体脂肪は敵じゃない! 知って得する脂肪の種類と役割

どれだけ体を鍛えていても、体に脂肪があるのは正常で健康的なことです

脂肪は人体の様々な部位に蓄積されますが、その全てが同じではありません。脂肪がどこに蓄えられているかによって、健康への影響は異なります。

 

体内での脂肪の役割

2013年の研究レビューによると、脂肪は単なるエネルギーの貯蔵庫ではなく、代謝プロセスや免疫システムの調整を行う高度な臓器と見なされています。脂肪組織は多くの臓器を調節する上で重要であり、脳の機能とも密接に関わっています。

脂肪は様々な役割を果たします。ジョージア州ピードモント・ヘルスケアのバリアトリック手術部門のマネージャーであり、栄養と食事療法のアカデミーの代表を務める登録栄養士クリステン・スミス氏は、エポック・タイムズに対し、脂肪はエネルギーを供給し、細胞の成長を支え、臓器を保護し、必要な栄養素の吸収を助けると説明しています。

カリフォルニアのミスラ・ウェルネスの創業者であるスラグナ・ミスラ博士も、脂肪が体を温め、断熱し、体が燃料を蓄える手段として機能するとエポック・タイムズに語っています。また、重要なホルモン活動を行う内分泌腺としても働きます。

脂肪は、エストロゲンやレプチンなどのホルモン、細胞間コミュニケーションに関わるサイトカイン(例えば腫瘍壊死因子)、プロ炎症マーカーを生成する脂肪細胞から成り立っています。これらの脂肪細胞が過剰になると、代謝やホルモンの調節不全を引き起こすことがあります。

 

1.皮下脂肪

皮下脂肪(Shutterstock)

 

皮下脂肪は皮膚のすぐ下にあり、体内で最も多い脂肪のタイプです。スミス氏によると、これは代謝にとっても最も有利な脂肪です。通常、中性脂肪と見なされる皮下脂肪は、冠状動脈疾患や2型糖尿病から保護する効果があります。

国際肥満学会の記事によると、皮下脂肪は保護的なグルコースと脂質のプロファイル、低い代謝リスク、そして炎症性サイトカインの低レベルと関連しています。この脂肪は腹部脂肪よりも受動的で、「長期的な脂肪酸の貯蔵によってその保護特性を発揮する」と考えられています。

しかし、特に上半身に過剰な皮下脂肪がある場合は、それは有害としています。研究によると、上半身の皮下脂肪は心血管代謝リスク因子の増加と関連しているとしています。

 

2.内臓脂肪

内臓脂肪が多いと、心臓病などの心血管系の病気を発症するリスクが高まることが研究で示されています。内臓脂肪は、お腹の内臓を取り巻く脂肪で、腹部の奥深くに位置しています。

内臓脂肪が多いと、心臓病などの心血管系の病気を発症するリスクが高まる(Shutterstock)

 

内臓脂肪はインスリンに対する抵抗性が強く、脂肪の分解に敏感で代謝が活発です。遊離脂肪酸を生成し、皮下脂肪よりも多くのグルコースを吸収します。また、死亡リスクを予測する上で、より確かな指標です。

脂肪の蓄積場所によって、代謝疾患のリスクには大きな違いがあります。内臓脂肪は炎症を引き起こしやすく、代謝疾患のリスクは高いとしています。内臓脂肪と皮下脂肪は代謝的に異なる組織です。

フレーミングハム心臓研究では、1581人の女性(平均年齢52歳)と1718人の男性(平均年齢50歳)を対象に、内臓脂肪と抑うつ症状の関連を調査しました。その結果、女性には関連が見られましたが、男性には見られませんでした。一方で、皮下脂肪と抑うつ症状の間には関連性が見られなかったことから、脂肪の蓄積場所ごとに代謝活動に違いがあることが強調されました。

ストレスやコルチゾール、そして腹部の脂肪蓄積との関連も指摘されています。ストレスはコルチゾールの血中濃度を高め、食欲を増加させ、脂肪が体の外側から中央部へ移動することを促します。コルチゾールは脂肪を体の外側から腹部へ移動させることで知られています。

2011年の『Obesity』誌に掲載された記事では、肥満と抑うつ症状の関係に影響を与える様々な要因があるとされ、その中には炎症も含まれています。著者は、内臓脂肪が炎症状態に「特有で重要な役割」を果たしていると指摘しています。

スミス氏によると、内臓脂肪は年齢とともに増加し、ストレスが増えるとさらに増加するといいます。研究では、体脂肪の総量よりも体脂肪の分布が健康全般にとって重要であることが示されています。脂肪分や炭水化物が多い食事と運動不足の生活は、内臓脂肪が蓄積しやすい状況を作り出すと彼女は述べています。

脂肪分や炭水化物が多い食事は、内臓脂肪が蓄積しやすい(Shutterstock)

 

3.脂肪肝

ミスラ氏の研究によると、脂肪肝は肝臓に脂肪が過剰に蓄積する状態を指します。糖分や脂肪の過剰摂取が原因で脂肪肝になることがあります。特に、糖分や飽和脂肪が多い食事は肝臓脂肪の増加に繋がりやすいです。脂肪肝が進行すると、肝臓の機能が大きく低下する恐れがあります。肝臓は代謝やホルモンの生成など、多くの重要な機能を担っているため、肝臓脂肪の増加は代謝やホルモンの異常を引き起こすことが多いのです。

肝臓脂肪の蓄積における食事の影響を考えると、脂肪の摂取量よりも総カロリー摂取量が脂肪肝の発症に大きく関わっています。カロリー摂取を控えた食事は、脂肪の量に関わらず脂肪肝を改善することができますが、カロリー過多の食事は脂肪肝を悪化させます。

また、食事に含まれる脂肪の種類によっても肝臓脂肪の蓄積に違いが出ることがあり、飽和脂肪が多い食事は不飽和脂肪が多い食事に比べて脂肪肝を悪化させる傾向があります。

飽和脂肪が多い食事は脂肪肝を悪化させる傾向がある(Shutterstock)

 

果糖の摂取も脂肪肝に影響を及ぼす要因とされています。果糖はグルコースよりも代謝が早く、肝臓のグリコーゲンに変わりやすいとされています。さらに、摂取される炭水化物は食事の脂肪よりも非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の原因となりやすく、NAFLDは肝臓の損傷リスクを高めるとしています。

 

有害な脂肪を減らす4つの方法

「食事内容を見直し、自分の体のサインに耳を傾け、質の良い睡眠を確保し、楽しみを生活に取り入れ、野菜や食物繊維を多く摂り、加工されていない新鮮な食品を選び、自宅で料理をし、定期的に運動をする(特にウェイトトレーニングが効果的)」とミスラ氏はアドバイスしています。以下の4つのポイントに注目してください。

1.加工食品を避ける

揚げ物や超加工食品、ソーダ、キャンディ、市販のスナック菓子などを避けましょう。フルクトース(糖の一種)で甘く味付けされた食品は控えめに、楽しむ程度にしましょう。成分表示を確認し、「部分水素添加油脂(硬化処理してトランス脂肪酸を生じる)」や「コーンシロップ」などの成分を避けましょう。これらは必要な栄養素を奪い、すぐに脂肪に変わります。

 

2.インターバルトレーニングを試す

高強度で短時間のトレーニングは、内臓脂肪を減らし、頸動脈の健康を促進して脳への血流を改善します。

 

3.体を動かすことを心がける

特にテレビ鑑賞などの座りがちな行動は、脂肪の蓄積と密接に関連しています。日常的に体を動かすことを心がけましょう。

ソファーでくつろぐ女性(Shutterstock)

 

4.食物繊維を十分に摂る

溶解性食物繊維(水溶性食物繊維)を多く摂ることは、BMIに関わらず内臓脂肪の蓄積を減らす効果があります。溶解性食物繊維を多く摂り、運動量を増やすことで、内臓脂肪の増加を防ぎます。

 

肥満の新しい定義

2006年の「Current Diabetes Reviews」に掲載されたレビューでは、心血管の代謝リスクを評価する際に、脂肪の量ではなく位置に基づいた肥満の新しい定義を提案しました。

このレビューでは、「代謝性肥満」という用語が、痩せ型でも肥満体型でも内臓脂肪が蓄積している人々を特定するのに適しているかもしれないとしています。これは心血管疾患のリスクを持つ人々をより正確に識別するためです。

ミスラ氏は、BMIが正常範囲であっても内臓脂肪が多い病気や状況が存在すると指摘し、「正常」な体重は一様ではなく、体重増加は複雑な現象であるため、個別に対応することが重要であると述べています。

 

(翻訳編集 華山律)

ゼナ・ルー・ルーは、健康ジャーナリストで、健康調査ジャーナリズムの修士号を持ち、機能栄養に特化した認定健康およびウェルネスコーチです。スポーツ栄養学、マインドフルイーティング、内的家族システム、および応用ポリヴェーガル理論のトレーニングを受けています。彼女はプライベートプラクティスで働き、英国に拠点を置く健康学校の栄養教育者としても活動しています。