自閉スペクトラム症の発生における環境の要因が強調され、遺伝的な説明が後回しにされています。例えば、鉛や水銀、カドミウムなどの重金属の垂れ流しが自閉スペクトラム症の増加と関連があると考えられます。

このような金属は正常な神経発達を妨げ、健康への影響について深刻な懸念を引き起こしています。さらに、有機リン系や有機塩素系の農薬は、出生前および幼児期の体内に入ると、自閉症発生率が高くなると言われていますが、ライフスタイル要因も重要な役割を果たしているとされています。たとえば、高齢の両親から生まれた子供や、妊娠中に肥満、糖尿病、高血圧などの健康状態にある母親から生まれた子供も、自閉症のリスクが高くなる傾向があります。
 

原因と分類

私は医師であり親でもあるため、自閉スペクトラム症についてのメディアの議論にとてもフラストレーションを感じています。よく、自閉スペクトラム症の環境的な原因について話し合うと、能力主義的なこととか、自閉スペクトラム症の人々を「病気」として恥じることに関する議論に巻き込まれてしまうのです。

そのため、自閉スペクトラム症がただの「正常な変異」であると誤解されることがありますが、実際には「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)」では障害として分類しているのです。

もし自閉スペクトラム症を「正常な変異」として扱うと、統計的にはどんどん増えてしまいますが、根本的な原因を突き止めることで、子供たちのリスクを減らす対策ができるようになります。しかし、議論が分裂や対立に陥ると、自閉スペクトラム症のリスクを認めることで子供や大人の自閉スペクトラム症の人々を軽視してしまいます。すると、自閉スペクトラム症の本人とその介護者が耐えている深刻な困難が見過ごされる可能性があります。

自閉スペクトラム症の急増が主に遺伝的な要因によるものであるという主張は、自閉スペクトラム症に関連する観察可能な症状や行動と矛盾しています。

例えば、言葉を話せないといった自閉スペクトラム症の表に出る症状は、50年前には見逃されたり診断されなかったりすることはなかったのです。重度の自閉スペクトラム症は、子供の機能やコミュニケーション能力に影響を与えるため、もっと慎重に観察するべきです。

重度の自閉スペクトラム症は、子供の機能やコミュニケーション能力に影響を与えるため、もっと慎重に観察するべきである(Shutterstock)

 

多くの自閉スペクトラム症の子供は話し言葉の未発達や、言葉の言回しが非常に限られています。研究によれば、自閉スペクトラム症スペクトラム障害(ASD)の子供の約25〜30%がこの傾向を持っていて、さらに知的障害も一般的にあり、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、ASDの子供の31%が知的障害(IQが70未満)を持ち、さらに23%が境界域にあります。行動上の問題も非常に一般的で、ASDの子供の30%以上が自傷行為をしています。
 

議論よりも食事

他の医師の話しによると、親に生活習慣の改善方法を教えると、患者の状態が劇的に改善することが多く報告されています。場合によっては、これらの改善が非常に大きな影響を与え、子供たちは自閉スペクトラム症と診断されない事もあります。

包括的な食事、生活習慣、および個別の治療アプローチが自閉症の症状を逆転させる可能性がある(Shutterstock)

 

「私たちは15年間、自閉スペクトラム症の診断から解放された子供たちのケースを記録してきた」と『Documenting Hope』のディレクター、ベス・ランバートは述べています。「特定の遺伝的要因がこれらの子供たちを自閉スペクトラム症に影響を及ぼすが、これらの家族が選んだ食事、生活習慣、および治療法は、これらの遺伝的な弱点をカバーし、自閉スペクトラム症から完全に解放されました」

これらの驚くべき成果にもかかわらず、自閉症の概念を変える議論はほとんどされていません。現在の議論では、自閉症は治療されるべきでない神経学的スペクトラム状態として主に捉えられています。ランバート氏は、「完全な自閉症の逆転のケースは医学文献に記録されているが、この現象はまだ多くの医療実践に浸透していない」と指摘しています。

「私たちは最近、包括的な食事、生活習慣、および個別の治療アプローチを利用して自閉症の診断を逆転させた双子についての重要な論文を発表しました。これは『Documenting Hope』が教えているのと同じアプローチだ」とランバート氏は言います。「私たちの目標は、このアプローチを親や医療従事者に教え、より多くの子供たちが自閉症に関連する最も困難な症状を克服できるようにすることです」
 

前進するための希望

また、ランバード氏は改善可能な要因に焦点を当てることで、自閉スペクトラム症に取り組む家族に希望と具体的な戦略を提供し、ターゲットを絞った生活習慣の変更によって大幅な改善が期待出来る、と強調しました。

将来の公衆衛生政策とメッセージングは、自閉症の増加に寄与する環境要因や生活習慣要因に焦点を当てる必要があります。この転換により、親や介護者が積極的な対策を講じることができ、自閉症が多くの子供にとって修正可能な要因に影響されているという考えをサポートします。

また、家族に力を取り戻すことができます。これは、誰かを非難したり恥じたりすることではなく、現代の生活様式が診断に有意義に働き、場合によっては原因となっていることも認識できます。

自閉スペクトラム症を多因子性疾患として理解し、主要な要因が変更可能であると認識することで、自閉スペクトラム症のケースを減少させ、自閉スペクトラム症と診断せず、さらなる増加を防ぐことができます。ライフスタイルの変更は大きな可能性があるのです。

このアプローチは、健康に対する総合的な見方に合致するだけでなく、自閉スペクトラム症に対する理解と管理を強化し、自閉スペクトラム症に悩む家族に希望と実行可能な道筋を提供します。

 

この記事で述べられている意見は著者の意見であり、必ずしも大紀元/エポックタイムズの意見を反映するものではありません。

 

(翻訳編集:青谷荘子)