立冬を迎えると、冬の始まりとして寒さが増してくるイメージがありますが、今年は特に空気の乾燥が気になる方も多いのではないでしょうか。喉の渇きや肌のかゆみ、便秘といった症状が現れやすく、秋からの乾燥がさらに続いているように感じられるかもしれません。このように立冬後も乾燥が続く理由について、中医学の「五運六気」という考え方からも説明されています。
なぜ乾燥が続いているのか?
通常、立冬を過ぎると「寒さと湿り気」が増えるとされますが、今年は乾燥が強まり、空気が非常にカラカラしています。中医学では、「五運六気」の理論により、季節ごとに異なるエネルギー(気)が循環し、木・火・土・金・水といったエネルギーが順に流れていくと考えられています。また、季節ごとの気候(風・熱・火・湿・乾燥・寒さ)も交互に現れるため、私たちの体もその変化に合わせて調整が必要になります。
立冬の乾燥と火の影響について
秋から冬にかけて、特に乾燥(「燥」)が強まる時期とされ、これは「五の気」とも呼ばれる周期の一環です。立冬は秋分、寒露、霜降と続いた乾燥期の最後にあたるため、立冬後も約15日間は乾燥が残り、11月21日頃までは喉や肌が乾燥の影響を受けやすいのが特徴です。
さらに、今年の2024年は「甲辰年」にあたり、「火の気」が強まる年とされています。この火の気が乾燥を助長し、例年に比べて乾燥と温かさが同時に感じられやすい年です。これが喉の渇きや便秘、肌の乾燥を招く要因となっているのです。
乾燥と熱が肺に負担、喉の渇きや便秘に注意!
乾燥と熱のある気候は、特に「肺」と「大腸」に負担がかかりやすく、乾いた咳や喉の痛み、肌のかゆみや口の渇きといった症状が出やすくなります。この時期には、肺をしっかり潤し、熱を冷ますケアが重要です。
おすすめの食材で肺を潤す
この時期に適した食材には、肺の乾燥を防ぎ、熱を冷ます効果が期待できるものがあります。梨や大根、白菜、もやし、豆腐、レンコン、冬瓜、リンゴ、キンカン、オレンジなどの白い食材や、緑茶や菊花茶、桑の葉茶、レモン蜂蜜茶などが良いとされています。また、バナナは腸の働きを助け、便通を促す効果も期待できます。
冬の基本は「腎」のケア。無理な運動は控えめに
冬は中医学で「腎」に関連する季節とされ、特に腎の健康を保つことが大切です。立冬は冬の始まりを意味し、この時期には体もエネルギーを蓄えることが推奨されています。体の毛穴も閉じ、エネルギーを外に逃さないような状態を保つことが重要です。
冬の養生法:軽い運動と温かい生活を心がけて
冬場には、激しい運動は控え、日光の下での軽い散歩が理想的です。大量に汗をかくと、体の「陽気」が失われ、腎が消耗されやすく、体に冷えがたまって腰や膝の痛み、筋肉や骨の弱さ、頻尿といった症状が出やすくなります。また、春先に体がだるく感じたり、感染症にかかりやすくなる可能性もあります。立冬からは、腎をケアし、体を温かく保つことが大切です。
冬におすすめの食材
この季節に適した食材には、腎や脾をサポートする黒豆や黄豆、栗、クルミ、昆布、牡蠣、エビ、サケ、サツマイモ、カボチャ、山芋、ニンジンなどがあります。これらの食材をうまく取り入れながら、体を温め、冬の健康を保ちましょう。
立冬にぴったり!体を温めるおすすめレシピ
日本の伝統的な根菜料理である「豚汁(とんじる)」は、立冬の時期に最適な養生料理です。根菜と豚肉を使った温かいスープが体を芯から温め、冬の健康維持に役立ちます。ここでは、豚汁の簡単な作り方と、その健康効果についてご紹介します。
「ほっと温まる、具たくさん豚汁」
材料:
・豚肉
・大根
・にんじん
・豆腐
・ごぼう
・こんにゃく(胃腸が冷えやすい方は里芋に変更)
・味噌
・昆布
・長ねぎ
手順:
1、豚肉を軽く炒めて香りを引き出し、大根、にんじん、ごぼう、こんにゃくを加えて一緒に煮込みます。(長ねぎと豆腐は後から加えます)
2、食材が柔らかくなったら豆腐と昆布を入れ、少し煮込みます。
最後に味噌を加えて味を整え、刻んだ長ねぎをのせたら完成です。
豚汁の健康効果
豚肉
体を潤し、胃腸や腎臓の働きをサポート。喉の渇きや乾燥からくる便秘の緩和にも効果的です。また、鉄分が豊富で体が弱っている方にもおすすめ。
大根
涼しい性質を持ち、喉の渇きや肺の熱を和らげ、消化を助ける効果も期待できます。
ごぼう
利尿作用や解毒作用があり、便通の促進に役立ちます。乾燥による便秘や肺の乾燥の緩和におすすめです。
こんにゃく
体の湿気を取り除き、腸を潤して便秘の予防に適しています。
昆布
体を潤し、熱を冷まし、腎臓をサポートします。喉の乾燥やかゆみの緩和にも効果があります。
注意点とアレンジ
豚汁は、体を潤し、熱を冷ます効果があるため、乾燥しやすい季節や体に熱がこもりやすい方におすすめです。冷え性や胃腸が弱い方は、長ねぎを多めに入れたり、こんにゃくを里芋に替えたりして調整すると良いでしょう。また、生姜を少し加えると体が温まり、優しい風味が楽しめます。
豚汁は「肺を潤し、便通を促し、腎臓を補う」効果が期待できる養生食です。寒さが増す立冬の季節に、ぜひ取り入れてみてください。
「かぼちゃと海鮮の煮物」
材料:
・かぼちゃ
・むきエビ
・ホタテ
・木耳
・生姜
・しょうゆ
・料理酒
手順:
1、かぼちゃを一口大に切り、むきエビとホタテを加え、適量の水でかぼちゃが柔らかくなるまで煮込みます。
2、生姜の千切りとしょうゆ、料理酒を少量加え、さらに煮込みます。
汁が少し煮詰まったら完成です。
中医学的な効果
かぼちゃ:消化を助け、胃腸を潤してくれる効果があります。乾燥で起こりやすい消化不良や便秘にも良いとされています。
エビ:腎臓の働きをサポートし、体を温めて寒さに強くします。デトックス効果も期待できます。
ホタテ:体の陰を補い、バランスを整え、乾燥からくる不調を和らげます。
木耳:肺や腸を潤し、便通の改善にも役立つので、乾燥する季節におすすめです。
生姜:体を温め、消化を助け、冷たい食材とバランスを取ってくれるので、胃腸への負担を軽減します。
「牡蠣豆腐鍋」
材料:
・牡蠣
・豆腐
・ほうれん草
・えのき
・昆布
・出汁
・しょうゆ
手順:
1、昆布で出汁を取り、牡蠣、豆腐、ほうれん草、えのきを加えます。
2、しょうゆで味を整え、具材が柔らかくなるまで煮込みます。
中医学的な効果
牡蠣:体を潤し、血を補い、肝臓の健康をサポート。乾燥による喉の不調にも効果があります。
豆腐:体を潤し、熱を冷まし、肺や胃の健康を保ちます。乾燥で感じやすい喉の不快感にも良いです。
ほうれん草:便通を促進し、肝臓の健康をサポート。乾燥対策にも役立ちます。
えのき:気や血を補い、湿気を調整し、肺と大腸の働きを整えるので、乾燥の時期におすすめです。
これらの料理には、秋冬の乾燥からくる咳や便秘をケアする食材が使われており、体を潤し、内臓のバランスを整えてくれます。さらに、納豆や黒豆といった豆類を副菜に加えると、冬の腎のケアにも効果的です。
(翻訳編集 華山律)
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