便秘は単なる「詰まり」ではない――中医学が示す根本ケア

70歳を過ぎた林さん(仮名)は長年便秘に悩まされ、ひどい時には4~5日間排便がないこともありました。さらに、彼女には不思議な症状がありました──お腹の一部がときどきピクピクと痙攣するのです。林さんは西洋医学の診療所で検査を受けましたが、結果は「異常なし」でした。医師からは「動脈瘤に発展した場合のみ手術を検討する」と説明され、疑問と不安だけが残りました。

その後、台湾の馥芊中医診療所の李嘉菱院長を訪ねたところ、中医学の診断で「腹部の筋力低下」と「血液と栄養を司る、気(生命活動を支えるエネルギー)と血の流れが滞っている」ことが原因と判明しました。中医学的な調整とツボ押しを一定期間受けた結果、便秘が大きく改善され、謎の腹部の痙攣もなくなったのです。

この事例は、便秘が単なる「排便できない」という問題ではなく、身体の深いバランスの乱れを反映していることを示しています。つまり、便秘は全身の健康状態から捉え、根本的に向き合う必要があるのです。
 

便秘:見過ごしてはいけない日常の悩み

便秘を多くの人は軽く考えがちですが、快適さだけでなく、体内のエネルギー循環、消化機能、さらには感情面にも影響するのです。

西洋医学では排便回数、便の性状、食物繊維摂取、腸の蠕動などを重視します。一方、中医学ではまず患者の体質や症状のタイプを見極め、そのうえで弁証論治を行います。さらに漢方薬、ツボ押し、精油の補助、生活習慣の改善を組み合わせ、便秘を根本から改善していきます。
 

中医学の視点からみる便秘

李氏は新唐人テレビの「健康1+1」番組で、排便の状況からみた便秘の症状について次のように述べています。便が硬く乾燥している、排便に強い力を要する、トイレに長時間かかる、排便回数が少ない(週3回未満)、排便が充分にできない、などをあげました。

便秘の主な原因には次のようなものがあります:

  •  長期間のストレスや情緒の不安定によって自律神経が乱れ、腸の蠕動に影響する。
  • 辛い物や脂っこい食事の摂りすぎで、便が粘って通りにくくなる。
  • 冷たい飲み物や氷菓の常用で、便が前半は硬く後半は柔らかくなる。
  • 栄養不足により排便する力が弱まる。
  • 更年期や長時間の夜更かしによって便秘のリスクが高まる。

彼女はさらに、便秘の原因が必ずしも消化器そのものとは限らず、腹部の筋力不足や筋膜の弾力低下が原因となることもあるため、症例ごとに具体的な分析が必要だと強調しています。

中医学における便秘の一般的な治療方針には次のようなものがあります:

  • 陰血を補う:体液と栄養を補い、乾燥や血不足を改善する。
  • 肝火を調える:ストレスや感情の過熱を抑える。
  • 脾を健やかにして湿を除く:消化吸収機能を強化する。
  • 陽気を温めて気を巡らす:代謝や腸の働きを高め、寒性便秘に適する。

彼女はまた、印象に残った二つの治療例を紹介しました。

筋膜乾燥のケース:ある患者は腹部の筋膜層が硬く乾燥し、弾力を失っていました。これは血虚(血液や栄養の不足)が原因で、恐怖感や抑うつといった情緒的問題を伴うことが多いとされます。治療では陰血を補って筋膜の弾力を回復させ、最終的に便秘の症状が改善しました。

産後便秘のケース:ある産後の女性は、野菜や果物、水分を十分に摂取していたにもかかわらず便秘に悩んでいました。診断の結果、腹部の筋力不足が原因であると判明。エネルギー補充と腹筋強化によって排便を助け、便秘が緩和しました。
 

中医学によるセルフ調整法

中医学の治療を受けるだけでなく、日常生活の中でも自分でツボ押しや精油を使ったケアを行い、便秘の改善につなげることができると李氏は述べています。

1. ツボのマッサージ

中医学では「経絡」と呼ばれるシステムが人体に存在すると考えられています。これはエネルギーの通り道であり、気と血を全身に運ぶ役割を担っています。気と血は人体を構成し、生命活動を維持する基本的な要素です。体の各部位はさまざまな経絡で結ばれており、その経絡上にある特定の作用を持つ点を「ツボ」と呼びます。これらを鍼やマッサージで刺激することで、関連する部位の病気を改善できます。

李氏が推奨する便秘に有効なツボは以下の通りです:

天枢(てんすう):へその両脇、左右に指3本分外側。腸の蠕動を促進し、腹部の張りを和らげ、便秘を改善する。

関元(かんげん):下腹部、へそから指4本分下。腎の働きを補い、腎虚に関連する便秘を改善する。

中脘(ちゅうかん):上腹部、へそから指5本分上。脾胃を整え、消化と腸の蠕動を助け、消化不良による便秘を改善する。

足三里(あしさんり):膝の外側、膝下から指4本分下。健胃強壮の要で「長寿のツボ」とも呼ばれ、胃腸機能を高めて便秘を和らげる。

各ツボを時計回りに1〜2分間マッサージし、1日2〜3回行うと効果的です。
 

2. 精油の使用

李氏は、便秘のタイプに応じて精油を希釈し、腹部に塗布して活用することを勧めています。

ストレスや膨満感があるタイプ:スイートオレンジ、レッドマンダリン

体液不足・ほてり感のあるタイプ:ビターオレンジリーフ

自律神経失調型:ベルガモット

術後や炎症によるタイプ:ヘリクリサム、フランキンセンス

研究によれば、精油をブレンドして用いたアロママッサージは腹部の筋肉を強化し、腸の蠕動を刺激し、大腸の輸送時間を短縮することで、高齢者の便秘改善に役立つとされています。
 

便秘に関する誤解

李氏は、便秘にまつわるよくある誤解についても説明しています。

多く水を飲めば便秘は解消する?

水分は腸の健康を保つうえで重要ですが、飲みすぎると電解質のバランスを崩し、逆に便秘を悪化させることがあります。李氏は「水分摂取は適量が大切」と述べ、計算式として「1日の水分摂取量=体重(kg)×30〜35ml」を紹介しています。たとえば体重60kgの人であれば、1日の水分摂取量は1,800〜2,100mlが目安となります。

便秘は単なる腸の問題?

便秘は単に腸の不調だけで起こるわけではありません。食事、生活習慣、ストレス、筋力、さらにはその他の健康状態など、さまざまな要因が関わっています。

プロバイオティクス(善玉菌)で全ての便秘が治る?

プロバイオティクスは一部のタイプの便秘には効果がありますが、体が冷えやすい「陽虚体質」の人では、かえって便秘を悪化させる可能性があります。
 

結び

便秘は複雑な健康問題であり、原因は多岐にわたり、食事、生活習慣、感情、体の状態などが深く関係しています。中医学の強みは、一人ひとりの根本原因を見極め、全体的な調整によってバランスを回復させることにあります。また、「毎日排便があれば便秘ではない」とは限らず、大切なのは排便の質と満足感です。症状が続いたり悪化する場合は、早めに医師に相談し、専門的な医療の助言を受けることが推奨されます。

(翻訳編集 華山律)

歴史と国家安全保障の修士号を持つ退役軍人である。エポックタイムズに意見記事を執筆。
英文大紀元が提供する医療・健康情報番組「健康1+1」の司会者を務める。海外で高い評価を受ける中国の医療・健康情報プラットフォームであるこの番組では、コロナウイルスの最新情報、予防と治療、科学研究と政策、がんや慢性疾患、心身の健康、免疫力、健康保険など、幅広いテーマを取り上げている。