今年の秋は湿気が多く、脾胃や肝腎に負担がかかる――どうやってケアすればいい?

通常、は乾燥する季節ですが、今年は雷や雨が多い異常気象が見られます。中医学の古典『黄帝内経』によれば、甲辰の年(2024年)の秋冬には湿気が過剰になり、人々に食欲不振や脾胃・肝腎の不調、手足の重だるさ、水分がたまることでむくみや腹部の張り、さらには抑うつやイライラ、血圧の上昇などの症状が現れやすくなると記されています。

 

秋の雷雨が健康に与える影響は?

なぜ湿気が多いと雷雨が増え、それが人の健康に影響を与えるのでしょうか? 昔の人々は、宇宙のすべてのものが、木・火・土・金・水という5つのエネルギー(五行)によって成り立っていると考えていました。このエネルギーは、地球だけでなく私たちの体にも影響を与えています。そのため、宇宙と体は密接に関係しているとされていました。

今年のように秋に雷雨が多い場合、2024年は「土」のエネルギーが特に強い年だと考えられます。この「土」のエネルギーが強くなると、湿気が多くなり、雨が増えます。湿気は体の消化器官、特に胃や腸に負担をかけやすく、消化力が落ちたり、食欲がなくなったりします。場合によっては、お腹の張りや痛み、下痢や吐き気などの症状が出ることもあります。これらは、現代の医学で言うところの消化器の不調にあたります。そのため、今年の秋は、肺を潤し咳を和らげることに加え、胃腸の健康を保ち、体内の余分な湿気を取り除くことが重要です。

木・火・土・金・水という5つのエネルギー(五行)によって成り立っている(Shutterstock)

 

さらに、「土」のエネルギーは「水」を制御する力を持っていると考えられています。土のエネルギーが強すぎると、体の「水」のエネルギーが影響を受け、特に腎臓が弱くなりやすくなります。これにより、体に水分がたまりやすくなり、むくみや頻尿の原因になることがあります。体の一部が不調になると、その影響が他の部分にも広がりやすいのです。

雷が多い現象は、実は「木」のエネルギーが「土」を制御しようとする自然の働きだと考えられています。湿気が多すぎて体に悪影響を及ぼさないように、「木」のエネルギーが「土」のエネルギーを抑えようとします。「木」のエネルギーは春のエネルギーと関連しており、体では「肝臓」の働きに関係しています。これによって、肝臓の働きが強くなり、胃腸の負担を和らげることができるとしています。つまり、雷が多い年には、肝臓が元気になろうとすることで、湿気による影響を抑えようとするのです。しかし、肝臓がこのように頑張ると、気分が落ち込みやすくなり、イライラしやすくなることもあります。

このような状況では、食事を通じて肝臓の働きをサポートし、腎臓を元気に保つことが大切です。これにより、体全体のバランスを整えることができます。

つまり、今年の秋は、肺、胃腸、肝臓、腎臓の4つの臓器をしっかりケアすることが重要です。肺を潤し、咳を和らげるだけでなく、胃腸を健やかに保ち、湿気を取り除き、肝臓と腎臓の働きをサポートすることが大切です。

以下に、今年の秋に適した料理「椎茸、セロリ、パプリカの牛肉炒め」をご紹介します。

 

「椎茸、セロリ、パプリカの牛肉炒め」の作り方

「椎茸セロリ炒め牛肉」(イメージ図)

 

この養生レシピは「椎茸セロリ炒め牛肉」のアレンジで、もともと非常に美味しい伝統的な家庭料理です。昔から親しまれてきたのには理由があります。この料理は、脾胃を健やかに保ち、湿気を取り除くだけでなく、肝腎を補い、肺を潤し、痰を和らげる助けにもなります。パプリカを加えることで、色鮮やかで栄養価がさらに高まり、パプリカ自体が肝の気を整え、食欲を増進し、消化を助ける効果が期待できます。高血圧糖尿病の方にも適した料理です。以下は3~4人分の材料と作り方です。

材料

牛肉 300グラム

椎茸 100グラム(約8~10個、湿気が多い方は干し椎茸を使用すると良いです)

セロリ 150グラム

パプリカ(赤または黄色) 1個(約150グラム)

生姜スライス 3枚

にんにく 2片、スライス

醤油 大さじ2(30ミリリットル)

料理酒 大さじ1(15ミリリットル)

オイスターソースまたは和風だし 大さじ1(15ミリリットル)

塩 小さじ1/2(約2グラム)

胡椒 小さじ1/4(約1グラム)

植物油 大さじ2(30ミリリットル)

片栗粉 小さじ1(5グラム)

水 適量(牛肉の下味用)
 

作り方 

1. 牛肉の準備

牛肉を薄切りにし、もし薄切りでない場合は、適当な大きさに切ります。醤油、料理酒、胡椒、片栗粉、少量の水を加え、混ぜて10~15分間漬け込みます。砂糖を使用するのが気にならない方は、小さじ1杯の砂糖を加えると、肉がより柔らかくなります。

 

2. 野菜の準備

椎茸は洗ってスライスします。干し椎茸を使う場合は、あらかじめ水で戻してからスライスします。

セロリは洗って4~5cmの長さに切ります。セロリが太い場合は、薄切りにします。

パプリカは種を取り除き、細切りまたは角状に切ります。

生姜とにんにくはスライスしておきます。

3. 牛肉を炒める

フライパンに大さじ1の植物油を熱し、油が熱くなったら、生姜とにんにくを入れて香りが立つまで炒めます。

漬け込んでおいた牛肉を加え、強火でさっと炒め、色が変わったら取り出します。

4. 野菜を炒める

フライパンに再び大さじ1の植物油を熱し、椎茸を入れて柔らかくなるまで炒めます。

セロリを加え、少し柔らかくなり、シャキシャキ感が残る程度に炒めます。

パプリカを加え、さらに2~3分間炒め、パプリカが柔らかくなり、鮮やかな色が残るようにします。

5. 仕上げ

炒めた牛肉をフライパンに戻し、野菜と一緒に混ぜ合わせます。

オイスターソースまたは和風だしと少量の塩を加え、味を整えた後、もう一度軽く炒めます。

6. 盛り付け

炒めた具材をお皿に盛り付けて、冷めないうちに召し上がって下さい。

 

中医学に基づく養生効果

椎茸 性質は穏やかで、甘みがあり、胃腸に働きかけます。胃腸を整え、体内の余分な湿気を取り除く効果が期待できます。また、しいたけの大きな傘の部分が肺の構造に似ているため、肺の機能をサポートし、咳を和らげる助けになると言われています。さらに、しいたけの黒い色は腎臓に良い影響を与え、腎臓の働きをサポートすることで、肝臓の健康も守ります。

椎茸(Shutterstock)

 

セロリ 性質は涼しく、肝臓や胃、膀胱に働きかけます。肝臓の熱を冷まし、肝臓の気と血の流れを整えます。また、胃腸を健やかに保ち、体内の湿気を取り除く助けになります。湿気が減ることで肝臓の気がスムーズに流れ、気分が落ち着き、血圧も安定しやすくなります。

パプリカ 性質は温かく、甘みとわずかな辛みがあります。胃腸や肺に働きかけ、食欲を増進し、消化を助ける効果が期待できます。また、肝臓の気の流れを整える働きもあります。

牛肉 性質は温かく、甘みがあり、胃腸に良い影響を与えます。胃腸を温め、気血を補い、肝臓や腎臓をサポートし、筋肉や骨を強くする助けになります。

 

現代病への効果

セロリ、しいたけ、パプリカ、牛肉は、血糖値や血圧を安定させる助けになるため、糖尿病や高血圧の方に適しています。さらに、パプリカとセロリは血液の流れを良くし、血栓ができるのを防ぐ効果が期待できるため、心血管疾患や高血脂の予防にも役立ちます。
 

(翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。