世界最大の塩の平原に足を踏み入れると、まるで巨大な鏡の上に立っているような感じがします。ボリビアの雨季のある日、ウユニ塩湖(Salar de Uyuni)の高原を覆う薄い水の層は、空を映し出す広大な鏡へと姿を変えます。そうなると、どこまでが大地でどこからが空なのか、ほとんど区別がつかなくなります。
この地球上で最も異世界的な場所のひとつであるウユニ塩湖は、果てしなく続くように見える塩の平原を覆っています。アンデス山脈の頂上近く、海抜4,000メートルに位置するウユニ塩湖は、南西部のアルティプラーノ地方に4,050平方キロメートルにわたって広がっています。ウユニ塩湖は、ジャマイカ、カタール、バハマなど150カ国近くの国が入る面積を持っています。
ウユニ塩湖は宇宙からも見ることができます。ニール・アームストロングとバズ・オルドリン(Neil Armstrong and Buzz Aldrin)は、月から見ると巨大な白いシートのように見えたと語っています。巨大な氷河と勘違いしたアームストロングは、その場所が何なのかよくわからなかったものの、地球に戻ったら必ず訪れると誓ったそうです。後に、この誓いを果たした有名な宇宙飛行士は、ウユニ塩湖を訪れた最初の観光客のひとりとなり、その美しさに驚嘆しました。
アルティプラーノの高原地帯にあるウユニ塩湖は、太古の湖が干上がってできたもので、六角形の模様の塩が厚く堆積した砂漠のような地形が残っています。3万年から4万2千年前の間に、周囲の山々からの水がここに集まりました。排水口がなかったため、巨大な土地は、ミンチン湖(2万年前の氷河期に存在した湖)によって埋め尽くされ、これがやがてタウカ湖(1万5千年前)やその他の先史時代の湖になりました。時が経つにつれ、乾燥と気温の上昇によって水は蒸発していきました。水分が蒸発することで、厚い塩の地殻だけが残ったのです。現在でも、ウユニ塩湖の地下水は降水量の10倍以上の割合で蒸発し続けており、ウユニ塩湖は尽きることのない塩の供給源となっています。ウユニ塩湖には100億トンもの塩が存在し、年間約2万5000トンが採掘されていると推定されています。
また、ウユニ塩湖は、クラスト化(塩類化)した塩の層の下には、リチウムを豊富に含む塩水が大量にたまっているため、アルゼンチン、ボリビア、チリにまたがる「リチウム・トライアングル」の一部であり、地球上の供給量の70%を占めている世界最大のリチウム供給源です。リチウムはスマートフォンや電気自動車などの電子機器に使用されるため、「ホワイトゴールド」と呼ばれることもあります。2023年12月には、初の国営の工業規模リチウム採掘工場がオープンしました。
リチウム鉱山がこの地域の限られた淡水供給に与える影響を懸念する声もありますが、それでも「雲の上を歩く」機会に惹かれた観光客は後を絶ちません。
旅行ブロガーのジョエル・フレンド(Joel Friend)は、ウェリントンブーツを履いて、非公式に「8番目の不思議な世界」と呼ばれている場所を旅して驚きを表現しました。
「見渡す限り、雲が映っているだけです。こんなものは見たことがありません」
11月から4月の間が、空と陸が収束する目の錯覚を見るのに最適な時期です。雨の層が反射を増幅させるため、反射対称が奇跡的に現れます。超現実的な夢の風景を体験するために、多くの観光客は塩の塊だけで造られた地元の白塩ホテルに泊まることを好むそうです。
(翻訳編集 呉安誠)
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